【F1 2016 続報】第5戦スペインGP「鬼の居ぬ間に、歴史的な快挙」

2016.05.16 自動車ニュース
F1第5戦スペインGPで初優勝したレッドブル・タグ・ホイヤーのマックス・フェルスタッペン(中央)、2位に終わったフェラーリのキミ・ライコネン(左)、同じくフェラーリで3位に入ったセバスチャン・ベッテル(右)。(Photo=Red Bull Racing)
F1第5戦スペインGPで初優勝したレッドブル・タグ・ホイヤーのマックス・フェルスタッペン(中央)、2位に終わったフェラーリのキミ・ライコネン(左)、同じくフェラーリで3位に入ったセバスチャン・ベッテル(右)。(Photo=Red Bull Racing)

2016年5月15日、スペインのサーキット・デ・カタルーニャで行われたF1世界選手権第5戦スペインGP。レースウイーク前に発表されたレッドブルのドライバー交代劇、そしてレースデーに起きたメルセデスの同士打ち。意外性に満ちた週末は、マックス・フェルスタッペンの初優勝という劇的な幕切れを迎えた。

レース終盤、ライコネンからのプレッシャーにも動じず見事優勝を遂げたフェルスタッペン。トロロッソからレッドブルに“昇格”したばかりの最初のレースでの快挙となった。18歳227日で最年少優勝記録を打ち立てたばかりか、初のオランダ人F1ウィナー、最年少レースリーダー&ポディウムというレコードまで樹立した。(Photo=Red Bull Racing)
レース終盤、ライコネンからのプレッシャーにも動じず見事優勝を遂げたフェルスタッペン。トロロッソからレッドブルに“昇格”したばかりの最初のレースでの快挙となった。18歳227日で最年少優勝記録を打ち立てたばかりか、初のオランダ人F1ウィナー、最年少レースリーダー&ポディウムというレコードまで樹立した。(Photo=Red Bull Racing)
スタートでポールシッターのルイス・ハミルトン(手前中央)にアウトから襲いかかりトップを奪ったニコ・ロズベルグ(その右)。この後、トップ2台のメルセデスは接触し、0周で戦列を去ることになる。(Photo=Ferrari)
スタートでポールシッターのルイス・ハミルトン(手前中央)にアウトから襲いかかりトップを奪ったニコ・ロズベルグ(その右)。この後、トップ2台のメルセデスは接触し、0周で戦列を去ることになる。(Photo=Ferrari)

■レッドブルのドライバー交代劇

今季5戦目となるスペインGPを前に、シーズン途中ではめずらしいドライバーの「トレード」が行われた。エナジードリンクメーカーであるレッドブルが擁する2チームのうち、トップチームのレッドブルに乗るダニール・クビアトがジュニアチームであるトロロッソへ“降格”、逆にトロロッソからはマックス・フェルスタッペンがレッドブルに“昇格”した。

前戦ロシアGPで、クビアトはスタート直後にセバスチャン・ベッテルに追突しフェラーリをリタイアに追い込み、さらに悪いことにチームメイトのダニエル・リカルドをも巻き込んでしまった。コンストラクターズランキング3位のレッドブルはロシアで無得点に終わり、同2位のフェラーリに19点差をつけられ、また4位ウィリアムズには6点差まで詰め寄られた。
その前の中国GPでは自身2度目の表彰台3位を獲得するも、スタートでの追い抜きが強引だったとベッテルからおとがめをもらっていた。

レッドブルとしてはそんなクビアトにおきゅうを据えたかったか、はたまた新進気鋭のフェルスタッペンへの期待感が大きかったからか、今回のドライバー交代を決断したようである。
昨季、史上最年少16歳のF1ドライバーとしてトロロッソで華々しいデビューを飾ったフェルスタッペンは、コース内外でルーキーらしからぬ才能を発揮。初年度に49点を獲得しランキング12位という成績を残した。現在18歳のこの若きオランダ人にレッドブルのみならず強豪ライバルチームまでもが熱い視線を送っていることは間違いない。
一方、F1キャリア3年目のクビアトも22歳になったばかり。デビュー1年でトロロッソからレッドブルに昇進、評価の高いリカルドを上回るランキング7位で昨シーズンを終えた。

2人ともドライバーとしての成長期の真っただ中にいる。このトレードは、特にクビアトにとって厳しすぎるのではないか、もっと時間を与えてもいいのではないかという同情的な意見は、ルイス・ハミルトンをはじめとするドライバーからも聞こえてきた。

レッドブルは異例の2チーム体制を敷き、4人の正ドライバーを抱え、若手ドライバーを積極的に起用して次世代のチャンピオンを輩出しようとしている。そうした姿勢が強く出た今回のドライバー交代劇だったのかもしれない。

このトレードが誰に、どう転ぶかは、コース上で明らかになること。そしてその時は、初戦でいきなりやってきた。それも最も劇的なかたちで。

フェラーリはフリー走行でこそメルセデスに肉薄したものの予選で惨敗。ポールタイムから遅れること1秒以上でライコネン(写真後ろ)5位、ベッテル(同前)は6位と3列目に沈んだ。メルセデスがいなくなったレースではレッドブルと優勝争いを繰り広げるも、ライコネンは0.6秒届かず2位、ベッテル3位。(Photo=Ferrari)
フェラーリはフリー走行でこそメルセデスに肉薄したものの予選で惨敗。ポールタイムから遅れること1秒以上でライコネン(写真後ろ)5位、ベッテル(同前)は6位と3列目に沈んだ。メルセデスがいなくなったレースではレッドブルと優勝争いを繰り広げるも、ライコネンは0.6秒届かず2位、ベッテル3位。(Photo=Ferrari)

■ハミルトンが3戦ぶりのポール、マクラーレン・ホンダ初Q3進出

開幕4連勝、チャンピオンシップで43点リードと波に乗るニコ・ロズベルグに、まずは予選でハミルトンが待ったをかけた。
ハミルトンは、Q3最初のアタックで失敗しロズベルグに0.802秒差をつけられたものの、続く最後の一発を見事に決め逆転に成功。第2戦バーレーンGP以来となる今季3回目、通算52回目のポールポジションを奪った。2番手はロズベルグで、メルセデスが1列目独占となった。

空力的にシビアなカタルーニャでエアロマシンのレッドブルが覚醒。リカルド3位、注目集まるフェルスタッペンは4位からレースにのぞむこととなった。逆にフェラーリはキミ・ライコネン5位、ベッテル6位と予選惨敗。ウィリアムズのバルテリ・ボッタス7位、トロロッソのカルロス・サインツJr.8位、フォースインディアのセルジオ・ペレスは9位につけた。そしてマクラーレンとホンダはコンビ復帰2年目にして初のQ3進出を果たし、スペインの英雄フェルナンド・アロンソが予選10位に入った。

“ヤングスター”フェルスタッペンの加入で奮起したレッドブルのダニエル・リカルド(写真)は、フェルスタッペンを従えて予選3番手からトップへ。しかし作戦上不利な3ストップを選択したことと、残りわずかというところでパンクに見舞われたことで結果4位。3位ベッテルへ仕掛けたレイトブレーキング&オーバーテイクは成功しなかったが見るものを沸かせた。(Photo=Red Bull Racing)
“ヤングスター”フェルスタッペンの加入で奮起したレッドブルのダニエル・リカルド(写真)は、フェルスタッペンを従えて予選3番手からトップへ。しかし作戦上不利な3ストップを選択したことと、残りわずかというところでパンクに見舞われたことで結果4位。3位ベッテルへ仕掛けたレイトブレーキング&オーバーテイクは成功しなかったが見るものを沸かせた。(Photo=Red Bull Racing)
予選でフロントローを独占したハミルトン(右)とロズベルグ(左)のメルセデス勢は、オープニングラップで接触し2台そろってリタイア。2014年のベルギーGPでも起きた同士打ちへの対応に、チームは再び頭を悩ますことになりそうだ。(Photo=Mercedes)
予選でフロントローを独占したハミルトン(右)とロズベルグ(左)のメルセデス勢は、オープニングラップで接触し2台そろってリタイア。2014年のベルギーGPでも起きた同士打ちへの対応に、チームは再び頭を悩ますことになりそうだ。(Photo=Mercedes)

■メルセデス、まさかの同士打ちで0周リタイア

快晴の決勝日、シグナルがすべて消えると、予想外の出来事が待ち受けていた。メルセデス2台の同士打ちである。

長い直線の後のターン1、ポールシッターのハミルトンにロズベルグがアウトから襲いかかり、ロズベルグがトップを奪った。続く高速のターン3、2位に落ちたハミルトンは首位ロズベルグのリアに迫るも、ターン4の飛び込みでロズベルグがインを閉め、行き場を失ったハミルトンはコースサイドのグリーンにマシンを落とした。挙動を乱したハミルトンのマシンは先頭の同じカラーのマシンを巻き添えにコースアウト、1周もせずにメルセデスは戦列を去った。

チャンピオンチームがものの30秒で姿を消しあっけにとられた観客の前を、セーフティーカーが走り抜けた。66周レースの4周目に再スタートが切られると、1位リカルド、2位フェルスタッペンとレッドブルが1-2、3位のサインツJr.を挟み、4位ベッテル、5位ライコネンとフェラーリ勢が追いかける展開となった。

強敵メルセデスという「鬼」の不在は、ライバルにとっては絶好のチャンス到来。ポディウムの頂上にのぼるのはレッドブルか、フェラーリか。抜きにくいコースとして知られるカタルーニャで、2チーム4台はピットストップ作戦を変えて戦った。

3ストップを選んだのはリカルドとベッテル、2ストッパーはフェルスタッペンとライコネン。ピレリの予想では2ストップの方が有利とのことだったが、実際、その通りにレースは進んだ。

マクラーレン・ホンダは、目標としていた予選Q3進出をここスペインで初めて達成し、フェルナンド・アロンソ(写真)は10番グリッドを獲得。ジェンソン・バトンは12番グリッドからレースにのぞんだ。スタート後のメルセデス同士打ちの混乱でバトン8位、アロンソ9位と入賞圏に駒を進めるも、アロンソはレース半ばでパワーを失いリタイア。バトンは9位入賞でチームは2戦連続でポイントを獲得した。(Photo=McLaren)
 
マクラーレン・ホンダは、目標としていた予選Q3進出をここスペインで初めて達成し、フェルナンド・アロンソ(写真)は10番グリッドを獲得。ジェンソン・バトンは12番グリッドからレースにのぞんだ。スタート後のメルセデス同士打ちの混乱でバトン8位、アロンソ9位と入賞圏に駒を進めるも、アロンソはレース半ばでパワーを失いリタイア。バトンは9位入賞でチームは2戦連続でポイントを獲得した。(Photo=McLaren)
	 

■最年少ウィナーの誕生

各陣営がそれぞれのピットストップを終えると、残り20周以上を残した時点で、2ストップ勢のフェルスタッペン1位、ライコネンが2位、3ストッパーのベッテルは3位、リカルドは4位。雌雄はコース上での勝負で決することとなった。

レッドブルでの初戦でいきなり優勝争いに加わることになった18歳のフェルスタッペンに、2007年王者、36歳の大ベテランであるライコネンが迫る。DRSが使える1秒以内での接近戦で、ライコネンは各所で揺さぶりをかけるも、フェルスタッペンが動じることはなかった。

66周、1時間半のレースで真っ先にチェッカードフラッグを受けたフェルスタッペンは、レッドブルでの初レースで自身初表彰台、初優勝という快挙を成し遂げた。さらにこれまでベッテルが保持していた最年少優勝記録を2年以上縮める、18歳227日での初勝利となり、元F1ドライバーの父ヨスも実現できなかった、オランダ人初のウィナーとしてもその名を刻むこととなった。

トップ2台の攻防に加え、ベッテル対リカルドのつばぜり合いも白熱した。表彰台を目指すリカルドは得意の“スーパーブレーキング”でベッテルをオーバーテイクしかけたが、4冠王者も負けずに応戦。最後はリカルドのタイヤがパンクしたことで決着した。

メルセデスのいないレースは、これだけ盛り上がるものだということを印象付けたレースだった。そしてそのチャンピオンチームには、ロズベルグとハミルトンという宿敵同士のマネジメントという、重い課題が再び突きつけられている。

次の第6戦は63回目の開催となるモナコGP。決勝は5月29日に行われる。

(文=bg) 
 

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。