トヨタ・ベルタ1.3X“Sパッケージ”(FF/CVT)/1.0X(FF/CVT)【試乗速報】
名前とコンセプトで心機一転 2005.12.08 試乗記 トヨタ・ベルタ1.3X“Sパッケージ”(FF/CVT)/1.0X(FF/CVT) ……168万5250円/138万6000円 2005年11月28日、「ヴィッツ」の派生4ドアバージョン「プラッツ」が名を改め新型「ベルタ」として生まれ変わった。プラッツとの違いとは?雪積もる河口湖で試乗した。富士山のようなシルエットに
トヨタ・ベルタの試乗会は、オキテ破りだった。12月だというのに、河口湖で行われたからだ。会場周辺は前日の雪で銀世界。この時期になぜまたこの場所で?と思ったが、試乗のあとデザイナーの口から出た言葉で納得した。
「富士山のようなシルエットのセダンを作りたかったんです」
そう語る彼の背後には、雪をいただく霊峰がそびえていた。
ベルタはプラッツの後継車だ。名前を変えたのは、プラッツの人気がいまひとつだったので心機一転、という気持ちを込めたためもあるようだが、もうひとつ、コンセプトが違うことも理由になっているらしい。
プラッツはホイールベースはおろか、前後のドアまで旧型ヴィッツと共通だった。そのためデザインは3ボックスの4ドアセダンとしては、ちょっとヘンだった。でもベルタは違う。アウターパネルはヴィッツとは別物。全高は60ミリ低め、ホイールベースまで90ミリ伸ばしている。その結果、均整のとれたプロポーションを手にした。前後のウィンドウをゆったり傾けた、伸びやかなフォルム。それを「富士山のようなシルエット」といったのだ。
内側にはヴィッツの面影が
すべてが新開発というわけではない。エクステリアではボンネットの盛り上がりやサイドウィンドウの切り方、インテリアでは4ドアセダンとしては珍しいセンターメーターの採用などに、ヴィッツの面影が残る。内側は共通部分が多いのだろう。スカットルの高さもヴィッツに近く、それに対してルーフは低められているから、ウインドスクリーンの丈が短く感じる。
ベルタがプラッツと違うのは、小さくても上質なセダンをめざしたこと。フジヤマ・シルエットもそのためだが、作りのよさも目につく。オーディオやエアコンのダイヤルは適度な重みを伝えてくるし、ルーフサイドのアシストグリップはダンパーつき。でも475リッター!もの容量を誇るトランクの奥は、木の板でフタがしてあったりする。見えない部分は徹底的にコストダウン。さすがトヨタだ。
シートは前後ともやさしい座り心地で、1時間の試乗では心地よさだけが印象に残った。座面がやや短い以外は、サイズも角度もあまり不満を抱かせないリアシートは、身長170センチの自分が前後に座った場合、ひざの前には約10センチの空間が残る。センタートンネルがないのも好印象だ。
エンジンは1リッターと1.3リッターのみに
エンジンは1リッター3気筒と1.3リッター4気筒。トランスミッションは両方ともCVTだ。最初に乗った1リッターは、信号待ちでは振動が気になるものの、走り出してしまえば年明けに乗ったヴィッツよりなめらかで、3シリンダーらしい低回転の力強いトルク感が頼もしい。音はあきらかに4気筒とは違うが、それを納得できる自分は、これでじゅうぶんだと思った。
対する1.3リッターは、街中に限れば1リッターと加速の勢いがあまり変わらない。こちらの低回転のトルクはいまひとつで、追い越し加速ではCVTゆえの回転上昇が気になり、そのぶんエンジン音が耳につく。プラッツのように、4気筒は1.5リッターも用意したほうが性格づけが明確になったのではないか。
乗り心地もシートと同じように、マイルド。剛性感のあるボディが路面からの入力をしっかり受け止め、スプリングとダンパーがそれを丸めてくれる。このクラスの国産車ではかなりマトモだ。リアシートはフロントに比べるとショックがややダイレクトに伝わるが、それでもやすらぎを感じる。ただしこれは1リッターの印象で、1.3リッターは少し硬めになる。
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安物感はない、けれど……
最初に書いたような道路状況だったので、ハンドリングをしっかりチェックすることはできなかったが、ドライ路面ではフロント/リアともに安定したグリップを示してくれた。アクセルのオン/オフによる挙動変化は小さく、動きはゆったりしていて、こちらも安心材料になった。
ベルタにはプラッツのような安物感がなかった。エクステリア、インテリア、シート、乗り心地と、このクラスの国産車としてはかなり上質な仕上がりだった。これを1リッターで走らせるのは効率的だと思ったが、価格を見てちょっと考えを変えた。ベーシックモデルでも130万円を越えるのだ。
さすがのトヨタも、うまい話はそうそう作り出せないようだが、安かろう悪かろうからの脱却を図ろうという姿勢は評価したい。このクラスの4ドアセダンは、年齢層がかなり高くなるはず。そういう人たちが、980円の革靴のようなクルマで満足してほしくない。ベテランドライバーだからこそ、いいクルマに乗ってほしいからだ。
(文=森口将之/写真=高橋信宏/2005年12月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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