トヨタ・オーリス120T/86 GT“リミテッド”/プリウスα S“ツーリングセレクション・G's”/ハリアー エレガンス“G's”
本命エンジンで激戦区に挑む 2015.04.14 試乗記 マイナーチェンジと合わせ、新開発の1.2リッターターボエンジン搭載モデルが追加された「オーリス」と、小変更を受けた「86(ハチロク)」、「G's」のラインナップに加わった「プリウスα(アルファ)G's」「ハリアーG's」をサーキットで試乗した。最小排気量で最上級グレード
マイナーチェンジとはいうものの、トヨタにとっては大きな変革だ。オーリスに与えられた1.2リッター直噴ターボエンジン「8NR-FTS」は、重要な戦略的意義を持つ。昨年「レクサスNX」でデビューした2リッターターボに続き、ダウンサイジングの本命エンジンがついにラインナップに加わったのだ。
オーリスは日本ではあまり目立つ存在ではないが、ヨーロッパでの知名度は抜群だ。「フォード・フォーカス」「プジョー308」などとともに、王者「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に挑んでいる。このCセグメントハッチバックというジャンルは、各自動車メーカーがプライドをかけて争う激戦区なのだ。新エンジンをオーリスにいち早く搭載したのは当然である。ゴルフはダウンサイジングでは先頭を行っていて、先代から1.2リッターターボを採用している。1.2リッターターボエンジンはルノーやプジョーもラインナップしており、これでトヨタは真っ向勝負をする態勢が整った。
従来の1.5リッターと1.8リッターの自然吸気エンジンはそのまま引き継がれ、新エンジンを搭載した「120T」というグレードが加わった。快適装備や豪華な内装が与えられ、最上級グレードという位置づけである。最も排気量が小さいエンジンを搭載するモデルを特別扱いしているところに、このモデルの持つ意味が表れている。
1.2リッターエンジンの最高出力は116psで、1.8リッターの144psには及ばない。しかしJC08モード燃費は19.4km/リッターで、1.8リッターモデルの14.4km/リッターはもちろん、1.5リッターモデルの18.2km/リッターをも上回る。対ゴルフではパワー・トルクでは優位に立つが、燃費でライバルの21.0km/リッターに手が届かなかったことは惜しまれるところだ。
CVTでもスポーティーな走り
用意された試乗車は、120Tのみである。そして、試乗会場は袖ヶ浦フォレストレースウェイ。走ったのはサーキットだけである。オーリスはヨーロッパではゴルフ対抗のファミリーカーという位置づけだが、日本ではスポーティーなホットハッチと受け止められている。そういう意味では、このクルマをテストするにふさわしい環境とも言えるだろう。
内外装にも手が加えられ、フロントロワグリルやリアバンパーなどの意匠が変更されている。それによって全長が55mm拡大した。運転席に座るとインストゥルメントパネルのイメージがマイチェン前とずいぶん異なっていることに驚かされる。明るい色調の木目調加飾は120T専用で、他のグレードに用意されるブラックのパネルは選ぶことができない。シートは本革とウルトラスエード、合成皮革を組み合わせたタイプだ。
40km/h制限のピットレーンを抜けてアクセルを踏み込むと、即座に強い加速が始まる。1.8リッター級との説明にウソはない。直噴化して圧縮比を上げ、レスポンスのいい小径タービンを用いる典型的な新世代ターボであり、ターボラグなどという言葉とは無縁である。サーキットという特殊な状況での試乗なので日常的な乗り方での優劣は判断しがたいが、フォルクスワーゲンやルノーと比べて引けをとらない仕上がりであることは確かだ。
120Tに与えられるトランスミッションはCVTのみだ。Dレンジに入れたままでも、そこそこスポーティーな走りはできる。パドルが付いているので、サーキットや山道では積極的にシフトしてもいい。ただ、ターボエンジンとCVTのマッチングがいいと開発陣が述べるとおり、ブレーキング時のシフトダウンも機敏に行う。街乗りではおまかせ状態でもキビキビ走れるはずだ。
リアサスペンションには1.8リッターモデルと同様にダブルウィッシュボーンが採用されている。その恩恵か、タイトコーナーでの安定性は十分満足できるものがあった。刺激を求めるより安心感を優先するのは、すべての車種に通ずる一貫したトヨタの哲学である。
広い範囲で作動する自動ブレーキ
安全性能の強化も、新型オーリスのアピールポイントだ。「カローラアクシオ/カローラフィールダー」のマイナーチェンジに続き、「Toyota Safety C」が設定されている。衝突回避支援型プリクラッシュセーフティー、レーンデパーチャーアラート、オートマチックハイビームを組み合わせたもので、120Tには標準装備となっている。
この日は、プリクラッシュセーフティーの体験イベントも行われた。日本ではスバルが先行し、最近では軽自動車でも珍しくなくなってきた技術である。トヨタもようやく本腰を入れることを決めたようだ。トヨタのシステムの特徴は、レーダーレーザーと単眼カメラを組み合わせたところである。2つのセンサーで認識性能と信頼性を高め、統合型の安全運転支援を目指している。
自動ブレーキは、約10〜80km/hの広い範囲で作動する。衝突の危険を察知すると、まず音と表示でドライバーに注意を促し、それでも反応がなければ自動的に減速する方式だ。体験イベントでは、約30km/hまで加速してアクセルを離し、「アルファード」風の疑似車に向かって惰走する。ブレーキを踏みたい気持ちを何とかガマンすると、システムが見事に作動して直前で停止した。
疑似車のパネルには、反射素材のステッカーが貼られていた。これは自動車のリフレクターを模したもので、レーザーはこれに反応する。単眼カメラはブレーキランプの赤色を感知するようになっていて、二重のセンシングで安全性を高めているわけだ。この手のイベントでは思わぬ事故が発生することもあるのだが、この日は無事故で乗り切ったようだ。自動運転が視野に入った今、アクティブセーフティーの技術は進化を加速させている。
86、G's、自動車アトラクションも
袖ヶ浦フォレストレースウェイでは、オーリスの試乗だけが行われたのではない。もともとオーリスの試乗会は予定されておらず、むしろ付け加える形でサーキットでの試乗が決まったのだ。
パドックに並べられていたのは、改良が施された86である。内装にタンカラーミックスが追加されたり外装に新色が設定されたりしたものの、見た目には変わらない。ファッションカスタマイズ版の「style Cb」が新設定されたが、それはまったくの別物。機能面で変わったのは、電動ステアリングの特性である。切り始めのアシスト量をよりリニアな制御にしたということで、何とも地味な改良なのだ。
昨年はボルトの形状変更だったから、それに比べればわかりやすいアップデートではある。前回は後付けで変更することもできたが、今回はボディー剛性の強化とセットになっていることもあって従来モデルのオーナーには恩恵はもたらされない。86では毎年着実に改良することが決められているようで、買い時をいつにするかは悩ましい選択になる。
昨年12月に新設定されたプリウスα G'sとハリアーG'sも試乗車が用意されていた。G'sはGAZOO Racingのテストドライバーがチューニングを施したモデルで、幅広いユーザーに走りの楽しみを提供しようというスポーツコンバージョン車シリーズだ。どちらも通常はサーキットを走ろうとは考えない車種だが、思いのほかまともに走れるクルマに仕上がっていた。重量があるのでさすがにタイヤは厳しかったが、サスペンションを強化したことで乗り心地が良くなっていたことは意外な発見だった。
駐車場エリアでは、THE HUNTというイベントが行われた。トヨタは車庫入れ、料金所通過などを競技化したBIG10という自動車アトラクションを開催している。本格的なモータースポーツは敷居が高いが、クルマで遊びたいという層に向けての新しい試みだ。THE HUNTはジムカーナの初心者版というおもむきで、パイロンをクリアするとセンサーが働いて風船が割れる仕組みだった。プロの運転に同乗することもでき、クルマの魅力を伝えるためにはおあつらえ向きのイベントである。
試乗会というよりは“トヨタ・モータースポーツ祭り”といった風情だった。オーリスの日本での受け止め方はスポーティーなホットハッチというものであり、うまくマッチしていたと言えなくもない。運転の楽しみを知る人が増えれば、オーリスのようなクルマにもっと光が当たるはずだ。
(文=鈴木真人/写真=荒川正幸)
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テスト車のデータ
トヨタ・オーリス120T
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4330×1760×1480mm
ホイールベース:2600mm
車重:1300kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:116ps(85kW)/5200-5600rpm
最大トルク:18.9kgm(185Nm)/1500-4000rpm
タイヤ:(前)225/45R17 91W/(後)225/45R17 91W(ヨコハマ・アドバンデシベル)
燃費:19.4km/リッター(JC08モード)
価格: 259万37円/テスト車=271万2077円
オプション装備:225/45R17タイヤ&17×7Jアルミホイール(12万2040円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:サーキットインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ86 GT“リミテッド”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4240×1775×1320mm
ホイールベース:2570mm
車重:1250kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:200ps(147kW)/7000rpm
最大トルク:20.9kgm(205Nm)/6400-6600rpm
タイヤ:(前)215/45R17 87W/(後)215/45R17 87W(ミシュラン・プライマシーHP)
燃費:12.4km/リッター(JC08モード)
価格:296万2145円/テスト車=298万6985円
オプション装備:本革<タンカラー>×アルカンターラ<運転席・助手席シートヒーター、ダブルシルバーステッチ付き>(2万4840円)
テスト車の年式:2015年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:サーキットインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・プリウスα S“ツーリングセレクション・G's”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4665×1775×1560mm
ホイールベース:2780mm
車重:1480kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:99ps(73kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm(142Nm)/4000rpm
モーター最高出力:82ps(60kW)
モーター最大トルク:21.1kgm(207Nm)
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT 01)
燃費:-- km/リッター
価格:329万2037円/テスト車=329万2037円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2015年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:サーキットインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・ハリアー エレガンス“G's”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1835×1655mm
ホイールベース:2660mm
車重:1620kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:151ps(111kW)/6100rpm
最大トルク:19.7kgm(193Nm)/3800rpm
タイヤ:(前)235/55R19 101W/(後)235/55R19 101W(ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ)
燃費:--km/リッター
価格:329万1055円/テスト車=374万5735円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトパールクリスタルシャイン>(3万2400円)SDナビゲーションシステム+JBLプレミアムサウンドシステム(41万3640円)/アクセサリーコンセント(8640円)
テスト車の年式:2015年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:サーキットインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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