「トヨタ博物館 クラシックカーフェスタ in 神宮外苑」の会場から
2014.12.04 画像・写真2014年11月29日、東京都新宿区の明治神宮外苑 聖徳記念絵画館前で「トヨタ博物館 クラシックカーフェスタ in 神宮外苑」が開かれた。このフェスタは、愛知県長久手市にあるトヨタ博物館が、クラシックカー愛好家同士の交流とクルマ文化の継承を目的とするイベントを首都圏でも、という趣旨で2007年から始めたものである。一般オーナーから募集したおよそ100台のクラシックカーの展示と公道パレードを中心とする内容は、8回目を迎えた今回も不変。絵画館前を出発し、外苑のいちょう並木を通って青山通り(国道246号)を三宅坂まで直進、その後は内堀通りを南進し、銀座四丁目から新京橋まで、週末でにぎわう銀座中央通りを走り、二重橋前を経て外苑まで戻ってくるというパレードコースも例年通りである。これも恒例となっている企画展示の、今回のテーマは「1930年代、日本の自動車産業夜明け前。」で、当時の高級車から大衆車までトヨタ博物館の収蔵車両6台が展示された。唯一、例年と異なったのは天候。2年前の昼前後に天候が急変し、しばしの間強風と雨に襲われたことを除けば、このイベントは過去ずっと好天に恵まれていた。今回は朝から時折小雨がパラついてはやむ、を繰り返していたのだが、パレードの途中から本降りとなり、一時はかなり強く降った。おかげで収蔵車両およびピックアップした展示車両のデモ走行は中止。そして1時間繰り上げた閉会時間が近づく頃になって日が差し始めるという皮肉な展開となってしまった。しかし、そうした天候にもかかわらず、会場にはたくさんのギャラリーが訪れて大盛況。「雨だから、人が少なくて撮影が楽かも」というこちらの淡い期待は見事に打ち砕かれたのだった。
(文と写真=沼田 亨)

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午前10時20分、白洲次郎のベントレーや吉田茂のロールス・ロイスなどを維持管理していることで知られるワクイ・ミュージアム所蔵の1923年「ロールス・ロイス20HPオープンツアラー」を先頭に、およそ100台の参加車両がパレードに向けてスタート。
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1961年「ファセル・ヴェガ・ファセリア」。戦後のフランスで唯一の高級車メーカーだったファセルが作った、1.6リッター直4 DOHCエンジンを積んだ小さな高級パーソナルカー。新車で3台だけ正規輸入されたうちの1台という。
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参加車両は1台ずつレッドカーペット上で紹介され、主催者や来賓の祝福を受けた後にスタートする。これは1959年「MGA 1600」。
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戦前モデルは年式順だが、戦後モデルは生産国別に順番にスタートしていく。この列は1957年式を先頭に3台の「フォルクスワーゲン・カルマンギア・クーペ」、続いて「ポルシェ911」が2台というドイツ車勢。この前後には「フォルクスワーゲン・ビートル」やメルセデス・ベンツがいた。
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来場者の前を通り抜けていく1981年「フェラーリ512BBi」。5リッター180度V12エンジンがインジェクション仕様となったBBの最終発展型である。この日、いったい何人のギャラリーからカメラを向けられたことだろうか。
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神宮外苑のいちょう並木を行く、先頭から1967年「日野コンテッサ1300クーペ」、沖縄向け左ハンドルの「日野コンテッサ1300デラックス」、66年「いすゞ・ベレット1500デラックス」など。
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1980年「トヨタ・スプリンター・リフトバック1600GT」。型式名E70系こと4代目カローラ/スプリンター、それもリフトバックとなると、現存車両はかなり希少な存在である。後方はその次の5代目となる「スプリンター・トレノ3ドア」。グレードは未確認だが、1600GT系なら型式名はAE86。さらに後ろは初代「セリカ1600GT」。
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雨にしっとりぬれて黒くなった路面、漆黒のボディーと赤く輝くストップランプの対比が美しい1966年「プリンス・グロリア・スーパー6」。前方は同じく66年「グロリア6ワゴン」。
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パレードをほぼ終え、会場に戻る前に一方通行の外苑の周回路を回る1959年「キャデラック・セダン・ドゥビル」。後ろにいる「トヨタ・センチュリー」のハイヤーが小さく見えたこと!
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淡いが渋いグリーンとアイボリーのツートーンの1962年「ロータス・エリートSr2」と、似たトーンのグリーンで塗られた58年「MGマグネットZB」。使い古された表現ではあるが、こうした小雨模様に英国車は映えると思う。
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1976年「ダットサン280Z」。型式名S30系こと初代「フェアレディZ」の米国仕様の最終発展型。日本では78年に登場する2代目S130系で採用された(「セドリック/グロリア」には搭載済み)電子制御インジェクション仕様のL28E型2.8リッター直6 SOHCエンジンを積んでいる。
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強まる雨脚にも負けず、男のクルマらしく雨具着用でオープンのまま走る1969年「三菱ジープJ3R」。長らく自衛隊で制式採用されていた車両と基本的に同じ、ウイリス直系のヘビーデューティーでスパルタンなモデルである。
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写真に雨滴が写るほど激しくなった雨の中を行く1955年「トヨペット・クラウン・デラックス」。初代クラウン(RS)は55年1月に発売され、同年12月にデラックス(RSD)が追加されたのだが、この個体は55年製造の最初期モデル。しかも内外装ともにフルオリジナルで、新車以来の陸運支局名のない「5」ナンバーを付けたワンオーナー車という、まるで奇跡のような残存車両である。
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1969年「トヨタ・カローラ・スプリンター」。2代目以降はカローラから独立した兄弟車となったスプリンターだが、当初は初代カローラのクーペモデルとして誕生した。これはその初期型で、ネッツトヨタ東京がユーザーから買い取った車両を、社員の技術研修と歴史を学ぶためのプロジェクトとして社内でレストアしたという。そもそもネッツ店のルーツであるオート店の設立に合わせて発売された、初の専売車種が初代スプリンターだったのだ。
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1963年「プリンス・スカイライン1900スタンダード」。初代スカイラインの最終型というだけでも希少だが、さらに珍しいスタンダード仕様で、しかも「茨5」のシングルナンバー付き。テールフィンの付いた、50年代米車風のボディーの、顔つきだけを60年代初頭の流行だったフラットデッキスタイルに改変した、過渡的なスタイリングが特徴。
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トヨタ博物館館長の布垣直昭氏とモデル嬢、そしてテーマ展示の一台である1935年「イスパノ・スイザK6」。この個体は旧佐賀藩主である鍋島家13代当主の直泰候がベアシャシーで輸入、自らデザインしたボディーを、自邸内で半年かけて日本の職人に製作させ架装したという逸品。2008年にトヨタ博物館に寄託された。
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1936年「ランチア・アストゥーラ・ティーポ233C」。ピニンファリーナの手になる優美なボディーを持つ高級パーソナルカー。3リッターのV8 SOHCエンジンを搭載する。
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1936年「コード810 4ドアセダン」。 世界初となるリトラクタブルライト、アメリカ車初となるFF、セミオートマチックの4段ギアボックスなどの進歩的な機構を備えた高級車。エンジンは4.7リッターV8で、この4ドアセダンのほかに2ドアコンバーチブルも存在した。
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これもテーマ展示車両である1932年「ダットサン11型フェートン」。ダットサンといえば日産の小型車ブランドだが、この個体は日産がダットサンの製造権を取得する以前にダット自動車で製造された、現存する最古のダットサンという。
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雨降りにもかかわらず、会場にはたくさんのギャラリーが訪れた。