「YOKOHAMA ADVAN dB V552」の“極”静粛性を体感する
驚きの進化 2021.03.29 2021 Spring webCGタイヤセレクション<AD> ヨコハマタイヤのフラッグシップブランド「ADVAN(アドバン)」において、最高のコンフォート性能を誇るプレミアムタイヤ「dB V552」。その静粛性と走りの安定性には、誰もが大いに感銘を受けることだろう。力作同士のコンビネーションに期待
クルマのパーツの中でも、タイヤは気の毒な存在だ。パワートレインのパワーやレスポンスだったら向上すればすぐにわかるし、ACCなどの先進機能には誰もが驚かされる。あるいは、インフォテインメントシステムがスマートフォンと連携するのもわかりやすく便利だ。一方で、タイヤの見かけは変わらない。いまも昔も丸くて黒い。
けれどもタイヤは、進歩していないシーラカンスのような存在ではない。クルマの進化とともに、実はタイヤの性能も大きく向上しているのだ。
今回は、見過ごされがちなタイヤ性能の向上を確認するという趣旨で、「マツダ3ファストバックXD Burgundy Selection(バーガンディーセレクション)」に、ヨコハマ・アドバンdB V552を装着して試乗を行った。
試乗を行う前に、試乗車となったマツダ3ファストバックXDバーガンディーセレクションを簡単に紹介しておきたい。
2019年5月に発表されたマツダ3は、デビュー1年半を迎えた2020年11月に初めての商品改良を受けた。ただしデザインに変更はなく、パワートレインとシャシーのチューニングに手が加えられている。今回試乗したのは1.8リッターのディーゼルターボエンジンを搭載するXDグレードで、駆動方式はFF。ディーゼルエンジンは、高回転域でのトルクが上積みされ、アクセル操作に対してレスポンスよく反応するように改良されている。また、よりフラットな乗り心地を目指して、シャシーのセッティングも見直された。
ファストバック専用のバーガンディーセレクションという赤いレザー内装の室内は、華やかさと上品さがバランスした雰囲気で、“小さな高級車”という言葉が頭をよぎる。
マツダ3には、「G-ベクタリングコントロール プラス(GVC Plus)」というシャシー制御システムが備わる。これはドライバーのハンドル操作に応じてエンジンのトルクを制御し、タイヤの接地状態を最適化するとともに、ブレーキを使って車両の姿勢を安定化させるという世界初の仕組みだ。この最先端の技術が最新のプレミアムタイヤとどのようなマッチングをみせるのか、期待がふくらむ。
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「タイヤの手柄」がよくわかる
スターターボタンをプッシュすると、ブルッというディーゼルエンジンらしい身震いとともにパワートレインが始動した。けれどもデーセルであることを意識させるのはこの瞬間だけで、すぐに粛々とアイドリングを始めた。
トランスミッションは、コンベンショナルなトルクコンバーター式の6段AT。シフトセレクターをDレンジにシフトしてブレーキペダルから足を離すと、マツダ3ファストバックXDバーガンディーセレクションはゆっくりと、滑らかに動き出した。
デビュー直後から何度か試乗しているマツダ3の足まわりには、かなりスポーティーなセッティングが施されているという印象を持っていた。ハンドル操作に機敏に反応し、素早く向きを変える。
一方で、場面によっては少しハーシュネスを感じ、「もう少しやさしくして」と思うこともあった。正確なハンドリングとトレードオフの関係にあると考えれば納得できるけれど、「小さな高級車」を標榜(ひょうぼう)するならもうひと頑張り、というのが率直な感想だった。
ところが今回の試乗では、そうした不満は消えていた。実際のところ、車両の足まわりの改良によってハーシュネスがマイルドになったと感じるのか、ヨコハマ・アドバンdB V552の効果なのか、見分けることは難しい。
けれども、首都高速特有の路面のつなぎ目を乗り越える瞬間の、タイヤと段差が接触したときのアタリのやわらかさは、はっきりとタイヤの手柄だ。ピシッという衝撃の第1波を、しなやかに受け止めている。
ヨコハマ・アドバンdB V552は、ショルダーの形状などをゼロから新設計することで、滑らかな接地形状を目指したとのことで、その効果は表れている。
そしてこのタイヤで本当に驚いたのは、首都高速からより車速の高い高速道路へと移った後だった。
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不快なノイズが出てこない
都心を離れて交通量が減ると、マツダ3ファストバックXDバーガンディーセレクションはアクセル開度一定の巡航状態になる。100km/h巡航時、タコメーターの針は2000rpmをちょっと超えたあたりをうろうろしている。エンジン回転数が低いために車内は静かで、ほぼ無振動。改良前より、騒音も振動も減っていると感じる。
ここで、本来なら聞こえるはずのタイヤと路面が擦れることで発するロードノイズが耳に入ってこないことに気づく。一般に、パワートレインが静かになると相対的にタイヤの音が気になるはずなのに、意識して音を探し出せば聞こえる程度で、音量はごくわずかだ。
タイヤは、ブロックが小さいほどロードノイズが小さくなるとされている。なぜなら、ブロックが小さければ路面をたたく音が静かになるからだ。
ヨコハマ・アドバンdB V552では、このブロックを最小化するのはもちろん、5種類のブロックのサイズを組み合わせ、配置も工夫することで静粛性を追求したという。特に、タイヤの内側(クルマに近いサイド)のブロックを可能な限り小さくしたことが、驚きの静粛性能につながっている。
車体の遮音・防音性能の向上、パワートレインの改良に伴うエンジン音の音量低下など、テクノロジーの進歩によって、クルマはどんどん静かになっている。ここで、もしタイヤが進化を止めていたら、ボンネットの下のノイズと風切り音は小さくなったのに、タイヤが発するロードノイズだけは変わらない、というアンバランスが生じていたはずだ。
けれども、クルマの進化と歩調を合わせて、ヨコハマ・アドバンdB V552もしっかりと前に進んでいるのだ。
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クルマのよさをしっかり生かせる
乗り心地がよくて静かなタイヤ、ということだけだと、ひ弱なガリ勉くんみたいだけれど、高速コーナーやワインディングロードのタイトなコーナーでも、ヨコハマ・アドバンdB V552は高い能力をみせてくれた。
ステアリングホイールを握っていて何より好ましいのは、タイヤがどのように路面と接地しているのかという情報がはっきりと伝わってくることで、自信をもって操舵することができる。これはセンター部分の2本のストレートリブがしっかりとしたハンドリングを実現しているからだ。
車重が1.4tを超えるマツダ3ファストバックXDは、コンパクトカーとしては軽量というわけではない。けれどもタイヤのサイドの補強ベルトが、コーナリング中もその車重をしっかりと支えてくれる。これもステアリングホイールから伝わるフィーリングのよさ、安心感につながっている。
冒頭に記したようにGVC Plusを装備するマツダ3は、ワインディングロードではスポーティーなコンパクトカーらしいアジリティー(敏しょう性)をみせる。ドライバーのハンドル操作にリニアに反応し、ドライバーがハンドル操舵を修正する動きが減るのがGVC Plusの売りだ。そしてこの、タイヤのグリップ力を使いこなすための最新技術に、ヨコハマ・アドバンdB V552はしっかりと応えている。
1.8リッターの直4ディーゼルは1600rpmという低い回転域から270N・mのトルクを発生するけれど、キュキュッとタイトなコーナーの出口でどんとアクセルペダルを踏み込んでも、タイヤがトルクを一滴も無駄にせずに路面に伝える様子が伝わってくる。
静粛性について感じたのと同じように、パワートレインやシャシー性能の向上に、ヨコハマ・アドバンdB V552はしっかり対応している。クルマはもちろん進化しているけれど、実はタイヤも同じように進化している。タイヤのプロファイルに始まり、ブロックの形状や大小の組み合わせ、そしてゴムに混ぜるシリカの粒を小さくすることなど、タイヤは黒くて丸いままのように見えて、昔とはまるで別物になっているのだ。
と思ったところでもう一度ヨコハマ・アドバンdB V552をじっくりと眺めると、サイドウォールにきれいなデザイン処理が施されているのに気づいた。実は、デザイン面でも洗練されている――普段は気づかないタイヤのあれこれがわかる、有意義な取材となった。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎)
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車両データ
マツダ3ファストバックXDバーガンディーセレクション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4460×1795×1440mm
ホイールベース:2725mm
車重:1410kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:130PS(95kW)/4000rpm
最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)/1600-2600rpm
タイヤ:(前)215/45R18 89W/(後)215/45R18 89W(ヨコハマ・アドバンdB V552)
燃費:19.8km/リッター(WLTCモード)
価格:304万4555円
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