トヨタ・ベルタのライバル車はコレ【ライバル車はコレ】
コンパクト&スタイリッシュカー対決 2006.04.08 試乗記 トヨタ・ベルタの「ライバル車はコレ」 「ヴィッツ」ベースのセダンたる「プラッツ」に代わって登場した「ベルタ」は、「女性ユーザーへのアピール」を狙っている。セダン需要のボトムレンジを担うモデルの好敵手とは?トヨタ・ベルタ(1.3リッター/138万6000円〜175万3500円)
■立派な後継車
トヨタ最小3BOXセダンとして、「プラッツ」の事実上の後継車として開発されたのがブランニュー・モデルである「ベルタ」。最近のトヨタ車にありがちな「全く新しい名前」を採用したのは、プラッツに付きまとっていたちょっと地味で年寄りくさい(?)イメージを払拭したかった故か。ちなみに、ハードウェア上では“初代ヴィッツのセダン”と紹介できたプラッツに対し、こちらベルタはどちらかといえば(同じホイールベースの持ち主である)「ラクティスのセダン版」と表現したほうが当たっているもの。
プラッツのサイドビューがどうも“アンバランス”に見えたのに対して、ベルタのそれがグンとバランスよく感じられるのは、ホイールベース延長のお陰でリアの車輪位置が相対的に後退し、「Cピラーをしっかり下から支える」という構図が描けるようになったためだ。
プラッツに対するホイールベースの延長分が180mmに対し、全長は120mmのプラス。すなわちこの差60mmが前述の後輪位置の「後退分」という事になる。全幅は30mmアップの1690mmで、こちらは“5ナンバー枠”に一杯という値。見た目がプラッツよりも遥かに立派に感じられるのも当然というわけだ。
そんなボディに搭載されるエンジンは、1.3リッターの4気筒もしくは1リッターの3気筒という2タイプ。トランスミッションはFWDモデルがCVTで、ビスカスカップリング方式の4WDモデルはトルコン式4速ATの設定。ちなみに、このクルマは『ヤリス・セダン』と名前を変えて北米マーケットでも“2007モデル”から発売される事が発表済み。プラッツに対してのこれまで述べてきたような各サイズの拡大は、当然ながらそちらのマーケットでの商品力をアップさせるためという意味あいも含んでいる事になる。
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【ライバル車 その1】ホンダ・フィットアリア(1.5リッター/134万4000円〜171万1150円)
■アジアの高級車
ネーミングの通り「フィット」をベースとしながら、3BOXのデザインが好まれる東南アジアをメインのマーケットとして開発されたいわゆる“アジアンカー”が、2002年の末に導入されたこのモデル。生産はタイ工場で行われるので、すなわち“輸入車”という扱い。2005年10月にマイナーチェンジを受けてフロント/リアビューを中心にリファインするとともに、1.3リッター・モデルがカタログ落ちして1.5リッターのみという設定になった。
ホンダ最小のセダンとは言うものの、アジアの人々にとってみればそれは紛れもない“高級車”。フロントグリルに派手なメッキ装飾が施されたり、インテリアのあちこちに木目(調)パネルを見る事が出来たりする点にも、そんなこのクルマの狙いどころが読み取れる。フィット・アリアは「憧れの存在」なのだ。
もっとも最新のベルタと並べてみると、スタイリングの伸びやかさではどうしても敵わない。ベルタよりも90mm長い全長に対して、ベース車のフィットと同じホイールベースは逆に100mmものマイナス。それゆえに、プロポーション的にどうも「後輪位置が前過ぎる」印象が否めないのだ。もっとも、その分ホイールハウスの張り出しの影響が小さく、トランクルームはドカンと広大。実に500リッターに達するという容量はベルタを25リッター上回る。
1.5リッター・エンジン+CVTという組み合わせのお陰で、常用シーンでのエンジン回転数は全般にベルタよりも低めをキープ。その分静粛性も上々なのだが、時にタンク内で燃料が波打つ音が耳につくのはセンタータンク・レイアウトの弊害と言うべきか。良路での乗り心地は悪くはないが、路面が荒れ始めるとストローク感が物足りない。ピッチング挙動が目立つ場面もあるのは、前述のようにベルタよりもホイールベースが短い事も一因か。
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【ライバル車 その2】三菱i(0.66リッター/128万1000円〜161万7000円)
■プレミアムスモールの失点
鳴り物入り(?)でついにデビューの「アイ」。まさに“ショーカー・ルック”のボディにリアエンジン(三菱では『リア・ミッドシップ』を名乗る)+「ホンダからパテントを買った」(!)というセンター・タンクのレイアウト。さらには搭載するエンジンも三菱の軽自動車用ユニットでは初めてのアルミ製という完全な新作…と、まるで失地回復の想いを一身に盛り込んだかのような気合いの入り方だ。ただし、価格は128万1000円から161万7000円までと小型車であるベルタのそれとラップ。三菱では、「これまでの軽自動車にはない高い付加価値をプラスしているので、ユーザーには十分納得してもらえるはず」と勝算を掲げるが…。
やはり“ショーカー・ルック”のインテリアも、既存の軽自動車にまつわる概念を打ち破る仕上がり。2トーンカラーなどでそれなりにおしゃれ心を演じるベルタのそれも、アイのインテリアの何とも華やいだ雰囲気にはとても太刀打ち出来そうにない。
が、そんなアイの失点は、「どうしてココで手を抜いた!」というポイントが散見出来てしまうところ。たとえば、今や小型車では当たり前のシートベルトのショルダー・ピボットの高さ調整機構やルームミラーの防眩機構が省かれていたり、ステアリング・コラムにチルト機構が付いていなかったり。どうせ「価格では勝負をしない軽自動車」を謳うならば、あと製造原価で1万円を使ってでも本当に小型車に見劣りをしない基本装備を奢って貰いたかったのに。
ボディの前後目一杯にタイヤを配した結果の、2550mmというホイールベースは奇しくもベルタのそれと同寸。一方で、軽規格の枠によって制限されるボディ全幅の1475mmという値が「ベルタのトレッドに相当」という関係。こうして、フットプリントが妙に“縦長”となってしまうバランスの悪さは致し方ないところか。
しかし走りの質感は本当に高い。しなやかでフラット感の高いフットワークはベルタよりも上質感があるし、最終段階では敢えてアンダーステアに躾けて安定性を確保している傾向は感じるものの、ハンドリングの自在度も期待以上。ちなみにアイの場合、より安定して優れたハンドリング感覚を味わわせてくれるのは4WDモデルのほう。もっとも、それではこちらを選ぼうとなるとさらに価格が上乗せになってしまうのが悩ましいが。
(文=河村康彦/写真=広報写真/2006年4月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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