「BRIDGESTONE ALENZA LX100」にみるSUV専用プレミアムタイヤの真価
わけあって、専用開発 2021.03.29 2021 Spring webCGタイヤセレクション<AD> ブリヂストンがSUV専用コンフォートタイヤ「アレンザLX100」を発売。オンロード向けのSUV用タイヤにはどのような性能が求められ、ブリヂストンの新製品はどれほどのレベルでそれを実現しているのか? 「ボルボXC90」に装着し、その出来栄えを確かめた。SUV用タイヤもオンロード性能で選ばれる時代に
本稿のテーマは、「いまのSUVの使われ方にふさわしいタイヤ選び」だ。
いまさら書くまでもなく、自動車市場ではあらゆるセグメントにおいてSUVが人気だ。そして、メーカー各社のSUVが出そろって、さまざまなタイプのSUVの使われ方を見て、わかったことがある。それは、冬以外のシーズンだったらオンロード性能が大事ということだ。
かつてのSUVは、乗り心地がゴワゴワしていたり、コーナリングでぎくしゃくしたり、燃費が悪かったり、ノイズが大きかったりといったネガがあった。けれども技術の進歩とは素晴らしいもので、そうした弱点はほぼ克服された。すると、SUVはキャンプやスキーに行くための特別なクルマから、機能的なファミリーカーやちょっとぜいたくなクルマとして、普段使いもされる乗り物へと立ち位置が変わったのだ。
というわけで、今日では幅広い層のSUVオーナーから、オンロード性能に優れたSUV専用タイヤが求められている。ところがいざ探してみると、ブロックのゴツいオフロードタイヤはそうでもないが、オンロードに焦点を当てたSUV用タイヤでは、「これ!」というブランドをなかなか見かけない。
そんな中でいち早く存在感を示すべく、ブリヂストンはSUV専用のオンロードタイヤとして「ALENZA(アレンザ)」というブランドを立ち上げた。アレンザにはふたつのラインがあり、スポーツ性能を磨いたのが「001」、そしてコンフォート性能を重視したのが、この2月に発売された新製品のLX100だ。
今回は最新のオンロード系SUV専用タイヤの実力を確認するために、アレンザLX100を「ボルボXC90」に装着して試走を行った。ラグジュアリーなSUV用タイヤと、コンフォート性能で評価の高いボルボのSUV。両者の組み合わせは、果たしてどのような効果を生むのだろうか。
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ロードノイズがほとんど聞こえない
まずは、試乗車として選んだ「ボルボXC90 B6 AWDインスクリプション」について解説したい。XC90は上質さを身上とするボルボの最上級SUVである。「B6」というパワートレインは、2リッターのガソリンターボエンジンに電動スーパーチャージャーを組み合わせ、さらにマイルドハイブリッドシステムを備えることでモーターも駆動に関与する。
このパワートレインを積んだXC90にドライバーが感じるのは、とにかく静かなこと。モーターアシストが働いているときはもちろん、加速の過程でも過給器のアシストによってエンジン回転数が上がらずに速度が伸びていくから、実に静かなのだ。高速巡航の態勢に入って4気筒のうち2つの気筒が休止状態になると、ほぼ無音と言っても過言ではない状態になる。
そして、ここでハッと気づく。パワートレインからのノイズがないのは理解できるとして、タイヤの発するロードノイズもほとんど感じられないのだ。聞こえるのは、ボディーが風を受けて発する、いわゆる風切り音ぐらいだ。クルマの遮音性能が高いこともあるだろうけれど、アレンザLX100が静粛性の高いタイヤだということも間違いないだろう。
ブリヂストンの社内比較では、SUV用タイヤの主力商品だった「デューラーH/L 850」と比較して、アレンザLX100は22%も騒音エネルギーが低減しているという。「REGNO(レグノ)」シリーズを筆頭に、ブリヂストンのタイヤは静かさに定評があるけれど、彼らが培ってきたサイレントテクノロジーは、見事にSUV用タイヤにも応用されている。
車内では、オプションの「Bowers&Wilkins」のプレミアムサウンドシステムが、FM局のDJが選んだ古いソウルミュージックを気持ちよく鳴らしている。長距離ドライブで疲労を感じる理由のひとつに走行中のノイズがあるけれど、このクルマとこのタイヤの組み合わせなら、どこまでも走って行けそうだ。
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高次元で両立した強さとしなやかさ
試乗車のXC90には、オプションの電子制御式のリアエアサスペンションが装備されていた。これがどんなライドフィールをもたらすかというと、とにかく足がよく動いている様子が伝わってくる。そうしてサスペンションが大きく伸びたり縮んだりするときに感じられるのが、タイヤ(=アレンザLX100)が“丸い”ということだ。
「タイヤが丸いなんて当たり前じゃないか」と思われるかもしれないけれど、その当たり前を実感させるレベルでこなすというのは、相当レベルが高いということだ。凹凸を乗り越えたり、地面に押し付けられたりしても、タイヤは極力丸い形を保とうとし、それがスムーズで滑るような乗り心地につながっている。今回試乗したXC90は2tを軽く超える車重で、タイヤにかかる負荷も相当大きいはずだ。けれども、さすがはSUV専用設計。アレンザLX100はしっかり感と快適な乗り心地を見事に両立している。
コーナーに差しかかると、この「しっかり感と快適性の両立」を、さらに高いレベルで実感できる。XC90の全高は1760mmと、文部科学省が発表した日本の17歳男子の平均身長よりはるかに高い。そのぶん重心も高いはずなのだが、XC90とアレンザLX100は、高速コーナーでもタイトなコーナーでもしっかりと踏ん張り、上屋をグラっと傾かせて乗員にコワい思いをさせることがない。同時に、ステアリングホイールからはしっかりとしたグリップ感が伝わってくるから、ドライバーは自信を持ってハンドルを操縦できる。ハードなブレーキングを敢行しても、タイヤからはつぶれたりねじれたりする印象が一切伝わってこない。
アレンザLX100は、サイドウォールにSUV向けに最適化されたチューニングを施すことで高い負荷にも負けない“強さ”を獲得したという。これが、ふらつきのない正確無比な操縦性につながっているのだ。
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コンパクトなSUVでもぜひ試してみたい
今回、ボルボXC90とアレンザLX100の組み合わせを試して、あらためて「SUV用タイヤの開発は難易度が高い」ことを実感した。
同じサイズのハッチバックやセダンに比べると、SUVは全高が高く、それゆえに車重も増す。車高の高さを意識させないよう、タイヤにはロールを抑えて安定した姿勢を保つ能力が要求されるし、SUVの質量をがっちりと受け止める強さも必要とされる。一方で、現在のSUVの使われ方を考えれば、ハッチバックやセダンと遜色のない静粛性や乗り心地のよさも求められる。
「強さ」「しなやかさ」「グリップ力の高さ」「静かさ」と、さまざまな要件が高いレベルで要求され、その中には背反の関係にある性能さえも含まれる。オンロード向けのSUV用タイヤをゼロから開発しなければならない理由がそれだ。そして、こうしてSUV用タイヤに求められる性能を並べてみると、アレンザLX100が難しい要求に高いレベルで応えていることも理解できた。
今回は大型のプレミアムSUVでアレンザLX100を試したけれど、サイズ展開を見ると、このタイヤはコンパクトSUVにも対応している。コンパクトSUVの場合は、大型のそれと比べてタイヤからキャビンまでの距離が物理的に近くなるので、アレンザLX100の静粛性の高さがさらに効果的となるのではないか。スポーツ仕様のアレンザ001とともに、いずれ試してみたい。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸)
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車両データ
ボルボXC90 B6 AWDインスクリプション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4950×1960×1760mm
ホイールベース:2985mm
車重:2170kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:300PS(220kW)/5400rpm
エンジン最大トルク:420N・m(42.8kgf・m)/2100-4800rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)/3000rpm
モーター最大トルク:40N・m(4.1kgf・m)/2250rpm
タイヤ:(前)275/45R20 110W/(後)275/45R20 110W(ブリヂストン・アレンザLX100)
燃費:10.5km/リッター(WLTCモード)
価格:1004万円