孤高のアメリカンスポーツ「シボレー・カマロ ファイナルエディション」が駆ける
情熱よ永遠なれ 2024.02.29 不滅の情熱 CHEVROLET CAMARO“FINAL EDITION”<AD> 6代目「シボレー・カマロ」の最後を飾るスペシャルモデル「ファイナルエディション」。日本のファンのためだけに仕立てられた特別なカマロのハンドルを握り、業界きっての“アメリカ車好き”2人が、孤高のアメリカンスポーツの魅力を語り尽くす。世代を超えて刺さった“カッコよさ”
2023年3月22日、世のアメリカ車ファンの間に激震が走った。ゼネラルモーターズ(GM)が、6代目シボレー・カマロを2024年モデルで生産終了すると発表したのだ。
カマロといえば、獰猛(どうもう)なスタイリングとたくましい走りが自慢のシボレーのスポーツクーペだ。1960年代に生まれた、アメリカンスペシャリティーだとかアメリカンマッスルだとかの濃ゆいカルチャーを今日に受け継ぐ、最高にイカした一台だった。
これを受け、日本でもGMジャパンが「最終章を飾る限定モデル」ことファイナルエディションを発表。最後の50台をファンにプレゼントした。これに感涙した“カマラード”の熱量が、今年の暖冬を招いたとか、招かないとか……。
渡辺敏史(以下、渡辺):……で、これがそのシボレー・カマロ ファイナルエディションなわけだね。
webCG堀田(以下、堀田):左様です。日本のためにGMジャパンがこしらえた、日本専用の限定モデルです。ベースは6.2リッターV8を積んだ「SS」で、ボディーのストライプや「FINAL EDITION」の専用プレート、レカロシートなんかが特徴ですね。
渡辺:ベースはブイハチなんだね。いや、前にGMの広報さんに聞いた話だと、日本だと2リッター直4ターボのほうが売れているらしいから。若い人が「カッコイイ!」って言って頑張って貯金して、ローンを組んで買っていくんだよ。だから手の届きやすい直4モデルが売れたんだねぇ。
堀田:この仕事してるとひしひし感じますけど、今日び、若い人に「欲しい!」って言わせるクルマってだけでもマジで貴重ですよ。やっぱりちょっと、終売は残念ですね。
渡辺:でも、カマロはこれでおしまいってわけじゃないんでしょ?
堀田:GMの偉い人(スコット・ベル副社長)は「続きがある!」って言ってるそうですけど、すぐに次期型が登場しないのは事実です。カマロが欲しいって人は、このファイナルエディションをいっとくべきでしょう。
渡辺:なるほどねぇ。で、俺らのほうは、今日はどこに行くの?
堀田:ファイナルモデルの取材だけど、しんみりしたのはクルマの性格に合わんでしょ。房総でデカいハンバーガー食って、太平洋でも拝みに行きましょうか。
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ラギッドでタフな唯一無二の存在感
堀田:渡辺さんには、webCGでは「コンバーチブル」(2リッターモデル)の取材をお願いしたことはありますけど(参照)、過去にV8カマロに乗ったことはあります?
渡辺:そりゃもちろん。堀田くんは?
堀田:右に同じです。webCGでのカマロの取材は、2リッターも6.2リッターV8もクーペもコンバチ(コンバーチブル)も、ほとんど自分が担当でした。お恥ずかしながら、自分でリポートを書いたこともありますよ(参照)。(スマホで当時の記事を検索)……懐かしいな! もう6年も前なんだ。
渡辺:デビューは北米で2015年、日本で2017年だからね。もう長いよ。……それにしても運転席からの眺めがスゴいけど、前からこんなにバルジが盛り上がってたっけ?
堀田:前からモリモリマッチョでしたよ。カマロのデザインは、欲望むき出しって感じがしていいですよね。パワーがみなぎっておられる。
渡辺:いいよねぇ。全体の形は66年登場(モデルイヤーは1967年)の初代をモチーフにしているんだよね。あのころのアメリカ車のデザインは、本当によかった。日本のメーカーもこぞってマネたもんね。いちばんアメリカ車が豊かで強かった時代だし。
堀田:このカマロにも、そういう昔からの流れがあるっていうか……。でも、ただの“懐かしい系”でもないと思うんですよ。リアショルダーとかクオーターピラーとかは一見クラシックだけど、ニラみ目のヘッドランプとかスモークのテールランプはいかにも今風だし、スタイリングを見ても、タイヤの踏ん張りを利かせる今どきのカッコよさがある。単なる初代オマージュじゃないですよ。
渡辺:「チャレンジャー」とか「マスタング」も含めて、アメリカンスペシャリティーの3銘柄は本当にうまいなぁと思うよ。昔のデザインから引っ張り出してはきてるんだけど、ちゃんと新しさもある。
堀田:モチーフにはしてるんだけど、それに縛られすぎていない感じですよね。あとは、よくわからんデザイナーのエゴとかブランド内での統一要件とか、そういう不純物がないのもいい。カッコよさに貪欲で、欲望に忠実で、俺はすごくいいなと思うんですけど。
渡辺:ビジネス由来のデザインじゃないよね、これは。
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ただ真っすぐ走ることがキモチイイ
渡辺:走らせてて思うんだけど、以前に乗ったときより、なんだか乗り味が洗練されてる気がするんだけど。なんか改良入ってたっけ?
堀田:特にそういう話は聞きませんけど、発表されていないだけで、折を見て細かな変更とかがあったのかもしれませんね。ファイナルエディションはレカロシートが付いているので、体感的にはその影響もあるかもですけど。そもそもこのクルマ、デビュー当初からとにかくシャシーの評判がよかったですよね。
渡辺:キャデラックのセダンとかにも使われてるやつだよね。でも、ただ洗練されてるってだけでもないんだよ。低速から中速だと、なんだかリアリジッドアクスルのクルマのような味わいがある(笑)。スピードを上げると収まってくるんだけど。
堀田:あえてそうしてるんでしょうか? 同じプラットフォームでも、キャデラックだとそれは感じないから。
渡辺:あえてじゃないかな。シャシー自体の能力は高いし。
堀田:山野さん(レーシングドライバーの山野哲也さん)とか、絶賛してましたもんね(参照)。
渡辺:山野さんは半分アメリカ人みたいなもんかもよ(笑)。青年期に現地で暮らしてたって聞いたことあるし。でも確かに、意外と山道とかもがっつり走れちゃうもんね。そんなタイムを競うようなタイプではないけれど。
堀田:それでいて、ボーっと走るのも苦にならない。ロケ終わりにぐったりして帰るときの“体なじみ”のよさとか、すごくいいなぁと思ったもんですよ。このクルマってスポーティーだけどスポーツカーじゃないでしょう? だからこそのあんばいなんじゃないかと。
渡辺:それもそうだけど、アメリカ車全般、昔からそういうところがあったよね。そういう運転をするときに、ちょうど落ち着くように設(しつら)えられてる。シートとか、ペダルの角度とか重さとか。舵(≒ハンドリング)はずいぶんモダンになったから、そこでは感じ取りにくいけど、例えばこのクルマも、こんなデカいフロントタイヤだったら普通はハンドルがピキピキするもんだよ。でも、そうはなってない。
堀田:本当に、真っすぐが楽でキモチイイ。
渡辺:ねー。で、そうしてボーっと真っすぐ走るのは2リッター直4ターボでももちろんできるけど、やっぱりこのブイハチがいいよねぇ。
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名機「LT1」に宿るアメリカ車の息づかい
堀田:このカマロのブイハチは、6.2リッターの「LT1」ですよね。
渡辺:そうだよ。GMのスモールブロックは今が第5世代だっけ。LT1の名前は1991年の350系V8から使われてて、「C4コルベット」の後期とか4代目カマロの「Z28」にも積まれてたんだよね。今の6.2リッターは、2014年のC7コルベットから使われ始めて、トラック向けにモディファイされたのが「シボレー・タホ」や「シルバラード」「キャデラック・エスカレード」にも積まれてるよ。
堀田:名だたる基幹モデルを完全網羅。まさに今日のGMの魂ですな。
渡辺:よそのメーカーはダウンサイジングターボとか電動化とかが進んでいるし、GMでも直4ターボが伸(の)してきてるけど、このエンジンがなくなることはまずないと思うね。この間アリゾナに行く機会があったんだけど、その辺走ってるクルマ、みんなこの音だったから(笑)。
堀田:そりゃあ当分、シボレーのブイハチがなくなることはなさそうですね(笑)。それにしても、普通のクルマが皆この音って、うらやましいなぁ。アメリカンV8って、上までカチ回さなくても、息づかいとか音の圧とかが心地いいんですよね。
渡辺:そうそう。音じゃなくて、音圧というか鼓動感というか。
堀田:レスポンスがいいのはもちろんだけど、ちょっとした加速でもただスピードが乗るんじゃなくて、エンジンの呼吸の変化をちゃんと感じさせてくれる。
渡辺:やっぱり、いまこうして乗ってても雰囲気があるもんね。カマロは若いオーナーさんも多いっていうけど、そういう人にもブイハチが刺さってくれるとうれしいなぁ。
堀田:完全に余計なお世話でしょうけど、「せっかくこういうクルマに乗るんだったら、これを味わってくれよ!」ってのはありますよね。時代に取り残されたワタシらみたいなクルマ好きからしたら、これがいまだにアメリカ車の手触りですから。……お話の途中ですが、最初の目的地に着きましたね。続きはバーガーをむさぼりながらにしましょうか。
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映画の世界そのものの“空気感”
渡辺:なんか「いかにもダイナー!」って感じのお店だけど、なんでこんなところ知ってるの?
堀田:編集部にゴハン処に詳しい人がいるんですよ。……渡辺さんはなに頼んだんですか? なんか、バンズから肉があふれ出てますけど。
渡辺:確か「スマッシュ2×2バーガー」っていうやつかな。限定20食って書いてあったからつい。堀田くんは?
堀田:「プルドポークサンド」です。人生初のプルドポーク、美味です。
渡辺:そのようだね。取りあえずBBQソースまみれの顔を拭きなさい。
堀田:失礼。……で、いかがでしたシボレー・カマロは? まっさらな6代目に触れられるのは、これが最後の機会になると思いますけど。
渡辺:堀田くんはどうだった?
堀田:やっぱり、とことんドメスティックなクルマだなぁと。ちょっとした加速でも反応にライブ感があって、巡航が気持ちよくて、いかにもアメリカの国情に合わせてつくり込まれてますよね。えんえん制限速度以下で走るようなシチュエーションでも運転を楽しめるように、クルマそのものにエンターテインメントが練り込まれてる感じで。欧州のスポーツカーもいいけど、こういう味つけのほうが、むしろ日本の事情にも合ってると思うんですけど。
渡辺:そういう細かいところもだけど、クルマ全体につくづく雰囲気があるよね。アメリカの映画とかでクルマを運転しているシーンが流れてくると、みんな大体、こういう運転してるじゃない? ハンドルを片手で持って、たらー……っと。自動車メディア的にはお勧めしづらいしぐさだけど(笑)、彼らにとっては、それがいちばんリラックスしたドライブのスタイルなんだろうなっていう。実際はやらないにしても、そういう空気が味わえるっていうところは、すごく異国情緒のあるクルマだよなって思うよ。
堀田:それはもう、間違いない。
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これほど雰囲気のあるクルマは他にない
渡辺:2000年代、21世紀に入ったぐらいから、グローバリゼーションだなんだかんだで、クルマもやっぱり平準化されていっちゃったじゃない。フランス車がドイツ車っぽくなっちゃったりして、極端に言うと「どれ乗ってもあんま変わんないわ」みたいな。そういうなかで、こういう異端なもの、自分のスタイルを持つものがちゃんと残ってきたっていうのは幸せなことだと思うよ。こいつと、それこそロールス・ロイスぐらいじゃないかな。
堀田:ロールス・ロイスですか?
渡辺:本当、「ファントム」とこのクルマぐらいじゃないかな。アメリカローカルな味つけっていう部分でいうと、むしろコルベットよりもカマロのほうが濃ゆいかもしれない。オーディオもドンツクだしね!
堀田:わかりやすくズンドコでしたね(笑)。低音のドスが利いてて、いかにも向こうの人に刺さりそうなイメージのBoseだった。音自体はとてもいいから、「気になる人はイコライザーで調整してよ」ってことなんでしょうけど、そういうところも含めて異国情緒たっぷりでしたね、個人的には。
渡辺:あと、今回のクルマが黒だったからっていうのもあるけど、単純にヤル気といか、若い男の危うさみたいなものがあってイイなと思った。なんか、いくつになっても革ジャンを着られるカッコよさみたいなものがあるじゃない、カマロには。
堀田:ありますね。突っ張ってるっていうのとも違う、なんとも言えない前のめりな感じが。
渡辺:だから「俺はまだまだ革ジャン着られるぜ」ってオッサンにも、どんどんカマロに乗ってほしい。もう俺は革ジャンを着られない腹になってしまったけど(笑)。
堀田:大丈夫ですよ! 革ジャンって意外と伸びるから。
(語り=渡辺敏史、webCG堀田/文=webCG堀田/写真=向後一宏/撮影協力=E.G.DINER)
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