第18戦ブラジルGP「チャレンジャーが負うリスク」【F1 2015 続報】

2015.11.16 自動車ニュース
ブラジルGPで2年連続ポール・トゥ・ウィンを達成したメルセデスのニコ・ロズベルグ。今季5勝目を挙げ、最終戦を残しドライバーズランキング2位を確定させた。(Photo=Mercedes)
ブラジルGPで2年連続ポール・トゥ・ウィンを達成したメルセデスのニコ・ロズベルグ。今季5勝目を挙げ、最終戦を残しドライバーズランキング2位を確定させた。(Photo=Mercedes)

【F1 2015 続報】第18戦ブラジルGP「チャレンジャーが負うリスク」

2015年11月15日、ブラジルのアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェで行われたF1世界選手権第18戦ブラジルGP。第16戦アメリカGPでルイス・ハミルトンの2年連続タイトルが決まってから、ハミルトン最大のライバルであるニコ・ロズベルグが遅咲きの活躍を見せ、メキシコ、ブラジルと2戦連続でポール・トゥ・ウィンを達成した。

自らの“アイドル”であるアイルトン・セナの地元で勝利がないルイス・ハミルトンは、ヘルメット後部を“セナ・カラー”に染めて悲願の初勝利を目指した。(Photo=Mercedes)
自らの“アイドル”であるアイルトン・セナの地元で勝利がないルイス・ハミルトンは、ヘルメット後部を“セナ・カラー”に染めて悲願の初勝利を目指した。(Photo=Mercedes)
5戦連続となるポールポジションからスタートしたロズベルグ(写真先頭)が、予選2位のハミルトンを抑えトップでターン1に。(Photo=Mercedes)
5戦連続となるポールポジションからスタートしたロズベルグ(写真先頭)が、予選2位のハミルトンを抑えトップでターン1に。(Photo=Mercedes)

■チャンピオンとブラジルの相性

チェッカードフラッグが振られた瞬間、無線から聞こえてきたのは絶叫と嗚咽(おえつ)だった。つられたようにサンパウロの空も泣き出し、サーキットに詰めかけた多くの観客は、世界に誇る、自国のヒーローの勝利に狂喜乱舞した。
1991年3月24日、GPデビューから実に8回目の挑戦でようやくブラジルGPを制することができたアイルトン・セナ。「今年こそは」という気負いと「なぜここで」という不運が、愛する母国での優勝を拒んできた。この年3度目の(そして最後の)ワールドタイトルを獲得するセナは、この一勝で悲願の達成を見たのである。

事情も時代もだいぶ異なるものの、今年セナと並ぶトリプル・チャンピオンとなったメルセデスのルイス・ハミルトンにとっても、ブラジルはデビューから8回チャレンジして勝てていない場所だった。今季全19レース中、未勝利なのは昨年復活したオーストリアGPと今年初めて走ったメキシコGP、そしてこのブラジルGPのみ。ブラジルでの表彰台も2回(2009年、2014年)にとどまっていた。

デビューイヤーの2007年には、あとちょっとで手に届きそうだったタイトルをキミ・ライコネンに奪われた。また翌年はここブラジルで初戴冠となったものの、ファイナルラップでようやくタイトル獲得条件の5位に上がるという苦しい展開だった。
2009年は何と予選Q1で敗退するも決勝では3位、2010年は4位フィニッシュでタイトル争いから事実上脱落、2011年はマシントラブルでリタイア、2012年は他車に追突されリタイア、マクラーレンからメルセデスに移籍した2013年は9位、2014年は最大のライバル、チームメイトのニコ・ロズベルグに敗れ2位と、ブラジルとの相性はどうも良くない。

今年ハミルトンは、“アイドル”セナとタイトル数で肩を並べ、通算勝利数ではセナの41勝を上回った。次なる目標は、セナの母国で勝利すること。ヘルメット後部をイエローとグリーンの“セナ・カラー”にするほどの気合の入れようで、自身9度目のブラジルGPに臨んだのだが……。

予選、決勝を通してメルセデスの2台が火花を散らした。レースではロズベルグ(写真手前)の背後にハミルトン(その後ろ)がつく場面も見られたが、抜きあぐねているうちにハミルトンのタイヤがタレてしまい、勝負にならなかった。(Photo=Mercedes)
予選、決勝を通してメルセデスの2台が火花を散らした。レースではロズベルグ(写真手前)の背後にハミルトン(その後ろ)がつく場面も見られたが、抜きあぐねているうちにハミルトンのタイヤがタレてしまい、勝負にならなかった。(Photo=Mercedes)

■ポールポジションは5戦連続でロズベルグ

ブラジル初勝利に闘志を燃やすハミルトンに、ロズベルグが待ったをかけた。
Q1、Q2とトップタイムをたたき出したのはハミルトン。しかし肝心のQ3に入ると形勢逆転となり、ロズベルグはハミルトンに0.078秒差をつけ、自身初の5戦連続ポールポジションを決めた。
9月のイタリアGP以来予選P1がないハミルトンは2番手。悔しさからか、予選直後に行われるトップ3のフォトセッションには顔を出さなかった。

フェラーリのセバスチャン・ベッテルが3番手。ウィリアムズのバルテリ・ボッタスは4番手タイムを記録したものの、フリー走行における赤旗中追い越しのペナルティーで7番グリッドからスタートすることに。これでライコネンが4位に繰り上がり、フェラーリ2台が2列目に並んだ。

フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグが5番グリッド。続いてレッドブルのダニール・クビアト、ボッタスときて、母国ブラジルで2勝しているウィリアムズのフェリッペ・マッサが8番グリッドについた。
9番手タイムのレッドブル、ダニエル・リカルドはエンジン交換ペナルティーで19番グリッド。代わってトロロッソのルーキー、マックス・フェルスタッペンが9位に繰り上がったが、予選11位のフェリッペ・ナッサーは予選中のペナルティーで降格、トロロッソのカルロス・サインツJr.がトップ10最後のポジションにおさまった。

マクラーレンのジェンソン・バトンはQ1敗退の予選17位、フェルナンド・アロンソは走行中にパワーを失いノータイムで最後尾となった。

フェラーリのセバスチャン・ベッテルは3番グリッドから3位フィニッシュ。レース半ばであえて速めのソフトタイヤを履き賭けに出たが、うまくいかなかった。今季のランキングは3位に決まった。(Photo=Ferrari)
フェラーリのセバスチャン・ベッテルは3番グリッドから3位フィニッシュ。レース半ばであえて速めのソフトタイヤを履き賭けに出たが、うまくいかなかった。今季のランキングは3位に決まった。(Photo=Ferrari)

■順位変動の少ない地味な展開

1周4.3kmと短いコースを71周するレースは、順位変動の少ない地味な展開に終始した。ロズベルグがスタートでハミルトンを無事抑え切り、3位ベッテル、4位ライコネン、そしてボッタスが7位からジャンプアップし5位でオープニングラップを終了。結局このままのポジションでチェッカードフラッグが振られることになる。

タイヤ交換のタイミングは10周を過ぎてから。上位陣では11周目にボッタスが口火を切り、翌周ライコネン、そしてロズベルグとベッテルは14周目、ハミルトンは15周目にピットに飛び込み、ソフトからミディアムに換装。第2スティントへと移っていった。

18周目に入り、トップのロズベルグと2位ハミルトンのギャップは1秒を切った。フェラーリ勢を既に5秒以上突き放していたメルセデスの2台はしばし僅差で周回を重ねたが、近づいてもなかなか抜けなかったハミルトンのタイヤはやがてタレ始め、30周を過ぎる頃には差は3秒を超えていた。

33周目、3位ベッテルが2度目のタイヤ交換でタイヤをソフトに戻した。翌周には1位ロズベルグ、続いて2位ハミルトンがピットに入ったがこちらはミディアムのまま。メルセデスに先行を許していたフェラーリは、ベッテルで変則的な3ストップ作戦を試し、状況の打開を図ろうとした。

その後必死に追い上げたベッテルはトップに10秒差まで詰め寄ったが、48周目に3度目のピットインを行いミディアムへ。メルセデス勢もこれに反応し、49周目に1位ロズベルグ、次に2位ハミルトンをピットへと呼んだ。フェラーリの揺さぶりは奏功しなかった。

苦戦が続くマクラーレン。前戦メキシコGPでもスタート直後のマシントラブルでリタイアせざるをえなかったフェルナンド・アロンソ(写真)は、ブラジルでも度々マシンが止まり、予選ではアタックができず最後尾スタート。ジェンソン・バトンはQ1敗退の17位からレースに望みをかけた。決勝ではチームメイト同士がタンデムで走行し、バトン15位、アロンソ16位完走。(Photo=McLaren)
苦戦が続くマクラーレン。前戦メキシコGPでもスタート直後のマシントラブルでリタイアせざるをえなかったフェルナンド・アロンソ(写真)は、ブラジルでも度々マシンが止まり、予選ではアタックができず最後尾スタート。ジェンソン・バトンはQ1敗退の17位からレースに望みをかけた。決勝ではチームメイト同士がタンデムで走行し、バトン15位、アロンソ16位完走。(Photo=McLaren)

■ハミルトンの投げかけ

レース終盤にメルセデス同士が再び接近。50周を過ぎ1秒台まで縮まったものの、ここでもハミルトンは抜くに至らず、やがてタイヤが音を上げ、最終的にロズベルグは7.7秒もの差をつけ優勝したのだった。

今年もブラジルで勝てなかったハミルトンは、レース後、戦略上のリスクを負わないメルセデスの姿勢に疑問を投げかけた。前車の背後に迫っても大きなアドバンテージがない限りオーバーテイクは難しい。ならばどこかで賭けに出なければならないはずなのに、チームはそれを許さない。実際、ロズベルグとハミルトンは同じようなタイミングで同じタイヤを履かされていた。

くしくもフェラーリはベッテル3ストップ、ライコネン2ストップと作戦を分けてきた。チャレンジャーが勝負に出ないでどうするというハミルトンの意見はもっともだが、火花散るライバル関係にある2人を抱えるチームとしては、その判断も容易ではないのだろう。

一方、5戦連続ポール、前戦メキシコGPでの完勝、そして2戦連続ポール・トゥ・ウィンと、ロズベルグは(時期は遅すぎたが)波に乗っている。タイトル争いの重圧から解放されたことがこの後半戦の活躍の背景にあるのならば、ロズベルグにも「チャレンジャーが負うリスク」とどのように向き合うかという課題があり、その克服が求められているとも言えるだろう。

2015年シーズン最終戦アブダビGPは、11月29日に決勝が行われる。

(文=bg)

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