第365回:スバル初のミニバン「エクシーガ」試乗!
つくづくスバルって会社は……
2008.07.11
小沢コージの勢いまかせ!
第365回:スバル初のミニバン「エクシーガ」試乗! つくづくスバルって会社は……
どこかルノーっぽいような
さてさて久々にクルマのハナシを(笑)。
「スバル・エクシーガ」の試乗、行ってきました。一部軽やバッジチューン車を除き、事実上の同社初めての3列シートミニバン!
日産が「プレーリー」を1982年に、ホンダが「オデッセイ」を1994年に出したことを考えると、正直ミニバンを初めてラインナップに入れるのは遅すぎると思いますが、それだけにスバルは気合い入れまくり! って感じでしたね。
具体的には積年の恨み!? っつうか、悩みをいかに解消すべきかがわんさか盛り込まれている。ようするに今まではワゴンのレガシィがいくら売れても、その次に続くミニバンがなかったから大切なお客様が他社にどんどん流れてた。それがやっと阻止できる! と。
別に他社客を奪えなくったっていい…せめてレガシィ大好きユーザーをつなぎ止めたい…そういう想いがあふれてるわけですよ。
実際そうなってましたね。スタイリングは言わば“ビッグレガシィ”。長めのフロントノーズに、デカめのグラスエリア。なによりフロントマスクは、レガシィのイメージそのもの。
ただね。意外なことにこのクルマのフロントのプラットフォームはインプレッサで、ほとんどは新設計だそうな。それからワゴンがちょっと大きくなったぐらいにも見えるけど、全高は現行オデッセイよりも100mmほど高い1600mm台! いやはや人間、ダマされやすいもんです。そんなにデカいとは思わなかった。
スタイリングは見れば見るほどユニーク。スポーティなワンモーションフォルムをとるミニバンが多い中、あえて頭がデカいクラシックスタイル。俺的にはちょっとルノーっぽい気すらしましたね。以前あった「アヴァンタイム」をちょっと小さくしたようとでもいうか……違うかな?
ミニバンのロードスター!?
乗ってもスゲー個性的なのよ。
乗り込んでまず目につくインテリアは、それこそインプレッサをやや彷彿させる助手席が大きくたわんだほかにないもの。そして運転し始めると、感動するのがハンドリング! ホント、最初は焦りましたね。
まずは非力な2リッターのFFに乗ったんだけど、リアが軽いこと軽いこと。リアサスにインプレッサ譲りのダブルウィッシュボーンを使ってるせいもあって、峠を走るとオシリがズレちゃうんじゃないの? ってくらいによく曲がる。
ステアリングを切れば切るほどギュンギュン切れ込む感じで、俺はこれぞ“ミニバンのユーノス・ロードスター”って思っちゃいましたね。他社銘柄でスマンけど(笑)。
足まわりは、結構締まりつつも路面の継ぎ目のショックの吸収具合は素晴らしくて、さすがは走りのスバルって感じ。エンジンもフラット4らしく4000〜5000rpmのふけ具合がキモチいい。
2リッターターボはその延長で、もっと走りは落ち着いてて4000rpmぐらいからの伸びがすごいと。足の硬さはほとんど気にならなかったな。
レガシィとして見られたくもあり……
そしてミニバンの要、室内空間だよね。
2〜3列目にも乗ってみたんだけど、とにかく座り心地がいい。今時のミニバンの常で、ヘンにシートを倒した時のフルフラット性能をヘンに狙ってないから、すべての列がクッション厚めで素晴らしく、さらに視界の良さ! スバル自慢の“7シーター パノラマ ツーリング”というコンセプトにより2列目、3列目と、後ろにいくに従って座面が高くなってるから、前が非常によく見える。ついでにスタイリングのためにグラスエリアの面積を犠牲にしてないから、後方視界もよろしい。
つくづくスバルらしい、人のことを考えた走りのミニバンになってるんですね〜。
ってなわけで、このクルマには作り手としては非常に悩ましい葛藤がある。
スタイル、イメージとしては“レガシィミニバン”として売りたい。そのほうがイメージづけ、お披露目が簡単だしね。一方、中身は逆に今までにないミニバンとして相当練られてる。だから“ワゴンの延長とは思われたくない”という矛盾よ。
だから全国のスバルファンの方々よ、このエクシーガを正しく、愛を持って理解し、気に入ったらどうか乗ってやってくださいな。面白くていいクルマですよ!
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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