スマート・フォーツーカブリオ ターボ リミテッド(RR/6AT)
マニアではないアナタにも 2016.09.13 試乗記 「スマート・フォーツー」に限定モデル「カブリオ ターボ リミテッド」が登場。90psと13.8kgmを発生する0.9リッター直3ターボエンジンの出来栄えを試すとともに、あらためて3代目となる現行型スマートのドライブフィールを確かめた。ピッチングが気にならない
スマート・フォーツーというか2人乗りのスマート、私は勝手に「オムスビ君」と呼んでいる。今度ので3代目だからオムスビ君3。さらにカブリオでターボだからオムスビ君3CT……を運転してアッと思ったことに、ピッチングが気になる度合いがうんと低くなっていた。前までなかったナニゴトかが新しいので起きるようになった場合はもっとわかりやすいかもしれないけれど、今回のこのケースに関しては逆で、前までハッキリあったのがこんどのにはない。かなり。ほとんど。
ピッチングとはなにか。ナニゴトか。ものすごく簡単にいうと、走行中にクルマの前アシが縮んで後ろアシが伸びる。その反動で、今度は前アシが伸びて後ろアシが縮む。そういう方向の動きである。例えばブレーキをかけるとクルマの姿勢は横からみて前のめりになるし、アクセラレーターを踏み込んで加速したらその逆つまり後ろのめり(?)になるわけだけど、その種の動きというか揺れが短い時間のなかでギッタンバッコン繰り返されるのが(モンダイありな種類の)ピッチングだと考えれば、まあ、ほぼほぼオッケーでしょう。ピッチングはクルマの乗り心地の快適さを損ねる要因のワンオブ最右翼の現象でもあるので、試乗記なんかではよく……ではないかもしれないけれど、言及される。わかりやすいピッチングがわかりやすく発生していたら、そのクルマの乗り心地は、バッサリいっちゃうとNGである。
オムスビ君の場合、その特有のディメンションからして対ピッチング的にはかなりツラそう。ベースの条件がハッキリ不利っぽい。なにしろホイールベースが極端に短い。その極端に短いホイールベースとの対比でいうと、クルマの重心はすごく高い。あえていっちゃえば、「ピッチングさん、いらっしゃぁ~い」なカタチをしている。そのオムスビ君にして、今度のこれは、ピッチング系の揺れを不快に感じることがほとんどない。もっというと、「ゆったりしたストローク感をともないつつ……」なんて書いてもそんなにウソにはならないぐらい、乗り心地は全体として快適にできている。そして、巡航速度を上げるほどにそれはよくなる。乗り心地の基本というか土台になる車体のガッチリ度が高いのは相変わらず。
トレッドの拡大が効いている
「ほとんどない」ということはぶっちゃけゼロにはなっていないのだけど、でもそれ、つまりまだ残ってるピッチング系の気になる揺れ、要因としてはおそらくパワートレインが主なソレである。具体的には、発進直後あたりの、低いギアで低い速度で走っているような状況。そこからアクセルペダルの踏み込みをガバッと急激に戻すような操作をすると、フロントがピョコンとお辞儀する。「操作をすると」といってもそれは運転手がそうしたくてするのではなくて、ホントはもっとジワッと戻してジワッとエンジンブレーキを利かせたい。のだけれど、ちょっとだけジワッと戻した程度ではロクにエンブレが利かなくて、それでつい、ガバッとやってしまう……と、ピッチング。あるいは速いノーズダイブ&テールスクウォット。パワートレインのドライバビリティーの仕上げがもっとキレイにできたら、この症状は快方へ向かうはず。
「んー……」と感心しながら、かつナゾをかけられたような気持ちになりながら運転していて「ああ、アレかな」と思い当たったのは幅。オムスビ君3は全幅とトレッドがズガーンとワイドになった。ロールに対する踏ん張りに関してベース条件的にだいぶラクになって、そのおかげで、簡単にいうと横転対策必死感まるだしのカタいアシにしなくてよくなった。メインスプリングとアンチロールバー=スタビライザーの役割分担というのはあるにしても、簡単にいっちゃえばロール方向にカタいアシはピッチ方向にもカタい。従来のオムスビ君で気になっていたピッチング関係の動きは、細かいことをいうと、ピッチングを必死に堪えてリキんでる感じなのがツラかった。人間でいうと、止まらないシャックリを頑張って頑張って押さえ込もうとしてるときのような。それが今回、なくなった(……といってしまいましょう)。とにかく、すごーくラクになった。
日々の自由を広げる小回り性能
ということで冗談抜き、オムスビ君3CTの場合、特殊なディメンションのクルマに乗っている感じがほとんどない。または、あんまり。高速道路をズバーッと走って止めて降りてクルマの姿を眺めると、そのときはものすごくビックリする。「なんで、こんなカタチのクルマがあんな感じで走れるの!?」。従来オムスビ君のときは、「ま、このカタチだからねえ。しょうがない」だった。「それにしちゃあ、よく頑張ってるよキミは!!」って。オムスビ君、私は好きである。前から好きだった。「ヘンなクルマではあるけどちゃんとしてるところもあるし、好き!!」だったのが、今度はその「ヘンなところ」がかなり、なくなった。つまり誰にでもオススメできる度が大幅にアップしたということで、実にメデタイ。
ただし。制限速度が30km/hとかの、いわゆる生活道路(っていうんですか? ヘンな名前)を走っているときはオムスビ君、フツーではない。例えば、狭い四つ角を曲がるとき。簡単にいうと、クルリンパ。タダゴトでなくおもしろい。極端というよりは、すごく自由がきく感じ。思ったとおりに曲がれる感じ。Uターンなぞしようものならワッハッハ!! 笑いが止まらない。前輪の最大切れ角がガーンと大きくなったのは、これも……というか世間一般的にはこれこそが、車体がワイドになったことで得られた最大のメリットにして最大のアピール点、なのでしょう。
右ハンドルのドライビングポジションは、簡単にいってモンダイなし。シートの脚(鉄パイプ物件)を作り直してもらったらなんとかフツーになるんじゃないかと思ってそのあたりをしげしげ眺めたことも以前はあったけど、オムスビ君3はかなりバッチリ。ほぼバッチリ。「ここだな」の位置や角度がすぐに決まって、あとから調整をやり直すことがない。減点要素はせいぜい、フットレストがないことぐらい。あと、これは以前からだと思うけど、シートがイイ。パッと座ったらそのまんまずっと……系。モジモジ何度も座りなおしたりなどなし。それと、今度のはシートリフターがついている!! すげえ!!
コーナリングで感じるストレス
ということでオムスビ君3CTは大筋ほとんどゴキゲンぱなしのクルマなのだけど、気になるところがゼロではない。なかった。で、それはナニかというと、操舵(そうだ)関係。ハンドルの手応えそのものはまあモンダイなしとして、そのスジでいう“横蹴り”が強く出る傾向がある。あるいは、それが運転しにくさにつながるときがある。横蹴り。キャスターの横蹴り、なんていわれる現象。
状況としては、ワインディングロードを走っているときにそれが気になる。あるいは、そのクセがわかりやすい。特に、ヘアピンやそれに近いようなRの小さいカーブで。具体的には、例えば左コーナーでハンドルを左へ回すと、クルマのノーズがグイイッ!! とイン側へ、つまり左へ押される(蹴られる)感じがある。運転手としてはもっとスーッとおだやかにクルマの向きを変え始めたいところでグイイッ!! 対策としては、気をつけてゆっくりとハンドルを動かし始める。きり始めのところをソッと、ソーッと。思ったとおりハンドルをきっていけばそれでOK、正解、なのが理想なので、このときはちょっとかもっと、ストレスを感じる。惜しい!!
キャスターの横蹴り。ヨリ正確にはキャスタートレールが大きめについてることによる横蹴り。なんでそんなこと(つまりキャスタートレールを大きめに設定してること、ですね)をしてるかというと、ごく一般的なフツーの回答としては「直進性のため」。あとは、キャスターを寝かせることで転舵時の(あるいはロールしたときの)フロント外輪の対地キャンバー角の目減りぶんを補正するため。ゴロンとスッ転ぶ心配が大幅に減ったオムスビ君3なので、つきましては、舵の利きの感じを強めたい……というような狙いも、あるいはあったのかもしれない。じゃあオムスビ君3のキャスターは何度でキャスタートレールが何mmかときかれても測ってないしナンにもいえませんが、実際、舵はすごく利く。直進時のハンドルの(というか前輪の)据わり感もハッキリある。舵の利きをひたすら穏やかに(もっというとボンヤリ系に)しておくことでなんとか平穏を保っていた感のあった旧世代のオムスビ君たちとは別世界。
屋根の状態で変わるドライブフィール
なおというかただしというか、今回のオムスビ君はカブリオである。幌(ほろ)型車。幌を開け、さらにAピラー上端とBピラー(……なのかCピラーなのかワカランですがw)の上端をつないでいる部材×2を取り外すと、上屋のカタさや振動モードがハッキリと変わる。このテのクルマにはフツーにあることなのだけど、それによって舵の利きの感じも変わる。具体的には、横蹴り感がマイルドになる。今回、天候の都合によりワインディングロードでこの状態を試してはいないけど、でも変わります。箱崎の屋根下パーキングを拠点にして首都高で確認済み。外して着けて、また外し。着けたり外したりがメンドくさそうと思う人は多いだろうけど、やってみると実にカンタン。「ドイツ車、ちゃんとしてやがるなあ」。それと、雨関係。間欠モードではワイパーの拭き取り能力が足りないかなあぐらいの強さで降っていても、走っていれば大丈夫。
気になるDCT……というよりはこれ、むしろエンジンのほうではないか。具体的には自然吸気領域、すなわち過給がちゃんと利いてくれる前の状況でのレスポンスのトロさがちょっと気になる。普段のナニゲな加速要求に対する応答がややニブい。こない。間がある。あるいは間延び感が。その先ではちゃんと速いしチカラがあるからものすごくダメとは決していわないけど、さりとてバリバリ一線級ともいいがたいこの感じ。思い出すのはそう、「ルノー・ルーテシア ゼン」のMTのあのエンジン。なんでメルセデスのシャシーにルノーエンジンが……とかいったりして(笑)。
タイヤの指定空気圧にご用心
今度のスマート、日本における販売のメインは長いほうつまり「フォーフォー」で、オムスビ君はレギュラー扱いされていない。控え選手? フツーにドアが4枚あって後席もあるほうがフツーに売りやすいという判断があったことは想像に全然かたくないし大いにモットモではあるけど、でも運転するものとして万人にオススメできる度がヨリ高いのはオムスビ君のほうではないか――という考えが、私のアタマのなかを占めている。こないだJAIAテストデーでチョイ乗りしただけではあるけど現行フォーフォー、今回のオムスビ君ほどクルマとして普遍性が高いものになっているとはちょっと思えなかった。でも、超ロングなバージョンのビーグルダイナミクスや乗り心地をちゃんとするために車体のワイド化が必要だったのだとしたら(その可能性は大いにある)、そしてそのおかげでオムスビ君3がこのようなものになれたのだとしたら、その意味では実にもってフォーフォーさまさま、ですけどね。
あとそう、忘れちゃいけない空気圧。今回借りたオムスビ君のタイヤのサイズに対する推奨値なのか指定値なのかは前後とも2.0kg/cm2なのだけど、いきつけの最寄りのガソリンスタンドで測ってみたらばフロントが2.1弱でリアが2.4。そのときの気温は車載の外気温計によると22℃で、もっというと天気はいまにも雨が降りそうな曇りで(あるいはパラッと降ってたかも)、さらにクルマは駐車場からチョロッと動かしただけの状態だったから、要はいわゆる冷間内圧。「ほほう」と思ってリアも2.1弱に調整して走ってみたらば「うわーダメだあ!! 酔うわ、これ」。後ろがフワつく。フワつきまくる。ですぐ戻ってリアを2.4に。わかってやってあったんだったら、ナイス広報チューン。買った人はご参考に。
(文=森 慶太/写真=向後一宏)
テスト車のデータ
スマート・フォーツーカブリオ ターボ リミテッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2755×1665×1540mm
ホイールベース:1875mm
車重:990kg
駆動方式:RR
エンジン:0.9リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:90ps(66kW)/5500rpm
最大トルク:13.8kgm(135Nm)/2500rpm
タイヤ:(前)165/65R15 81T/(後)185/60R15 84T(ミシュラン・エナジーセーバー)
燃費:22.0km/リッター(JC08モード)
価格:248万円/テスト車=260万4900円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション:スマート ベーシックキット<ETC車載器+フロアマット+スマート カラビナ>(2万5000円)/ポータブルナビ(9万9900円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:647km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:644.5km
使用燃料:45.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:14.2km/リッター(満タン法)/15.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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森 慶太
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