3つのキーワードで語るジャガーの姿
ブランドに宿る“英国的なるもの”の本質 2020.10.09 JAGUAR ~英国が誇る名門の“いま”~<AD> 美しさや速さ、歴史が宿す重厚感と、さまざまな魅力を持ち合わせる英国の名門ジャガー。この多面的なブランドを“ジャガーたらしめているもの”とは何なのか。複雑で奥深い魅力の源泉を、「Made in the UK(英国製)」「Innovativeness(先進性)」「Sportiness(スポーティネス)」という3つのキーワードから探る。ファンに支えられファンの期待に応えてきたブランド
ジャガーの最もいいところは、「ジャガー(JAGUAR)」という名前だと思っている。創業者の名前とか、特定の地名などによらないところがいい。
英国生まれのプロダクトは数多くあり、例えば服飾だと、男性のスーツを広めたのは19世紀ロンドン・サビルローのテイラーたちだし、ミニスカートはマリー・クヮント(と仏のクレージュ)だ。
おもしろいことを、1960年代はモッド(モダン)ファッションの立役者だったマリー・クヮントは語っている。「ミニスカートをつくったのは私でもクレージュでもない。ストリートにいる女性たちよ」。私は、かつてニューヨーク現代美術館で見た「Items: Is Fashion Modern?」展でそれを知り、なるほどと感心したものだ。
ひょっとしたら、同じことがジャガーにも言えるかもしれない。戦前は「SS100」などクラシックカーファンのあいだで根強い人気を持つモデルを手がけていたSSカーズが、1935年に「ジャガー」という名称を掲げて以来、そのブランドを広げていったのは、彼らではない。ジャガーのクルマを愛した、世のなかの自動車好きだろう。
自動車デザイン史上の傑作と言われる「ジャガーE-TYPE」(1961年)に始まり、「XJ」シリーズやそのあとに続く数々のモデル。最近で言うと、SUVの「F-PACE」や「E-PACE」、上質なセダン(とステーションワゴンの)「XF」や「XE」、それにピュアスポーツカー「F-TYPE」など、あまたのプロダクトを通し、ジャガーはファンに大きな満足を与えてくれている。
英国のプロダクトならではの伝統と先進性
今日のジャガーカーズを語る際にふさわしいキーワードは、3つあると言われる。「Made in the UK(英国製)」「Innovativeness(先進性)」それに「Sportiness(スポーティネス)」だ。
ジャガーの魅力として、伝統的なクルマづくりや、エレガントでかつスポーティーさも感じさせるスタイリングをあげるひとは多いだろう。いまのジャガーは、上記の3つの要素がうまく組み合わされてできていると言ってもいい。
3つのキーワードのなかで最も解釈がむずかしいのは、「英国製」ゆえのよさ、かもしれない。
すぐ思い浮かんだのが、冒頭のマリー・クヮントに代表されるブリティッシュファッションだ。他にも大勢いる。例をあげると、パンク時代のヴィヴィアン・ウエストウッド、LVMHグループのロエベで美しいシルエットと手作業による仕上げを実現したJWアンダーソン、「フーリガン・オブ・ファッション」と言われるほど仕掛けのある服をデザインした故アレキサンダー・マックイーン、宮廷で着るような服を現代的に解釈しなおしたジョン・ガリアーノ……。枚挙にいとまがない。
もちろん、150年超の歴史を持つバーバリーや、120年超のバブアー、またモータリストコートなどを出発点とするダンヒルなど、釣りや狩りや、ときには戦争なども含めた歴史と伝統を背景に、しゃれっ気のある機能服を開発したブランドもまた、英国の象徴と言える。
伝統と先進性では、ジャガーの製品もファッションと比肩しうるほどに、優れてメイドイン・グレートブリテンと認められるものだろう。それを端的に表しているのが、プレミアムBEV(バッテリー駆動の電気自動車)である「I-PACE」。2019年10月に、他社に先がけて日本でも発表された、伝統と革新の現代的解釈と言えるプロダクトだ。
電気自動車にも宿るアイデンティティー
後席も広いパッケージングを持つと同時に、加速性にも操縦性にもすぐれるI-PACE。航続距離が長く、トルクがたっぷりあって扱いやすく、コネクティビティーにすぐれるなど、BEVに期待されるものは、ほぼすべて備えている。
一方で、インテリアは居心地がいい。素材や質感が考え抜かれている。「Touch Pro Duoインフォテインメントシステム」なるタッチスクリーンは新しいが、内装は温かみを失わず、品のいいリビングルームで落ち着くような感覚がある。ジャガーでしか得られない、まさに現代的なブリテンメイドの新しさだ。
これまでのジャガーカーズのプロダクトは、よくチューニングされたICE(内燃機関)のビートやバイブレーションで楽しませてきてくれた。F-TYPEなど、今も背後から来るだけで、すぐに車名があてられるほど、いいエンジンサウンドを持つ。
これに対しセダンは、ふわりふわりと道路の段差をこなしていく、上質なコンプライアンスを持ったサスペンションシステムがジャガーの製品であることを印象づける。
これらのクルマに乗ったときと同質の喜びを与えてくれるのが、I-PACEだと私は思う。もちろん電気モーターに全輪駆動システムが組み合わされ、かつ床下には90kWhの容量のリチウムイオンバッテリーが敷かれている。このように成り立ちは、従来の製品とまったく異なるのに、乗員との向かい合いかたは、本質的に同じものを感じさせるのだ。
今でこそ、ようやくいくつものメーカーが参入しはじめたプレミアムBEV市場に、競合より早めのタイミングで製品を投入したのは、ジャガーカーズのイノベーティブな精神ゆえだろう。
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今日に受け継がれる速さへの情熱
一方、ハンドリングのよさは、ジャガーの出自はレースカー、あるいはそこから派生的につくられたスポーツカーだったと、あらためて思い出させてくれる。モータースポーツこそ、英国人の才気が発揮されてきた分野なのだ。ジャガーも、峠道を高速で走り抜けるアルパインラリーから、苛酷(かこく)なルマン24時間レースまで、さまざまなモータースポーツを経験してきたメーカーだ。
アルパインラリーでは、当時最もパワフルな6気筒エンジンを積んだ「XK120」が1950年から連続で優勝。51年と53年はレースカーのなかでも先端的な技術だったディスクブレーキを備えた「XK120C(C-TYPE)」でルマンでの勝利を手中におさめ、55年から57年にかけてはモノコックボディーの「D-TYPE」で、さらにルマンでの3年連続優勝を果たした。
80年代は、強力な12気筒搭載の「XJR」を開発。これも鮮烈に記憶に残っているレーシングプロトタイプだ。軽量かつ高剛性のボディーを持ち、カーボンモノコックをシャシーに使った「XJR-9LM」は、1988年世界スポーツプロトタイプカー選手権で華々しい活躍を披露。この年はルマンでも優勝し、ファンを大いに沸かせている。
今日でも、ジャガーのレーシングスピリットは衰えていない。というより、ますます意気軒高のようだ。ジャガーレーシングは、BEVによるフォーミュラEに参戦。一方、I-PACEを使ったワンメイクレース「ジャガー I-PACE eTROPHY」も開催している。
ジャガーというブランドの根源にあるもの
「英国人には勝てない」
米国の文化史家が以前そう書いていたのを読んだことがある。米国では仮にノーベル物理学賞候補の学者でもパーティー席上でのマナーがそのひとの評価につながるのに対して、英国では才能があれば多少奇矯なふるまいをしていようが、大いに社会的な尊敬を勝ちうる、と。
それがひょっとしたら、「メイドイン・グレートブリテン」としてすぐれたクルマが生み出される背景であり、そこには常に「イノベーティブネス(先進性)」がある理由にもなっているような気がする。そう考えたほうが、なんだか楽しいし。
そしてもちろん、2019年に私たち日本人も大いに興奮させてくれたラグビーに見られる、スポーツを愛する精神と、勝利を目指す克己心とも言える「スポーティネス」。
ようするに人格そのものとは言えまいか。これがジャガーのクルマを常に魅力的な存在にしてくれているのだ。
(文=小川フミオ/写真=向後一宏、郡大二郎、花村英典)