福島-東京ツアーで試す「YOKOHAMA BluEarth-4S AW21」の実力
“オールシーズン”に偽りなし 2020.03.30 2020 Spring webCGタイヤセレクション<AD> サマータイヤに準じたドライ&ウエット性能を持ちつつ、突然の雪にも対応できるオールシーズンタイヤ。話題のこのジャンルに横浜ゴムが投入したのが「BluEarth-4S(ブルーアース・フォーエス)AW21」である。注目の新製品の実力を、福島-東京のウインタードライブを通して確かめた。四季には春・夏・秋も含まれる
このところ、多くのブランドが日本への本格導入を開始し、プロモーション活動も活発になったことから、耳に入る機会が多くなっている「オールシーズンタイヤ」というアイテム。そうした製品の多くが大きな“売り”としているのが、「公的に冬用のタイヤとして認められる雪上性能を有することで、非降雪地域で暮らすユーザーであれば、冬になっても履き替えることなくこのタイヤのみで年中を過ごすことが可能」という特徴だ。
かくして、特に冬場になるとさまざまなメディアをにぎわすことになるのが、「この種のタイヤは、本当に満足できるだけの雪上性能を備えているのか?」という点に注目した記事。もちろん、『webCG』もそんなトレンドにのっとっているのは例外ではない。
しかしながら、そんなタイヤが実際にユーザーの元へと届いてからの使われ方を想定してみると、恐らくその大半は「ドライの舗装路面や、通常の降雨によって生じたウエット路面を走る」というシーンになるのではないだろうか。そもそも冬になれば必ず雪が降る地域に暮らす人であれば、まず間違いなくスタッドレスタイヤへと履き替えるのが常識。だからこそ、あえてオールシーズンタイヤを選択する人の場合、現実における主戦場は“雪や氷がない状態”のほうであるはずだ。
ということで、今回は横浜ゴムが今年(2020年)になって日本での本格販売を開始した、最新のオールシーズンタイヤを入手。積雪の残る福島・裏磐梯の山岳地帯を出発し、東京都心を目指すルートをたどることで、“走行シーンの大半はドライ&ウエット”という状態を念頭に、オールラウンドな性能を検証してみることとした。
→「ヨコハマ・ブルーアース4S AW21」の詳しい情報はこちら
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トレッドパターンに見るトレンド
前述のように、日本での本格発売は今年になってから。しかし、実は欧州地域では2018年の秋から販売が行われていたのが、今回紹介するブルーアース4S AW21というモデルだ。
ご覧のように明確な回転方向性が与えられ、グルーブの太さも目立つそのトレッドパターンは、まずは排水性を高め、スタッドレスタイヤが苦手としがちな耐ハイドロプレーニング性の確保を目指したことが想像できる。トレッドの中央部付近は溝の密度が高くなっている一方、ショルダーに向かうにつれてその密度が低下し、ブロックの大きさが目立つようになるのは、「中央付近で冬タイヤとしての雪上性能を確保し、両サイドで舗装路上での操縦安定性を高めよう」という狙いの表れと考えられよう。そうした手法は今回のアイテムに限らず、昨今のオールシーズンタイヤに共通する技術トレンドとも言ってよさそうだ。
スタート地点である裏磐梯周辺は、日中に日差しを受ける場所ではすでにアスファルトが顔を出し、ドライ状態になっている箇所も目立つ一方、終日日の当たらない部分は“根雪”となっていて、一部は凍結もしているという、実にさまざまな路面状態が入り交じる状態にあった。
理想を言うならば、それは「スタッドレスタイヤのほうがふさわしい」という状態でもあったわけだが、しかし周囲の安全を確認の後、雪上であえてフルブレーキングを試みてみると、予想以上の減速Gを感じることができた。「冬季における路面対応力に注力した」とうたわれるコンパウンドが、スタッドレスタイヤには及ばないものの、夏タイヤを大きく上回るグリップ力を発揮した結果といえよう。
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サマータイヤに比肩する静粛性の高さ
一方、前述のように通常の夏タイヤに比べるとはるかに“たくましい”トレッドパターンの持ち主ゆえ、スタート前から心配していたのがノイズの問題である。ゴツいブロックパターンが特徴だったかつてのスノータイヤを知る人の中には、速度の上昇とともに周波数を高めていく、独特のノイズを懐かしく(?)思う人もいるはずだ。
もちろん、そこまで極端な現象は起こるまいとは予想していたものの、それなりに派手なトレッドパターンに不安を覚えていたのも事実。実際、他社製の同類タイヤの中には、「いくら冬季のタイヤ交換が不要になるとはいえ、このノイズを年中聞かされるのはちょっと……」というものも存在する。それだけに、個人的には「静粛性の高さは、オールシーズンタイヤにとっての最重要項目」とも考えているのだ。
そうした懸念を抱きつつ、パターンノイズが顕著になりがちな平滑な舗装路面へと差しかかると……確かに、特に減速時にはわずかなノイズの発生が認められたものの、それは「あえて耳を澄ませば」という程度のことで、ボリューム的にも全く問題とするほどではなかった。ちなみに、今回試走に用いた「スバルXVアドバンス」との組み合わせの場合、そうした現象が確認されたのは70km/h程度までの領域で、それ以上の速度域に達すると、エンジン音や風騒音などさまざまな“暗騒音”が高まることによって、タイヤが発するノイズはかき消されてしまった。
しかも、最も騒音が懸念されるはずの高速道路上でのクルージングは、「通常のサマータイヤと変わる印象はなかった」というのが実感。「見た目から察するよりはるかにおとなしい」と思えたのが、ノイズ面におけるブルーアース4S AW21の評価であった。
冬以外の季節にも我慢は一切必要ない
話を裏磐梯のワインディングロードに戻すと、スタートしてしばらくすると雪はすっかり消え、完全なるドライ状態に。快調に走行していると、いつしかタイヤのことは脳裏から消え、むしろ「燃費は……」「アイドリングストップからの再始動性は……」と、2019年末にリファインされたスバルXVのチェックに気をとられがち(?)になってしまった。
それでも、あらためて注意をタイヤのほうへと引き戻すと、記憶に残るノーマルタイヤのXVと異なる点として感じられたのは、「ステアリング中立付近の応答性にやや甘さがあるかな?」というところ。微舵操作を行った際の応答性が、やや鈍くなったように思えたのである。もっとも、それも「ことさらに注意力を高めて観察すれば……」という程度の現象であり、コーナリングの正確さが低下したとまでは到底感じられなかった。
あえて気になった箇所といえばその程度で、山を下り、磐越道から東北道へと乗り換えて東京を目指す頃になると、再びタイヤのことは意識から消えてしまった。走り続けること4時間余り。少なくとも日本の高速道路のペースであれば、何ひとつ違和感も、もちろん不安感もなく、足元を支えてくれたのがこのタイヤである。「ここまで“普通”に使えてしまうと、ノーマルタイヤの立つ瀬がないのではないか?」とそんなことを考えながら、東京に到着することになった。
繰り返しになるが、“オールシーズン”をうたうこうしたタイヤが、凍結路面に適したアイテムではないことは、あらためて認識しておく必要がある。このブルーアース4S AW21の場合も、メーカーである横浜ゴムがカタログなどで「スタッドレスタイヤではありません」と言明していることを忘れてはならない。
そうしたポイントにさえ留意していれば、非降雪地域に暮らすドライバーにとって何とも心強い冬季の保険となってくれそうなのが、ブルーアース4S AW21をはじめとした昨今話題のオールシーズンタイヤなのだ。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸)
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→DUNLOP ALL SEASON MAXX AS1
→TOYO TIRES OPEN COUNTRY R/T
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テスト車のデータ
スバルXVアドバンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4465×1800×1550mm
ホイールベース:2670mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:145PS(107kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2 kgf・m)/4000rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)
モーター最大トルク:65N・m(6.6 kgf・m)
タイヤ:(前)225/55R18 98V/(後)225/55R18 98V(ヨコハマ・ブルーアース4S AW21)
燃費:19.2km/リッター(JC08モード)/15.0km/リッター(WLTCモード)
価格:292万6000円
→「ヨコハマ・ブルーアース4S AW21」の詳しい情報はこちら
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