「人とくるまのテクノロジー展2012」
2012.05.25 画像・写真2011年5月23日〜25日、神奈川県のパシフィコ横浜で恒例の「人とくるまのテクノロジー展2012」が開かれた。これは自動車メーカーをはじめ、部品メーカー、材料メーカー、計測・解析機器メーカーなどが最新の自動車技術を展示する、日本最大の自動車技術展である。年を追って開催規模は拡大してきたが、昨年は東日本大震災の影響から、出展者数こそ一昨年の365社を上回る377社を数えたものの、やや盛り上がりに欠けた感は否めなかった。今年は436社と大幅に増え、展示面積も会場キャパシティーいっぱいまで拡張し、活気が戻っていた。中でも昨年はやはり震災の影響で少なかった海外、特にドイツからの出展者が目に付いた。展示の傾向としては、環境関連技術が中心なのは言うまでもないが、EV関係の展示が以前ほど目立たなくなった印象を受けた。そんな会場から、リポーターが注目した展示を紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)

パシフィコ横浜の展示ホールをすべて使った会場全景。
-
パシフィコ横浜の展示ホールをすべて使った会場全景。
-
イギリスのエンジニアリング会社である「リカルド」が展示していた「マクラーレンMP4-12C」用3.8リッターV8ツインターボエンジン。同社が開発、設計を担当、生産まで行うそうだ。ターボチャージャーは「三菱重工」製だった。
-
同じく「リカルド」が出展していた1リッター直3のガソリンエンジン。ハイブリッドを上回る低燃費と高性能をディーゼルエンジンより安いコストで実現しようというコンセプトのもとに開発されたもので、電動スーパーチャージャーとターボのツインチャージャー、マイクロハイブリッド(アイドリングストップ機能や回生ブレーキ)を備える。最高出力140ps/5500rpm、最大トルク23.8kgm/2500rpmを発生するという。
-
「ボッシュ」のブースに展示されていた「ボッシュ」「ボッシュ・マーレ・ターボシステム」「マーレ」の3社協業により開発された「エクストリームダウンサイジング」をうたったガソリン直噴ターボエンジン。1.2リッター直3から2.4リッターNAエンジンに相当する最高出力160ps、最大トルク29.1kgmを発生し、いっぽう燃料消費は30%以上削減されたと主張する。
-
「マーレ」はピストンで知られるドイツの部品メーカーだが、グループ内の「マーレパワートレイン」(旧コスワーステクノロジー)は自動車メーカーなどから開発を請け負うエンジニアリング会社である。これは同社が開発したEVのレンジエクステンダー用エンジンで、900ccの2気筒から最高出力40psを発生。垂直から水平までの角度で搭載可能とのこと。
-
「ホンダ」が出展した次世代125ccスクーター用グローバルエンジン「eSP」。エンジン各部の低フリクション化によって燃費が約25%向上し、セルフスターターとダイナモ兼用のモーターによりアイドリングストップにも対応。静粛性と耐久性も抜群という。
-
大手チューニングパーツメーカーとしておなじみの「HKS」が初出展。ここ数年、同社が得意としているスーパーチャージャーと、天然ガスとガソリンの双方を燃料として使えるバイフューエルシステムを中心に展示していた。写真の新開発されたスーパーチャージャーは、冷却用オイルを内部に封入したウエットサンプ構造で、外部オイル配管やオイルクーラーが不要となり、より簡単な取り付けとコスト低減を実現したという。
-
変速機のトップメーカーである「アイシン」が出展していた、世界でもトップクラスのショートストロークを誇るという「トヨタ86」および「スバルBRZ」用の6段MT。
-
「スズキ」が展示していた、ハイドロフォーミングにより1本の鋼管から成形された一体型の軽トラック用アクスルハウジング(写真上)。鋼板プレス部品と鋼管を溶接している現行品(写真下)に比べて重量は1割減、剛性および耐久性は同等で、溶接工程がほとんどないのでコスト低減が可能になるという。
-
「ヘラー」といえばライトが有名なドイツの部品メーカー。だが、照明以外の電子部品も手掛けており、とくにアクセルペダルセンサーでは世界シェア45%を誇るリーディングメーカーなのだそうだ。
-
「豊田自動織機」が出展していた「プリウスα」のルーフに採用された樹脂製ウィンドウ。ガラス製に比べて40%の軽量化を実現し、形状の自由度も飛躍的に高まった。耐候性については、テストの結果、紫外線の強烈なアリゾナなどでも10年間は透明度が維持されるという。
-
日野自動車の大型車用純正燃料フィルターだが、主役は中央下部に貼られた小さな銀色のシール。「富士フイルム」の「フォージガード」という偽造防止ラベルで、写真右上のように専用ビュアーをかざすとホログラムのような色が出現する。ブランド品をはじめさまざまな商品の偽造防止に役立つが、自動車部品の場合は偽造された粗悪な部品の使用によって機械が損失を受けることもあるので、こうした対策は有効といえる。
-
「iMiEV」でEV販売の実績がある「三菱自動車」は、新たに「プラグインハイブリッドEVシステム」を出展した。2リッター直4エンジンと、前後に配した駆動用モーターを組み合わせた4WD方式で、 大容量の駆動用バッテリーから一般家庭の約1日分の電力供給が可能な給電機能も備えている。
-
「日産自動車」は東日本大震災による停電で注目されたEVの電力供給機能をアピール。住宅にPCS(Power Control System)を備えることによって、約2日分の使用電力を「リーフ」から供給可能というシステム「LEAF to Home」を展示。実際にブース内の照明は、壁面のディスプレイも含め、このシステムによる給電で点灯していた。
-
「いすゞ」はプラグインディーゼルハイブリッドシステムを搭載した小型トラック「エルフ」を出展。車体後部のリチウムイオンバッテリーをはじめ、ハイブリッドシステムはすべて床下に収まっている。
-
「トヨタ車体」は昨秋の東京モーターショーでデビューした1人乗りのEV「コムス」を展示。5時間の充電で走行距離は50kmで、最高速度は60km/h。旧型と比べて充電時間は3時間短縮され、走行距離は15km、最高速度は10km/h伸びたという。今夏発売予定で、価格は60万円程度となる見込みとのこと。
-
インホイールモーターを使ったEVの研究開発を行っている「SIM-Drive」は、先行開発第1号の「SIM-LEI」と第2号の「SIM-WIL」(写真)を出展。多くの来場者を集めていた。
-
ベアリングのトップメーカーである「NTN」。現在はさまざまな精密機器へと事業を展開しているが、これは走る(駆動)、曲がる(ステアリング)、止まる(ブレーキ)をすべてバイワイヤ化したEVシステムのコンセプト展示。
-
イギリスの「GKNドライブライン」が出展した「インテグレーテッドeドライブシステム」。3相モーターと2段トランスミッションを、全長555mm、全幅395mmというコンパクトなサイズで一体化したEV/HEV用駆動システム。
-
オーストリアの「マグナ・シュタイア」は、今春のジュネーブショーに出展したコンセプトカー「Mila Coupic」を展示。1台でSUVクーペ、ピックアップ、オープンの3つに姿を変えられるという、画期的な「スライディング・フォールディング・ルーフ」を備えている。ちなみに「マグナ・シュタイア」は、4WDシステムを筆頭に多くの自動車メーカーの開発および生産を請け負ってきた老舗である。