「中国製EVは最大の脅威」 フォードCEOがアメリカ自動車業界の危機をあからさまに告白

「中国製EVは最大の脅威」 フォードCEOがアメリカ自動車業界の危機をあからさまに告白

米自動車大手フォード・モーターのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)が2025年6月29日、中国の電気自動車(EV)業界について「これまで見たなかで最も脅威を感じる」と衝撃的な発言を行いました。コロラド州で開催されたアスペン・アイデア・フェスティバルで、作家のウォルター・アイザックソン氏との対談中に明かしたもので、アメリカ自動車業界のトップが中国製EVの圧倒的な優位性を率直に認める異例の告白となったと『Business Insider』が報じています。

ファーリーCEOは「これまで見たなかで最も脅威を感じるものです。世界のEVの70%が中国で製造されています」と述べ、中国EV市場の圧倒的な規模を強調しました。同氏は過去1年間で中国を6~7回訪問したことを明かし、現地での体験から「中国との世界的競争はEVだけではありません。この競争に負ければ、フォードに未来はありません」と危機感をあらわにしました。

欧州で販売するフォードのEVラインナップ
欧州で販売されるフォードのEVラインナップ 「プーマGen-E」(中央)と「Eトランジット・クーリエ」(左右)。(出典:フォード公式サイト)

中国のEV技術の優位性について、ファーリーCEOは「彼らの車載技術ははるかに優秀です。ファーウェイとシャオミがすべての車に搭載されています。クルマに乗って、スマートフォンをペアリングする必要はありません。自動的に、あなたのデジタルライフ全体が反映されます」と説明しました。同氏は、フォードが同様のサービスを提供できない理由として、GoogleやAppleといった米IT大手が「自動車事業に参入しないことを決めたため」だと分析しています。さらに「それ以上に、彼らのコストや車両の品質は、私が西側で見るものよりもはるかに優秀です」と中国製EVの総合的な優位性を認めました。

特に注目すべきは、ファーリーCEO自身がシャオミのEV「SU7」を6カ月間運転していることです。「上海からシカゴに1台運んで、6カ月間運転していますが、手放したくありません」と率直に語りました。「競合他社について多くを語るのは好きではありませんが、私はシャオミを運転しています」と述べ、SU7がシャオミ初のEVであることを紹介しました。2024年10月に『The Fully Charged Podcast』に出演した際には、シャオミを「業界の巨人であり、自動車会社よりもはるかに強力な消費者ブランド」だと称賛していました。

シャオミのSU7
シャオミSU7

シャオミの新たなEVである「YU7」は「高性能ラグジュアリーSUV」と位置づけられ、中国市場においてテスラの「モデルY」よりも安価で売り出されています。YU7の価格は25万3500元(約507万円)で、テスラのモデルYの26万3500元(約527万円)を下回ります。シャオミは先日、YU7について、販売開始からわずか3分で20万件以上の注文を受けたと発表しており、中国EVメーカーの市場での圧倒的な存在感を示しています。

シャオミのYU7
シャオミYU7

一方、フォードは中国製EVの攻勢を受けて戦略の大幅な見直しを迫られています。同社の最高財務責任者ジョン・ローラー氏は2024年8月、フォードがEV戦略を変更すると発表しました。計画していた電動SUVをハイブリッドモデルに置き換えるというもので、この方針転換により約20億ドル(約2960億円)の損失が見込まれています。この戦略変更は、中国EVメーカーとの厳しい競争に直面するアメリカ自動車業界の苦境を象徴する出来事となっています。

今回のファーリーCEOの発言は、アメリカ自動車業界が直面する中国の脅威を業界トップが公然と認めた重要な告白です。「中国との世界的競争で、この競争に負ければ、フォードに未来はありません」という言葉は、従来のアメリカ自動車業界の優位性が大きく揺らいでいる現実を如実に物語っています。

EVcafe
EVcafe

「EVcafe」は、2023年にスタートした日本初のEV専門ライフスタイルWebメディアです。国内外のEV市場の動向がわかる最新ニュースを中心に、EVメーカーや関連会社が発信する新車・新商品情報、充電インフラやEV補助金の情報、オーナーの方々への取材をもとにした新たなEVライフの提案まで、EVオーナーやEVの購入を検討しているユーザーの方々が、知っておきたい情報を、多様な切り口の読み応えのある記事と美しいビジュアルで発信していきます。