「MINIクーパーSE」に乗り、東京から房総までドライブ
いろんなEV(主に輸入車)に乗って、ここでレビューを書いていますが、試乗してみて常に抱く疑問があります。
「輸入車のEVって、そもそもサイズがデカすぎませんか?」
私の乗っている「テスラ・モデル3」にしても、まあまあデカい。私の妻は、サイズを嫌って運転したがりません。東京都内なら、例えば路上のパーキングメーターに駐車すると、確実に白線からハミ出します。房総の拠点で使っている時は、イオンモールとか商業施設の駐車場は車室に十分な余裕がありますが、道路は東京に比べると狭い。特に、幹線道路を外れると狭小な道が多くなります。あとはトンネルですね。国道を走っていても、トンネル内で対向車(特に大型トラックやバス)とすれ違うのはなかなかスリリングです。地方都市に行くと圧倒的に軽自動車が多いのは、価格はともかくそのサイズが最適だからだってことがよく分かります。
今回試乗する「MINIクーパーSE 3ドア」は、これまで私が試してみた輸入車EVのなかで最もコンパクトなサイズのクルマです。一目見た瞬間「このクルマ、小さくてイイね」って思いました。都内でも房総でも不自由なく運転できそうです。早速、モデル3とサイズを比較してみましょう。
MINIクーパー:全長×全幅×全高=3860×1755×1460mm(ホイールベースは2525mm)
テスラ・モデル3:全長×全幅×全高=4720×1850×1440mm(ホイールベースは2875mm)
モデル3より車幅がおよそ10cmも小さい。全長も80cm以上短い。これ、日本の道路事情にジャストフィットって感じがします。EVを評価するときって、航続可能距離が何kmだとか、0-100km/h加速が何秒だとか、ガソリン車とはちょっと違った尺度が強調されがちですが、私の場合「まずはサイズでしょ」って思っています。自宅やよく行く場所で、楽に駐車できるか? 狭い道路でのすれ違いも不安なしにできるか? ここが大事。その点、MINIなら文句なし。



全幅1755mm、全高1460mmの「MINIクーパーSE 3ドア」は街乗りに最適。
あと、EVでありながら、すでにブランドとして、またモデルとして圧倒的なレガシーがあるというのもMINIの特長です。これ、他の輸入EVにはないですから。テスラにしてもBYDにしても「EVとしての歴史」しかありません。広報の方に聞いたら、いま、日本で最も売れている輸入車はMINIなんだそうです。デザインもユニークで、誰が見ても「あ、MINIだ」って認識できる。そんな有名ブランドがリリースしているEVなので、日本市場においても高いポテンシャルを感じます。
早速乗り込んでみましょう。ダッシュボードには「ON/OFFボタン」が存在しています。イグニッションキーをひねる感じでスイッチオン。その上部に鎮座するタッチスクリーンが丸い形状なのがユニークです。円形タブレットのディスプレイは非常にレアですね。クルマでもそれ以外でも、丸いヤツはほかで見たことがありません。ちなみに、搭載されるOSは自社製とのこと。あと、ルーフがガラスじゃないんですね。これ、実はEVとしては珍しい。試乗車は伝統の白ルーフで、ボディーが青という2トーン。


東京・港区にあるMINIの拠点を出発します。丸一日試乗車を借りて、アクアラインを走って房総半島に上陸する、『EVcafe』の定番ドライブルートに突撃。晴天に恵まれ、気持ちのよいドライブ体験となりました。
例によって良かった点と微妙な点を箇条書きにしていきます。私はふだん、テスラのモデル3に乗っています。レビューはあくまで“テスラー”目線であることをご承知おきください。
ミニの良かった点は?
サイズ感がナイス これぞ日本の道路にマッチするEV
すでに記したように、EVとしてはかなりコンパクトなサイズです。モデル3との比較は示しましたが、「プリウス」や「アクア」とも比べてみましょう。
MINIクーパー:全長×全幅×全高=3860×1755×1460mm(ホイールベースは2525mm)
トヨタ・プリウス:全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm(ホイールベースは2750mm)
トヨタ・アクア:全長×全幅×全高=4050×1695×1485mm (ホイールベースは2600mm)
このサイズ感で、MINIに対して不満を持つ方がいるとすれば、それは「荷物がたくさん積めない」「後部座席が狭い」というものでしょう。取り回しの楽チンさと、空間の広さや居住性はトレードオフなので、これはオーナーが何を優先するかという問題ですよね。


デザインや佇まいが紛う方なきMINI
円形のヘッドランプ、フロントグリルのデザイン、ツートンカラー。その姿は、誰がどう見ても「MINI」そのものです。これがICE車なのかEVなのか、ぱっと見で区別できる人はまれだと思います。しかし、それが「MINI」であることは誰の目にも明らか。ICE車もEVも同じ「MINIクーパー」の呼称ですが、EVは、EV専用のプラットフォームで製造しているとのことです。そしてMINIは、人々から「オシャレなクルマ」として認知されているそうで、ファッション業界の方とか、デザイナーの方とかにも愛されているそうですよ。

インフォテインメントが充実 アプリも山のようにある
タッチスクリーンを操作してみると、インストールされているアプリがけっこう盛りだくさんであることが分かります。特に、音楽系のアプリは数多くのなかから選べます。個人的には、「Spotify」がダウンロードできるのでOKでした。

ボーイズレーサーの伝統を継承
ちなみに、MINIクーパーSEはFFです。いや、エンジンがないからFWDか。かつて、ローバー時代のMiniは「ボーイズレーサー」なんて呼ばれ、キビキビした走りが売りでした。EVのMINIも、その辺を意識したようなつくりになっています。ドライブモードが7つもあるのですが、そのうち「ゴーカートモード」を選ぶと、加速も走りも鋭くなります。これは楽しい。

ミニの微妙な点って?
タッチスクリーンは操作性がかなり煩雑
円形のタッチスクリーンは斬新でスタイリッシュですが、正直に言えば操作性がやや煩雑だと感じました。UIについても、もっと洗練してほしいと思います。やはり、円形だとスペース効率が悪くなりますね。

アプリを探すときに、手書きで探せる機能もありました。しかし右ハンドル車の場合、ドライバーは左手で操作することになるのでやや不便だと感じます(私は右利きです)。文字を手書きできるインターフェイスに、左手の指で書くのは至難の業。

手書き検索機能、右利きの運転手は苦労しそう。
速度計はスクリーン中央のトップに表示されるので、運転席からだと視認性がやや悪い。その代わり、ステアリングの向こうにヘッドアップディスプレイがせり出してくる仕様です。

ゴーカートモードでエンジン音 これ、必要ですか?
試乗車のMINIクーパーSE 3ドアには、ドライブモードが7つあって、そのうち最もスポーティーな「ゴーカートモード」を選びます。アクセルをベタ踏みしてみると「ウォオオオ〜ン」というバーチャルなエンジン音が車内にとどろくではありませんか。「うわあ〜!何じゃこれ」ってなりました。あまりの衝撃に大笑い。

気になったので、他のモードでもエンジン音が出るのか確かめます。「コアモード」もエンジン音が鳴りました。さすがに「グリーンモード」ではエンジン音がありません。これって、趣味とか嗜好(しこう)の違いってことなんでしょうか? 「やっぱゴーカートなんだから、エンジン音欲しいよね」みたいな。

これ、個人的には「謎仕様」だと思います。せっかく静かなEVに乗っているのに、わざわざ騒音(しかも人工音)を室内にとどろかせる意味が分かりません。もしかしたら、設定で音を消せるのかもしれませんが、それならデフォルトでOFFにしておいてほしいと心底思います。テスラにおけるブーブークッションみたいなおまけ機能で十分じゃないですか。
MINIクーパーSE 3ドア まとめ
MINIクーパーSE 3ドアは、とにかくサイズが日本市場にマッチしていると思います。ブランドも信頼性が高いので、アフターサービスなども含め、選ぶ側からすれば安心感は抜群でしょう。
操作系でいけば、やはり円形タッチスクリーンは好みが分かれるところでしょう。個性的でデザイン性も高いので、楽しいなあと思う一方、情報量や効率性という点ではやや難ありです。もしもタッチスクリーンが2種類あって、円形と長方形が選べるのなら、私は迷わず長方形を選びます。
あと、好みの問題ではありますが、個人的に3ドアはけっこうメンドウだなあと思いました。荷物を後部座席に放り込む時に、いちいち座席を倒さないといけない。市場を見渡してみるに、「3ドアのEV」ってあんまりないですよね? ICE車のMINIクーパー同様、5ドアの設定を是非用意してほしいなと思いました。

最後に、このEVの最大の特長は、パッと見でICE車のMINIと区別がつかないところだと思います。「実はこれ、電気自動車なんだよ」って他人を驚かせることもできます。実はMINIって、PHEVもあるんですよね(MINIクロスオーバー)。同じデザインでこれほど動力系にバリエーションのあるクルマも珍しい。ファンが多いし、ファンに愛されているブランドだなぁと思います。MINIのICE車からMINIのEVに買い替える人とか、意外に多いんじゃないでしょうか。
(文=EVcafe編集長 駒井尚文 @tesla365days)