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第435回:タダより高いモノはない!? 迫り来る“フリーウェイ系”中古車の恐怖

2011.09.22 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第435回:タダより高いモノはない!?迫り来る“フリーウェイ系”中古車の恐怖

安心おトクな(?)先払い

すべてではない、すべてではない……んですが、実に恐ろしいことを聞いてしまいました。そう、最近はやりの「フリーウェイ」や「ケア」ものについて。具体的にはBMWの「サービス・フリーウェイ」、メルセデス・ベンツの「メルセデス・ケア」、アウディの「アウディフリーウェイプラン」などだ。
もちろんケースバイケースであって、可能性のハナシなんですが、信頼ある修理屋スジからの話で、証拠写真もあるんでとりあえずは聞いて下さいな。

これらは新車購入時に数万円から数十万円(ブランドや車種で異なる)の定額料金を払うと、数年間、「メーカー指定点検」や「指定交換部品の交換」「指定消耗部品の交換」を無料で行えるプログラム。ぶっちゃけエンジンオイルやブレーキフルード交換などがタダになるうえ、点検整備なども同様なので非常にお買い得感が強い。
特に輸入車ビギナーの場合、「ガイシャは壊れる」ってイメージが強いので、それが「国産車並みの安心感」「一定のコスト」でイケるのは大きいよね。

しかも安いプランになると1台5万円程度。となると、高価なブレーキパッドやディスクの交換は含まれなくなるが「そんな大きい故障は結局“運”」と考えると気にならない。これは1993年にBMWが先鞭(せんべん)をつけ、メルセデス・ベンツやアウディの日本法人も順次採用してきた。しかもこういうクルマに限って、その後のアプルーブドカー、正規認定中古車になるわけだ。

写真は、2011年9月22日に日本デビューを果たしたばかりの、新型「BMW1シリーズ」。
写真は、2011年9月22日に日本デビューを果たしたばかりの、新型「BMW1シリーズ」。 拡大
同じく新型「BMW1シリーズ」のエンジンルーム。(※写真はイメージです)
同じく新型「BMW1シリーズ」のエンジンルーム。(※写真はイメージです) 拡大

たまったもんじゃないっ

で、ユーザーは「安心」って思ってそれらを行うし、その後の認定中古車も買うわけじゃないですか。するとこれがどっこい、エンジン内部にスラッジ類やタールがたまりまくってるケースが多いというのだ。

実際に現物を見せてもらって驚いた。今年分解整備した2002年モノの某ドイツ車だが……ビックリ!! エンジン下部のオイルパンには焼き鳥屋の網の下のようにスラッジがたまり、極めつけはオイルストレーナー。スラッジだけでなく、エンジンヘッドとブロックの間のガスケットがボロボロ落ちてたまっている。こうなると当然オイルは循環しにくくなり、一部オイル上がりやエンジンの焼き付きなども起こり……そこでこのクルマも運ばれて来たわけだが、まさかまさかの結末だ。
「ユーザーさんは『アプルーブドカーで程度がいい』って喜んでたんですけどね」という担当修理のコメントがむなしく響く。

理由は簡単。「最低限しかメンテナンスを行わないからですよ。ディーラーだってなるべくお金をかけたくないじゃないですか」。
昔は慎重な人だと3000km、普通でも7000kmや1万kmで行っていたエンジンオイル交換。だが、最近ではメーカーにもよるが1万5000kmから2万kmごと、メーカーによってはそれ以上まで行わず、ブレーキパッドやディスクによっては「警告灯がつくギリギリまで行わないから、妙な振動が出てる場合も多い」。
要するにケアするディーラー側としては、最初にお金を頂いているから、その後の出費は抑えたい。となるとメーカーが決めている最低限のメンテナンスだけを行うことになるわけだ。

文中で紹介しているオイルパンの写真がこちら。
文中で紹介しているオイルパンの写真がこちら。 拡大
同じくオイルストレーナー。たくさんの異物がネットを埋め尽くしている。
同じくオイルストレーナー。たくさんの異物がネットを埋め尽くしている。 拡大

見る目が問われる日本のユーザー

ただし、これは正規ディーラーだけの責任ではない。別の中古車ディーラーは言う。「コストダウンだけでなく、環境破壊、エコの問題も大きいんですよ。特にドイツはこの手にうるさいんで、最近大手メーカーが率先してオイル交換時期を遅らせてるじゃないですか。BMWの一部車両なんて2万5000kmですよ」。

そのほか、どのメーカーでも最初の1000kmでのオイル交換が不要なのは、ほぼ当たり前。その昔「最初はギア同士が当たって鉄粉が出るから、初期のオイル交換は絶対にすべき」とか「慣らし運転は、クルマ好きなら当然」と言われていたのがウソのようで、それは「クルマの性能が上がってるから」とまことしやかに説明されてきたわけだが、重大な落とし穴があったってわけ。

ただし、これまたメーカー側が一概に悪いわけでもない。
「実際、今のエンジンって工作精度は上がってるし、オイル性能も進化してるんで、欧州で2万kmぐらい走っても油脂はそれほど汚れないんです。涼しいし、1回の走行で走る距離が長いじゃないですか。でも日本の特に東京の場合、夏は暑いし、1回10kmも走らないでエンジン止めちゃう場合もあるでしょ。しかも渋滞天国だから、同じ距離でもエンジン実動時間は倍かそれ以上いく。となると、その分、油脂類の交換もすべきなんですよ」。

日本の道路環境の劣悪さは、世界の非常識。さすがのハイテクドイツ車もそこまでは見込めなかったってわけだ。
技術進化とエコのコストの高度なバランス取り……いままでのクルマにはあり得なかった悩みだけど、これまた時代の変化かもしれない。「安全といわれていた食品が、実は危険だった」みたいなハナシにも似ている。
うーむ結局、現代は現代で人任せにせず、モノを見る目を養わないとつかまされる。そういう教訓かもしれませんねぇ。

(文=小沢コージ)

(※写真はイメージです)
(※写真はイメージです) 拡大
小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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