日本最大級のクラシックモーターショー「ノスタルジック2デイズ」の会場から
2023.02.28 画像・写真2023年2月18日、19日の2日間、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、『ノスタルジックヒーロー』など旧車専門誌のプロデュースによる恒例のイベント「ノスタルジック2デイズ」が開かれた。「日本最大級のクラシックモーターショー」とうたったこのイベントは、実車をはじめパーツやオートモビリア(クルマ趣味の小物)などのショップによる展示即売を中心とするものである。
近年のクラシックカー、とりわけ国産旧車の価格高騰ぶりはすさまじいものがある。このイベントでも、程度良好な人気車種ともなると新車価格の10倍20倍のプレミアムはザラという感じだった。今回ももちろんそうしたオリジナル志向の出展車両は存在したものの、それよりも目についたのは、バラエティー志向と言っては語弊があるかもしれないが、アップデートやカスタマイズを施されたモデルたち。一口に旧車といってもさまざまな方向性があることを再確認できて、興味深かった。
新型コロナによる自粛、巣ごもりムードもここにきてだいぶやわらいだのだろうか、今回は開場間もない土曜の午前中から人出が多く感じられた。その感覚は正しく、2日間の入場者数は前回比122.1%の3万6513人で、過去最高を記録したという。そんな会場から、リポーターの印象に残った出展車両を中心に紹介しよう。
(文と写真=沼田 亨)
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1/40特別展示車両。左からクレイジーケンバンドの横山 剣さんがクラシックカーレースで駆っている「ダットサン・ブルーバード1800SSSクーペ」(KH510)、同じく剣さんが所有する北米仕様の「ダットサン1600 2ドアセダン」(PL510)、プリンスガレージかとり所有の「いすゞ・ベレット1600GT」、そして日産自動車提供の最新の「GT-R」(R35)と「フェアレディZ」(RZ34)。
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2/40恒例の読者応募による「選ばれし10台」の入場シーン。オーナーがステアリングを握り会場内を自走で登場し、ステージ上でインタビューを受ける。これは3台目の「トヨタ・スポーツ800」。土曜の午前中(コーナーは10時30分スタート)で、この人出。
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3/40特別展示車両であるプライベートミュージアム、セピアコレクション所有の、軽自動車の始祖である2台の「オートサンダル」。手前が1952年「FN型ロードスター ロリー」、奥が1951年「FS型プロトタイプ」。
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4/40これも特別展示車両。希少な日本車を数多くお持ちのH氏所有の1956年「フジキャビン」。「ロータス・エリート」よりも先にFRPモノコックボディーを採用していたマイクロカー。
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5/40同じくH氏所有の1953年「オオタVF型ライトバン」。オオタは戦前から1950年代までブランドが存在した自動車メーカーだが、残存車両は極めて少ない。
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6/40すっかりおなじみとなった「ポルシェ912」のパトカーと並んで特別展示された1971年「トヨタ救急車FS55V」。ボディーは3代目RS/MS50系「クラウン」をベースとしているがホイールベース、全長ともに延長され、大型トラックや「ランドクルーザー」用のF型3.9リッター直6 OHVエンジンを搭載。フロントフェンダーに「トヨタ1600GT」用のルーバー(おそらく熱気抜き用)が付けられている。
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7/40ニスモのブースには、「スカイラインGT-R」(BNR34)の中古車をベースに19台のみがつくられた「世界最強のロードゴーイングカー」こと「NISMO R34GT-R Z-tune」が展示されていた。最高出力は500PS以上とされ、販売価格は1774万5000円だった。
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8/40マツダはCLASSIC MAZDAでレストアされた「RX-7」(FD3S)とそのホワイトボディーを中心に展示していた。
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9/40毎回、コンディションのいい希少車を展示するオートサークル。型式名230こと3代目「日産セドリック」の黒塗りセダンは、なんと当時は税金がバカ高かった3ナンバーの「2600GX」。しかもベンコラ(ベンチシート+コラムシフト)、それもATではなく4段MT仕様というレアな個体だった。
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10/40これもオートサークルが並べていた「日産チェリー クーペX-1・R」。X-1・Rの純正色は白のみだったのでリペイントだろうと思いきや、ショップによると「あちこちバラしてみても塗り直した痕跡が出てこない」とのこと。ということは、新車時の特注の可能性が高い。レアなイレギュラーものというわけか。
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11/40「チェリー」といえば、毎回広島から遠路はるばるやってくる竹口自動車。日本で唯一のチェリーのエキスパートは、デモカーの「クーペX-1・R」と「2ドアX-1」を展示。
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12/40相変わらず人気が高く、数多く出展されていた初代「日産フェアレディZ」(S30)。これはステアリングボス専門メーカーであるWorks Bellのブースに並べられていた「ダットサン280Z」。北米仕様の最終型を国内仕様の初期型風にモディファイしているが、ナンバープレートを含めてアメリカの日本車マニアが仕立てたような雰囲気だ。
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13/40タキーズが出展していた、これも北米仕様の1971年「ダットサン240Z」。国産旧車のなかでも日産L6エンジン搭載車の価格高騰が続くなかで、550万円というプライスはリーズナブルに思える?
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14/40尾林ファクトリーのブースに並べられていたS30の「Z」は、今風のオーバーフェンダー/エアロパーツを装着。でもフェンダーミラーを残しているところがイーネッ!
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15/40アバンテオートサービスが出展していた「ダットサン280ZX」。2代目「フェアレディZ」(S130)の北米仕様である。なぜインマニを浮かべた状態で展示(写真左上)していたかといえば、純正インマニを使った左ハンドル仕様でも問題なく装着可能なタコ足が同社のオリジナル商品であるとのこと。
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16/40こっ、これは……「スカG(ジー)ではなくスカZ(ズィー)と呼んでください」とのただし書きがあった、S30「フェアレディZ」の顔面をノーズに埋め込んだ「日産スカイライン クーペ」(V35)。VRPの出展。
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17/40タキーズが出展していた「日産スカイライン ハードトップ2000GT-R」(KPGC10)。見たところフルオリジナル仕様でボディーカラーは希少色の赤、しかも車台番号が若い104番(1970年)とあって、価格は5500万円。
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18/402023年の東京オートサロンにも出展されていた、オールド☆スターモータースのドライカーボンボディーの「日産スカイライン ハードトップ2000GT」(KGC10)。リアフェンダーを“Rカット”していないGT仕様のボディーに「GT-R」用のS20ユニットを積んでいた。
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19/40ハコスカ一筋30年以上、L6もS20も知り尽くしたVICTORY 50がつくった“究極の「GT-R」仕様”という「日産スカイライン ハードトップ2000GT」(KGC10、手前)。フルレストアされたボディーに積まれた直6 DOHC 24バルブのOS技研製TC24-B1Zの3.2リッターウェバーφ50仕様はベンチ実測で最高出力400PS/8000rpmを発生するそうで、価格は3000万円。奥のSOHCのL6仕様は1500万円だそうだから、ほぼエンジン代で2倍になるわけだ。ちなみに新車価格もL20搭載のGT(KGC10)の89.5万円に対してS20搭載のGT-R(KPGC10)は2倍近い154万円だった。なお2台の間にあるタコ足は、OS技研、トラスト、VICTORY 50の3社共同開発によるL6用とのこと。
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20/40本家OS技研が展示していたTC24-B1Z搭載の「日産スカイライン ハードトップ2000GT」(KGC10)。こちらはインジェクション仕様だが、芸術的と言っても過言ではない眺めだ。
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21/40ノーチラススポーツカーズが展示していた「プリンスR380」のレプリカボディー。10年以上前にノーチラスではアルミたたき出しでやはりR380のレプリカをつくっていたが、これはFRP製。鋼管スペースフレーム(写真右上)は「1965年の速度記録仕様か翌1966年の日本GP仕様なのか詳細は不明だが、残されているホンモノの図面を見てつくった」とのこと。
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22/40国産旧車の世界で「ハコスカ」「ケンメリ」「S30Z」と並ぶ「日産四天王」とでも呼ぶべき存在の2代目「日産ローレル ハードトップ2000SGX」(KPC130)。ヴィンテージ宮田自動車が出展したこの個体は、ローダウンしてハヤシストリートを履かせ、サイドミラーを移設しただけのクールで好ましい仕様。
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23/40VIPカーが人気だったころは東京オートサロンに派手なブースを構えていたジャンクションプロデュース。オートサロンからは消えて久しいが、ここで復活していた。クルマは通称“グラツー”こと7代目「日産セドリック ハードトップ グランツーリスモ」(Y31)。奥の物販コーナーに房(フサ)は健在だった。
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24/40日産系商用車と旧車用部品全般のエキスパートであるバラクーダが出展していた初代「日産キャラバン」(E20)。キャラバンは「地味ながら今年は誕生50周年」だそうで、これはその最初期型となる1973年式。手前に並べられているチンスポイラーは、1970年代のバニングブームのときに出ていた社外品を復刻したものという。当時、こんな製品がリリースされていたとは知らなかった。
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25/40前出の「日産キャラバン」の荷室。畳敷きで、いかにも1970年代風の壁紙が貼られた茶の間仕様の和風バニングスタイル(?)は、前オーナーの手によるもの。それに合わせて花柄のちゃぶ台、座布団、トースター、炊飯器「直火炊き」のノベルティーという湯飲み茶わんをあしらった演出を見て、NHK『美の壺』の昭和レトロの回を思い出した。
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26/40ブリスター風のカッコいいワークスオバフェンを装着した、オートアドバイザースタッフの初代「トヨタ・スターレット」(KP47)。パワーユニットは「タウンエース」や「ライトエース」などに積まれていた、トヨタK型の最終発展型である1.8リッター直4 OHVの7Kをチューンして搭載。「メッチャ速いっスよ~」とのこと。
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27/40VRPが出展していた、前出の初代「スターレット」のベースとなった2代目「トヨタ・パブリカ」のバリエーションである「パブリカ ピックアップ」(KP39)。こちらもエンジンは7K、インジェクション化され21世紀まで残っていた、国産小型車用としては最後期のOHVエンジンである7K-Eをチューンして搭載。公認済みでNOx規制適合、クーラー付きで、こちらは「バカッ速です」とのことだった。
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28/40ヤングオート(かつて存在した同名の街道レーサー専門誌関連とのこと)のブースに展示されていた、通称“LB”こと初代「トヨタ・セリカ リフトバック」改。1970年代末から1980年代にかけて行われた、グループ5マシンによる富士スーパーシルエットレースにトムスから参戦した「シュニッツァー・セリカターボ」のレプリカである。
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29/40「セリカLB」と並んでいた2代目「マツダ・ルーチェ ロータリー ハードトップ」(RX-4)。レースとは無縁のルーチェがベースカーのところが、より街道レーサーっぽい。エンジンは13Bペリ(ペリフェラルポート)とのこと。
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30/40「ホンダSシリーズ」と英国製ライトウェイトスポーツのエキスパートであるガレージイワサが展示していた、オリジナルの姿を保った「ホンダS600」。ホンダのレーシングサービス部門だったRSC純正のCRキャブレターとマグホイールという希少パーツも並べられていた。
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31/40フェニックスが展示していた「マツダ・サバンナRX-3」。遠目に見ても塗装がテロンテロンで妙な質感だと思っていたら、アオシマの1/64スケールのダイキャストミニカーであるグラチャンコレクションのRX-3を1分の1で再現してみたとのこと。通常とは逆のモデルカーの実車化というわけで、筆者が仕上げに違和感を覚えたのは製作者の狙いどおりだったわけだ。
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32/40ガレージ34が展示していた「マツダ・サバンナRX-7」(FC3S)。ミッドナイトブルー(濃紺)に塗られた外観はおとなしいが、エンジンは3ローターの20Bターボに換装されていた。
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33/40「よそとはちょっと違うクルマが得意」というスウィンギンモータースが出展していた「フォード・フェスティバ1300S」。1980年代風のポップな色・柄のシートをはじめ内外装に傷みは見られないが、それもそのはずで実走行はわずか4200km!
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34/40オートサークルが展示していた「6 群」のシングルナンバー付き、未再生の初代「三菱ミニキャブ」。
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35/40今回の出展車両中、特別展示車両の「オートサンダル」などを除いて個人的にもっともレアだと思ったのが、この「日野ブリスカ1300」。ブリスカは「コンテッサ900」のエンジンを流用した750kg積みの小型ボンネットトラックとして1961年に誕生、1965年にフルモデルチェンジして「コンテッサ1300」のエンジンを載せた1t積みとなった。それがこの展示車両である。1967年、2度目のマイナーチェンジの際に業務提携先のトヨタに販売権を移管して「トヨタ・ブリスカ」に改称。「ダットサン・トラック」に正面から対抗する持ち駒がなかったトヨタのラインナップを補完し、翌1968年に初代「トヨタ・ハイラックス」が登場するまでのつなぎ役を果たした。
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36/40「トヨペット・スタウト」。かつてトヨタがラインナップしていた1.5~2t積みのボンネットトラックがスタウト。これは1961年から1979年までつくられた2代目の、おそらく1960年代後半のモデル。メタリック塗装やクロムメッキされたフロントグリルなどはノンオリジナルだが、もともとラップラウンド風のウインドシールド(フロントガラス)などアメリカンなスタイリングを持ち合わせていた。
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37/40アートレーシングが展示していた「ダットサン2000ロードスター」(SRL311。「フェアレディ2000」の北米仕様)のレースカーのトランスポーター。中身は現代の国産商用車だそうだが、クラシックな欧米のトランスポーターの雰囲気をうまく演出している。
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38/40オートロマンが展示していた「ポルシェ911ターボX50」。空冷エンジンの最終モデルであるタイプ993のターボを2WD(RR)化し、3.6リッターフラット6ターボユニットは最高出力560PSにまでスープアップ。
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39/40モディファイされた「ポルシェ911」を中心に展示していたカミワザジャパン。この993型は「車幅が有料道路のゲートギリギリ(笑)」という超ワイドなリアトレッド/オーバーフェンダーで見る者を驚かせた。
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40/40ダディモーターワークスの「BMW 2002」は、エンジンを「ホンダS2000」用のVTECユニットにスワップ。きれいに収まっているが「見えない部分はけっこう工夫してます」とのこと。