2028年までに復活! 名車「シトロエン2CV」の現代版はその名に値する一台か?
2026.10.22 デイリーコラム安くて軽くて愛らしい
「シトロエン2CVコンセプト」。いいですよね~。うれしいのは、このコンセプトがコンセプトで終わらないことだ。シトロエンはこのコンセプトカーを、2028年までに発表するモデルのビジョンを体現するもの、と位置づけている。生産はEU内で、約1万5000ユーロからの価格設定を目指し、将来の小型EV規格“Eカー”レギュレーションにも適合するという。
2CVコンセプトがどこまで量産モデルを体現しているのかは不明なれど、わざわざ披露したのだから、少なくとも外観はかなり近いものが出てくるものと思われる。
量産型の開発目標として、全長3.76mのEカーで車重1t以下、とシトロエンは発表している。全長3.76mは、オリジナル2CVの3.83m(1985年式)よりも短く、シトロエンの2人乗り電動マイクロカーの「アミ」(全長2.41m)と「ë‑C3」(同4.015m)の間を埋めることになる。
「軽快で扱いやすく、個性あふれるこのクルマは、長らく忘れ去られていたカテゴリーに新たな息吹を吹き込みます。都市部であれ郊外であれ、あらゆる環境に適応します」とプレスリリースにある。大きくなりすぎた小型車への反省が込められている。
技術的には、日本の軽自動車規格の全長3.4m以下×全幅1.48m以下よりもひと回り大きい。その大きなボディーで、車重1t以下となれば、量産型のヌーヴェル・ドゥ・シヴォーはそうとう軽い。電池容量は未発表ながら、わが国の「ホンダN-ONE e:」は29.6kWh、「スズキeスカイ」は26kWhで、車重はどちらも1030kg。一充電走行距離(WLTCモード)は前者が295km、後者が310km。さらにシトロエンë‑C3は電池容量44kWhで、429kmである。次期2CVはë‑C3になるべく近づけることを目標にしているはずだ。
とすると、読者諸兄姉はお気づきになったであろうか? 2CVコンセプトにはエアコンの吹き出し口がないことを。その代わり、ファブリック製ルーフで、外気導入用のフラップ付き、というところをオリジナル2CVから引用している。これを量産型でも採用する!? エアコンなし。熱波の日には、ま、乗らないことですね。
というのも、エアコンなしでファブリックのルーフなら、1t以下の車重で、1万5000ユーロから始まる価格も実現できる……かもしれない。これは、より安楽、より快適方向に流れがちな、文明に対する文化面からの反撃ともいえる……かも。
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架空の国のレトロにあらず
1万5000ユーロは日本円でおよそ266万円(2026年10月16日の為替レート)。本邦の軽EVと同程度である。フランスで暮らしているひとからすると、150万円ぐらいの感覚かもしれない。かの地の法廷最低賃金は時給12.31ユーロ(約2200円)だからして。これにオプションのエアコンとかを付けていくと2万ユーロ、350万円ほどになる。というのは筆者の想像です。
気になるのは乗り心地である。2CVコンセプトはミシュランの18インチのタイヤを装着している。量産車でこれはないだろう。車重増にもコスト増にもなる。現代のシトロエンを特徴づけているPHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)には期待したい。それと、アドバンスト・コンフォート・シート。オリジナル2CVみたいに、前後関連懸架の特殊なサスペンションと、155R15という細っこいタイヤで、ハンモックで揺られているような、コーナリング時には倒れそうなほどロールしたりする乗り心地だったら、モア・ベターなんですけど、あれ風であってほしいとは思う。
なお、“Eカー”とは、日本の軽を参考に考えられたともいわれるEUの新規格で、ヨーロッパ生産の全長4.2m以下の小型EVにのみ適用される。税制上の特典を設けることで、温暖化と中国製EVに対抗するものだ。安くて優れた中国製と対峙すべく、フランスのメーカーが知恵を絞った回答が、パリモーターショー2026に出現した、あまたのレトロな電気のコンセプトカーたちだった。
レトロといっても、「日産Be-1」のような架空の国のレトロではない。フランス勢だけに許された、2CVとか「プジョー206T16」とか、「アルピーヌA310」とか「エスパス」とか、彼ら独自の文化遺産へのオマージュである。
これらが意味しているところはなにか? フランス人民への呼びかけである。フランス車とともにあった、よきフランスの、あのころのフランス人の幸せの日々を思い出せ。想像せよ、われらの共同体を。いまこそ立ち上がれ。レジスタンスだ! とまではいってませんけど、つまり、このトレンドはヨーロッパ各国での右翼的な政治運動の盛り上がりとつながっている……。
かどうかは別にして、健全なナショナリズムはけっこうなことである。もしもモーターショーのワールドカップがあるとすれば、2026年の優勝はフランス。MVPは2CVコンセプトである。2028年までに量産型が登場する。果報は寝て待とう。
(文=今尾直樹/写真=ステランティス/編集=関 顕也)
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今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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