「E-PACE」と「F-PACE」のPHEVがジャガーの新時代を告げる
未来に続くモダンラグジュアリー 2024.06.28 JAGUAR ~スポーツPHEVという選択肢~<AD> 英国が誇る名門ジャガー。ブランド創設から90年となる歴史が、パフォーマンスと環境性能を両立させるプラグインハイブリッドシステムを生み出した。「E-PACE」と「F-PACE」のPHEVに試乗し、個性と美しさのなかに宿る先進的な魅力を確かめる。生まれ変わろうとしているジャガー
2024年3月、「ABB FIAフォーミュラE世界選手権(東京E-Prix)」の直前に、ジャガーの電動化戦略について話を聞く機会があった。ジャガー・ランドローバー・ジャパンでジャガートランスフォーメーションディレクターを務めるサミュエル・ゴールドスミス氏が語ったプランは、非常に野心的なものだった。
ジャガー・ランドローバーブランドは、2021年に「REIMAGINE計画」を発表し、以下の目標を掲げた。
1:ジャガーを2025年よりBEVのラグジュアリーブランドとして再生する。
2:2030年末までにジャガー・ランドローバーの全モデルにBEVの選択肢を設定する。
3:2039年までに排出ガスを実質ゼロにする。
ゴールドスミス氏によれば、この目標設定に変更はないとのこと。そして氏は、目標到達に向けてのより具体的なクルマづくりのプランを語った。そのプランを要約すると、以下のようになる。
伝統にのっとったクルマづくりを大事にしつつも、時代に合わせたモダンラグジュアリーを提供すること。完璧なBEVを開発すること。他社とは明らかに違う個性を備えていること。
すでにデザインスタディーの開発は進んでおり、年内にもなんらかのかたちでお見せできるだろうとのことだった。
つまりジャガーはすべてのモデルがBEVになるだけでなく、ブランドすべてが生まれ変わろうとしているのだ。ちなみに2025年に発表される予定の第1弾モデルの価格設定は10万ポンド(1ポンド=200円の換算で約2000万円)程度が見込まれ、超高級車市場に参入することになる。
アグレッシブに変貌するジャガーというブランドにおいて、電動化の最先端にいるのがBEVの「I-PACE」と、E-PACEとF-PACEに設定されたPHEVだろう。ジャガーが考えるこれからのクルマを知るために、E-PACEとF-PACEのPHEVに試乗してみた。
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しっとりとした乗り心地のE-PACE
まず、「E-PACE R-DYNAMIC HSE PHEV P300e」のドライバーズシートに収まる。プラグインハイブリッドシステムを起動したところ、30km程度のEV走行ができるだけの電気が残っていた。そこで、「ハイブリッド」「セーブ」「EV」の3つのプラグインハイブリッド制御モードのうち、EVをセレクト。ちなみにフルに充電された状態だと、68km(WLTCモード)のEV走行が可能である。
EVモードで走りだして感じるのは「これは小さな高級車である」ということだ。 1960年代の「ヴァンデンプラ・プリンセス」の時代から、何度か小さな高級車を開発しようという試みがあった。けれども、必ずしも成功したとは言いにくかった。なぜならコンパクトカーの狭いエンジンルームには小排気量エンジンしか収まらないから、どうしても加速が苦しくなる。トルク不足を補おうとエンジン回転を上げると、今度は車内がノイズで満たされ、これまた高級とはほど遠い雰囲気になる。
ところが、モーターがこうした問題を解決してくれた。静かで振動が皆無であるだけでなく、モーターには電流が流れた瞬間に最大の力を発生できる特性があるから、アクセルペダルに軽く力を加えるだけで、粛々と発進するのだ。
全長4410mmというコンパクトなサイズでありながら、しっとりとした大人っぽい乗り心地を実現しているのは、リチウムイオン電池やリアモーターを低い位置に配置しているからだろう。もちろん、高級サルーンを手がけてきたノウハウもあるだろうけれど、この落ち着いた乗り心地も、小さな高級車だと感じさせる一因だ。
走行を続けて電気が減り、EVモードからハイブリッドモードに切り替わっても、発進時などを含め「ここぞ!」というタイミングではモーターがアシストするだけの電気は残されている。だから常に、滑らかで余裕のある加速に身を委ねることができる。
PHEVとは省エネルギーのためのテクノロジーだ。ただし実際に乗ってみると、それだけではなく、ジャガーが備えるラグジュアリー性をさらに強調する技術であることがわかる。
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新しいファン・トゥ・ドライブも味わえる
PHEVの制御モードのほかに、E-PACE R-DYNAMIC HSE PHEV P300eはドライブモードを切り替えることができる。「コンフォート」や「エコ」から「ダイナミック」モードに切り替えると、メーターパネルが赤を基調としたものになる。ダイナミックモードで走るとドライバーの体温が少し上昇したように感じるのは、こうした視覚効果だけではない。クルマのサイズがひとまわり小さくなったかのように、意のままに操ることができるからだ。
このクルマは、フロントに1.5リッター直3エンジンを軸としたマイルドハイブリッドシステムを置き、リアに配置されたモーターが後輪を駆動するというレイアウトになっている。したがってEV走行時は後輪駆動、いっぽうハイブリッド走行時はフロントをエンジンが、リアをモーターが駆動する四輪駆動となる。
走行状態に応じて自在に前後にトルクを配分するダイナミックモードは、まさに4本の脚で地面を蹴る野生動物だ。繊細なコントロールを受け付け、美しいコーナリングフォームでカーブをクリアする。こうした場面でもアクセルペダルを踏んだ瞬間に、モーターが電光石火のスピードでバチンと反応する。どんなにレスポンスに優れたエンジンでもこれには到底かなわない。
PHEVはラグジュアリー性を強調すると記したけれど、新しいファン・トゥ・ドライブも味わわせてくれるのだ。
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これがジャガーマジック
欧州ではすでに販売されていたジャガーF-PACEのPHEV仕様、「R-DYNAMIC HSE P400e」が2025年モデルより日本にも本格導入されることになった。ボディーはE-PACE R-DYNAMIC HSE PHEV P300eより345mm長く100kg重いが、エンジンは最高出力300PSの2リッター直4ターボで、8段ATに同142PSのモーターが内蔵される。PHEVのシステム最高出力を比べると、F-PACEが404PSでE-PACEが309PSとなる。
と、スペックだけを見ると、大柄でパワフルになっているけれど、いざ乗ってみると、さらに研ぎ澄まされた操縦感覚に驚かされた。ただ速くなっているだけでなく、アクセルペダルやハンドル操作に、よりリニアに反応してくれるのだ。サイズと出力が拡大しているのに俊敏になっているというのは不思議であるけれど、これが高級スポーツカーや大型のスポーツサルーンである「XJ」シリーズで名声を得てきたジャガーのマジックなのだろう。
スペックの違いはあれど、PHEVがラグジュアリー性とスポーティーさを際立たせるという点はE-PACEと同じだ。また、電気がなくなったらPHEVの制御モードでセーブモードを選び、シフトセレクターをDレンジの下にあるSレンジにシフトすると常時エンジンが働き、充電するのも共通。このセッティングでF-PACE R-DYNAMIC HSE P400eを高速巡航すると、EVモードで走行ができるくらいまで充電された。
今回試乗した2台は普通充電のみに対応するもので、自宅に200Vの普通充電器があると便利に使えることは間違いない。フル充電からスタートすれば50kmはEV走行ができるから、おそらく平日の送り迎えや近場の買い物をメインに使うのであれば給油は不要だろう。そして週末のロングドライブでは電池の残量が減ってきたら高速道路で充電しながら走り、森の中や海の近くに到着したらEV走行で自然と一体化する。そんな使い方が、頭に浮かんだ。
EV走行のスムーズさ、ダイナミックモードでの新次元のドライビングプレジャーを味わうと、仮に自宅に充電設備がなくても、セーブモードで充電しながらPHEVに乗りたくなる。
冒頭で記したフォーミュラEに話題を移すと、今シーズンのジャガーは好調で、第12戦の上海E-Prixが終了した時点でドライバーズランキングの1位と3位はジャガーのドライバーだ。1950年代にルマン24時間レースで圧倒的な強さを見せ、名声を獲得した史実と重なる。
歴史を踏まえつつ、革新的な取り組みで前進する──。ジャガーの2台のPHEVモデルに乗って、ジャガーが思い描く新しい高級車像が見えてきた。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎)
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車両データ
ジャガーE-PACE R-DYNAMIC HSE PHEV P300e
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4410×1900×1650mm
ホイールベース:2680mm
車重:2070kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:200PS(147kW)/5500-6000rpm
エンジン最大トルク:280N・m(28.6kgf・m)/2000-4500rpm
モーター最高出力:109PS(80kW)/1万rpm
モーター最大トルク:260N・m(26.5kgf・m)/2500rpm
システム最高出力:309PS(227kW)
システム最大トルク:540N・m(55.1kgf・m)
タイヤ:(前)235/50R20 104W/(後)235/50R20 104W(グッドイヤー・イーグルF1 ATアシメトリック)
ハイブリッド燃料消費率:13.0km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:68km(WLTCモード)
交流電力消費率:230.7Wh/km(WLTCモード)
車両本体価格:973万円
ジャガーF-PACE R-DYNAMIC HSE P400e
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4755×1935×1665mm
ホイールベース:2875mm
車重:2250kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:300PS(221kW)/5500-6000rpm
エンジン最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2000-4500rpm
モーター最高出力:142PS(105kW)/3650rpm
モーター最大トルク:278N・m(28.4kgf・m)/1000-3700rpm
システム最高出力:404PS(297kW)
システム最大トルク:640N・m(65.3kgf・m)
タイヤ:(前)265/45R21 104W/(後)265/45R21 104W(ミシュラン・ラティチュード ツアーHP)
ハイブリッド燃料消費率:10.8km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:68km(WLTCモード)
交流電力消費率:306Wh/km(WLTCモード)
車両本体価格:1150万円