これはZ世代向けのEVか? 「ヒョンデ・インスター」に試乗して感じた、良かった点と微妙な点

これはZ世代向けのEVか? 「ヒョンデ・インスター」に試乗して感じた、良かった点と微妙な点

2025年の夏の終わり、まだ猛暑のキツいある日、ヒョンデの「INSTER(インスター)」に試乗することになりました。ヒョンデのEVに乗るのは、「IONIQ 5(アイオニック5)」に続いて2台目です。アジアのEVでは、中国のBYDが圧倒的な知名度を誇り、日本市場にもグイグイ攻め込んできていますが、韓国勢を忘れてはいけません。すでに上陸を果たしているヒョンデに加え、Kia(起亜)も日本の商社と組んで2026年には日本に乗り込んでくることが決まっています。

横浜をINSTERでドライブ
横浜を「インスター」でドライブ。

そんなアジアンEV各車の特徴を調べていて驚くのは、どれも価格がリーズナブルなこと。例えばBYDの「ドルフィン」は、2025年の4月から299万2000円という戦略的な新価格を採用していますし、今回試乗したヒョンデのインスターは、ベースモデル「カジュアル」が284万9000円、今回私たちが試乗した「ラウンジ」だと357万5000円というレベルです。日産の新型「リーフ」や「テスラ・モデル3」と比べると150万円以上も安い。

加えて、インスターは国のCEV補助金が56万2000円受けられますから(2025年12月まで)、EVのなかではかなりお買い得なイメージがあります。

それでは、今回試乗したインプレッションを始めましょう。まずは、インスターの良かった点を挙げていきます。

デザインが独特、攻めてます

ヒョンデの上級モデル、アイオニック5が、あのジウジアーロにインスパイアされたデザインだってことは、その試乗記でも触れましたが、このインスターも相当に攻めたデザインです。

IONIQ 5同様、攻めたデザインのINSTER
「アイオニック5」と同様に、攻めたデザインの「インスター」。

ヘッドライトは、アイオニック5とは打って変わって円形を強調していますが、その上部のロゴマークのラインはヒョンデおなじみの四角いモザイク的なデザインで、メーカーとしての統一感をアピールしています。

これはリアの処理も同様で、ヒョンデのロゴの両サイドのLEDはモザイク仕上げ。そして、下部のナンバープレートの両サイドには円形をあしらい、フロントと共通のイメージでまとめています。

デザインが街に映えるINSTERのリア
「ヒョンデ・インスター」のリアはこんなデザイン。

面白いのは、ドアハンドルの上でにんまりほほ笑む「デジタルフェイス」ですね。なんだか、Z世代的なデザインセンスを感じます。

デジタルフェイス
ドアハンドル上のデジタルフェイス。

このデジタルフェイスは、単なる一発芸みたいな遊びかと思いきや、後部ドアの内張りにも同じような意匠が使われていて、外観のフロントデザイン・リアデザイン同様の統一感を醸し出しています。

後部ドアの内張にもデジタルフェイスと同じような意匠が
後部ドアの内張りにもデジタルフェイスと同じような意匠が……。

ホイールもユニークですね。ヒョンデの「H」をクロスさせているのでしょうか? これまた円形と四角形のコンビネーションで、こだわりを感じるデザイン。

ホイールも個性的なINSTER
ホイールも個性的な「インスター」。

開閉するサンルーフ、シートクーラーを装備

デザイン以外の特徴としては、開閉するサンルーフが付いていることや(ラウンジのみ)、V2Hに対応しているところが挙げられます。いずれも、テスラにはない仕様です。

あと、なにげに驚いたのは、シートにクーラー機能が付いている点(ラウンジ、クロスに装備)。シートヒーターはまあまあいろんなクルマに付いていますが、シートクーラーはあまり見かけません。このグレードのクルマに装備されていることに驚きました。試乗した日は猛暑だったので、これは大変快適で忘れられない記憶です。

テスラにはないサンルーフが
テスラにはないサンルーフが。

一方、微妙な点もいくつかありました。

いまひとつだなと思った点は、まずカーナビです。

地図のUIがざっくりすぎるのと、ナビの精度がややユルいと感じました。何度か、曲がるはずの交差点を通過してしまうという経験も。

ただし、この手のバグとも呼べないレベルの不具合は、ソフトウエアアップデートでいずれ修正されるはずです。大きな問題とはいえません。

カーナビの地図のUIはざっくり
カーナビの地図のUIはざっくりしたもの。

一方で、スピード違反取り締まりカメラ「オービス」を感知する機能が付いているのは非常にありがたいと思いました。まさに神機能ですね。

カーナビには、「オービス」を感知する機能付き
カーナビには、「オービス」を感知する機能付き。

OSはオリジナル、できることは多くない

これはアイオニック5のときにも感じたことですが、ナビ、オーディオ以外に使えるアプリがあまりない。ただしモニターは10.25インチながら、独立してセンターに屹立(きつりつ)しています。アイオニック5の2連のタッチパネルよりは使いやすいと感じました。

加速はもっさり、割り切りが必要

加速は、これまでに試乗したEVでは最も控えめなレベルでしたが、そこはもう割り切りでしょうね。そもそも、このインスターの外観で、強烈な加速を期待するユーザーはあまりいないでしょう。

INSTERの最高出力は、85 kW(Lounge)で加速は控えめレベル
「ヒョンデ・インスター」の最高出力は、85kW(ラウンジ)で加速は控えめレベル。

サイズ的には、だいぶ小さめです。同じヒョンデのアイオニック5と、「テスラ・モデルY」を並べておきます。
インスター:全長×全幅×全高=3830×1610×1615mm(ホイールベースは2580mm)
アイオニック5:全長×全幅×全高=4655×1890×1645mm(ホイールベースは3000mm)
モデルY:全長×全幅×全高=4800×1920×1625mm(ホイールベースは2890mm)

小ぶりなサイズが可愛いINSTER

小ぶりなサイズの「ヒョンデ・インスター」。

まとめます。インスターの最大の特徴は、その攻めたデザインです。これほど個性的なデザインは、EVに限らず、ICE車を含めてもあまりないレベル。個人的には「Z世代ライク」なデザインだと勝手に思っていますが、好き嫌いが分かれる感じは否めませんよね。そして、日本の街乗りには非常に適したサイズ感。とりわけ、幅が1610mmというのは、モデルYよりも30cm、モデル3よりも25cmも小さいということです。それでいて、高さがモデルYとあんまり変わらないというのは、かなり今どきなサイズのクルマだなぁと。これまた、Z世代ライクな感覚を抱きます。

NSTERの最大の特徴は、攻めたデザイン
「インスター」の最大の特徴は、攻めたデザイン。
街乗りに適したINSTERは、横浜中華街の狭い道でもスムーズにドライブ
街乗りに適した「インスター」は、横浜中華街の狭い道でもスムーズにドライブできる。

最後に強調しておきたいのは、冒頭にも書きましたが、とにかく価格がリーズナブルなこと。このデザインが気に入って、ICE車じゃなくてEVがマストだって方は、使える補助金をしっかり調べて、お早めに購入することをオススメします。

2025年なら12月26日までの登録が、インスターをお得にゲットするための条件のようです。

(文=EVcafe編集長 駒井尚文 @tesla365days)

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