ターゲットは「テスラ・モデル3」 シャオミのEVが24時間で約9万件の予約注文を獲得

ターゲットは「テスラ・モデル3」 シャオミのEVが24時間で約9万件の予約注文を獲得

中国のスマートフォンメーカーであるXiaomi(シャオミ)は2024年3月28日、同社初のEV「SU7」の予約注文受け付けを開始しました。スタートとともに、シャオミには購入希望者の予約注文が殺到。SU7を注文した人々のアプリには、最大8カ月もの納車待ちの可能性があると通知されており、中国の大手スマホメーカーが生み出したEVに対する大きなニーズが明らかになりました。

 

中国のスマートフォンメーカー、シャオミのSU7
中国のスマートフォンメーカー、シャオミのEV「SU7」。

 

SU7の注文受け付けを開始した直後、シャオミは、4分間で1万件、7分間で2万件、27分で5万件以上の確定注文を発表。また3月29日には、販売開始からの24時間で8万8898件の確定注文を受けたと公表しました。

シャオミSU7は、価格が21万5900人民元(約450万円)の標準車、24万5900人民元(約510万円)の「Pro」、29万9900人民元(約630万円)の「Max」の3グレードがあり、4月2日の時点でシャオミのアプリでは、標準車が21〜24週間、Proが19〜22週間、Maxが29〜32週間の待ち時間を示しています。つまり今の時点で注文するならば最大約8カ月納車を待たなければなりません。

 

 

 

 

またオンラインでの盛況に加え、中国29都市にある59のシャオミの販売店舗には、3月末の週末にかけてSU7をひと目見たいという人々が大行列をつくりました。同社によると、SU7の試乗を希望する人が各店舗に一日平均で90〜120人来店。いま試乗予約している人は、3〜5日待ちの状況となっているとのことです。

 

 中国のEVウオッチャーのSNSに投稿されたシャオミ店舗の様子

 

ロイター通信によると、SU7の販売開始のキャンペーンでシャオミは冷蔵庫などの無料ギフトがついてくる「ファウンダーズエディション」を標準車とMaxの2グレードで5000台をリリース。すぐに完売したこれらのモデルは、4月3日から納車される予定です。また、SU7のカスタマイズ車両の最初の納車は、標準車とMaxが4月末に、Proが5月末に開始されるとシャオミは発表しています。

中国のEVウオッチャーのSNSに投稿された、シャオミからとされるビジュアルによると、同社は2024年の生産能力分である12万台が完売したと発表したようです。

 

 2024年の生産能力分である12万台が完売したとの投稿

 

スマートフォンの世界で、デバイスの機能や品質から「中国のアップル」とも呼ばれるシャオミは、アップルがEV「アップルカー」の開発を断念した1カ月後に、SU7を発表しました。独自のEVを販売するというアップルが果たせなかった夢をかたちにしたシャオミは、続いて「中国のテスラ」の称号も手に入れようとしています。

 

 

2023年12月28日に行われたSU7の発表イベントにおいて、シャオミグループの創設者でもあるレイ・ジュン会長兼CEOは、シャオミの電気自動車事業について次のように語りました。

「私たちの目標は、ポルシェやテスラに匹敵する夢のクルマをつくることです。まずはSU7をポルシェの『タイカン ターボ』やテスラの『モデルS』と同等のEVにするつもりです。そして15〜20年をかけて、シャオミは世界トップ5の自動車メーカーのひとつとなります」

それから4カ月後に実施されたSU7の発売イベントにおいて、レイ・ジュンCEOは、SU7のターゲットがテスラ・モデルSではなくて「モデル3」であることを明言。すべてのEVセダンがテスラ・モデル3と同じ顧客をターゲットにしていると指摘し、「多くの人が、シャオミSU7は誰のためにつくられたのかと尋ねます。私の答えは、『テスラ・モデル3のユーザーは、アップグレードする時期ではないでしょうか? 』です」と語ったのです。

 

シャオミグループ創設者のレイ・ジュン会長兼CEO
シャオミグループ創設者のレイ・ジュン会長兼CEO

 

2024年3月28日に実施された「シャオミSU7」の発売イベント。

 

SU7のサイズは、全長×全幅×全高=4997×1963×1455mm、ホイールベースは3000mmで、テスラ・モデル3は、同4720×1850×1441mm。SU7の標準車は、中国で販売されているエントリーグレードの「テスラ・モデル3 RWD」よりも約60万円程度安くなります。中国市場ではモデル3 RWDの価格は24万5000人民元(約510万円)、シャオミのSU7 Proの価格と同じです。

また、SU7の標準車とProはどちらも、モデル3と比較すると一度の充電で走れる航続距離が長く、レイ・ジュンCEOは、SU7は仕様の90%以上でモデル3よりも優れていると主張。しかし同時に、テスラのパワートレインの効率性にシャオミが追いつくには、おそらく3〜5年程度かかるだろうとも認めています。

 

 

中国市場でSU7は熱狂とともに受け入れられました。その多くの購入者が、その理由をシャオミグループの財務の安定性とレイ・ジュン会長兼CEOの自動車ベンチャーへの献身に基づいたシャオミのEVに対する信頼を挙げていて、シャオミのブランド力は中国におけるEV販売においても大きな効果をもたらしたようです。そのブランド力が海外のマーケットでどのように受け入れられるのか、これがSU7の今後の売上と、シャオミのEV事業の課題となってくるでしょう。

発売と同時に大きな予約件数を獲得し、EV市場に衝撃を与えたシャオミSU7。この影響を受けて4月2日には、シャオミの株価が香港市場で一時16%急伸、時価総額は約76億ドルの増加となりました。ただ、消費者は7日以内であれば予約金の払い戻しを受けることができるため、多数の予約キャンセルが出ているとの中国での報道もあります。実際のSU7の販売実績は1週間後に出る見込みです。

 

シャオミ SU7 標準車 Pro Max
アーキテクチャー 400V 400V 800V
駆動方式 RWD RWD AWD
バッテリー 73.6kWh
BYD ブレードバッテリー
94.3kWh
CATL 神行超充電池
101kWh
CATL 麒麟電池
航続距離(CLTC) 700km 830km 800km
最高出力 299PS (220kW) 299PS (220kW) 673PS (495kW)
最大トルク 400N・m 400N・m 838N・m
0-100km/h加速
(0-62mph)
5.28秒 5.70秒 2.78秒
最高速度 210km/h 210km/h 265km/h
高速充電時間
(10-80%)
25分 30分 19分
15分間のDC充電 350km 350km 510km

 

 Xiaomi SU7 gallery

 

 

 「シャオミSU7」のイメージ動画。

 

写真:Xiaomi

 

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