ダイハツ・ムーヴ カスタムX FF(4AT)【ブリーフテスト】
ダイハツ・ムーヴ カスタムX FF(AT) 2002.12.21 試乗記 ……121.4万円 総合評価……★★★高められた洗練度
国際基準でみるなら、ボディサイズやエンジンの排気量に制限があるという点で、軽自動車は特殊な存在である。だが、混雑の多い東京の都心はもちろん、街なかで使うかぎりは0.66リッターという排気量は気にならず、よくできたクルマである。特に背の高いワンボックスタイプの軽自動車は、小さいながら使い勝手のよさが光る。
「ムーヴ カスタムX」も、その例に漏れない。絶対的にエンジンは非力だし、高回転までまわした時の音質も気持ちよくない。しかし、高速道路をひたすら駆け抜けるなんていう状況はともかく、街なかをちょこまか走りまわるには、充分以上の性能を備える。大人4人がきちんと座れ、ときには大柄な荷物を積み込めるだけの室内空間も魅力のひとつ。“シティラナバウト”として割り切ってしまえば、こんなに便利な移動手段はない。しかも、新型ムーブはクルマ全体の洗練度が高められたおかげで、貧乏ったらしくないのがイイ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ダイハツの軽セミトールワゴン。現行モデルは、2002年10月15日にフルモデルチェンジを行った3代目で、プラットフォームが一新された。ボディサイズは軽自動車規格イッパイ。ホイールベースを従来比+30mmの2390mmに延長。ドア内側の形状を見直すなどして、幅で80mm、前後乗員間隔が105mm長い、広い室内がウリ。加えて、スライド量を250mmに拡大した後席や、ワンタッチで後席を折り畳める「ワンモーション荷室フラット」など、使い勝手の向上が図られた。ムーヴは、コンサバティブな「ムーヴ」と、スポーティな外観をもつ「ムーヴ カスタム」の2種類がラインナップする。エンジンは、0.66リッターの直3NA(自然吸気/58ps、6.5kgm)とターボ(64ps、10.5kgm)。カスタムには、それらに加え、「軽」で唯一の4気筒ターボ(64ps、10kgm)もラインナップされる。トランスミッションは、コラム式4段ATをメインに、フロアシフトの5MT、CVTが用意される。FF(前輪駆動)のほか、4WDも設定される。
(グレード概要)
「ムーヴ カスタム」のグレードは、NA仕様が「L」と「X」、3気筒ターボの「R」、そして、軽唯一の4気筒ツインカムターボを積む「RS」と「RSリミテッド」の5種類。「X」は中核グレードで、エンジンは0.66リッター直3DOHC12バルブ(58ps、6.5kgm)。トランスミッションはコラム式4段AT、またはCVT(無段変速機)が組み合わされ、4WD車は5段MTも選べる。ちなみに、AT車のフロントシートはベンチシートだが、CVT&MT仕様はシフトノブがセンタートンネル上に設置されるため、セパレートシートが装着される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
運転席についてまず驚かされたのは、インストルメントパネル全体の質感が向上したことだ。素材にプラスチックを使用することに変わりはないが、シボの入れ方やパネル同士の繋ぎ目をみると、従来モデルに較べて格段のレベルアップを遂げたのが分かる。タコメーターがなく、スピードメーターがデンと構えただけのメーターナセルはそっけないともいえるが、個人的には潔くシンプルで好ましい。
装備はかなり充実している。オートエアコン、MD/CD付きのFM/AMオーディオはもちろんのこと、いまや定番アイテムのカップホルダー等々、ひと通りのモノは揃っていて不満ない。安全装備も、前席エアバッグは当然ながら、サイドカーテンエアバッグがオプション設定される。安心感に包まれる気分だ。
(前席)……★★★
なにより嬉しいのは、着座位置が高めなこと。当然視界がよいのに加え、乗降性に優れる。シートのクッションは平板で、硬すぎず柔らかすぎない。いわゆるベンチシートでバックレストも深くはないので、体のサポートは期待しないほうがいい。山坂を飛ばしたい人には歓迎されないだろうが、街なかで使うにはこれで文句ない。
(後席)……★★★★
ライバル車にもみられる便利な後席スライド機能だが、先鞭をつけたのは実はムーヴである。前後のスライド量は250mmあり、一番後ろまでシートを下げたときの足元の広さは大したものだ。大人4人が快適に移動できる空間が確保されていて、狭苦しさとは無縁の世界だ。シートバックに、リクライニング機構が備わるのも美点。ただし長距離はあまり得意じゃなさそうだ。なぜなら、長く座るにはクッションが薄くて硬めだからだ。
(荷室)……★★★
上述したようにリアシートがスライドでき、さらに背もたれの傾きを変えられることで、荷室スペースは変幻自在である。乗員数や荷物の量に応じて、シートをアレンジできるのがありがたい。加えて、シートバックを前に倒すだけの簡単な操作で荷室全体がフラットになる、「ワンモーション荷室フラット」機構も便利だ。フォールディング式と違うので床面は高くなるが、もともと天井の高いクルマだから、荷室の天地方向の余裕は申し分ない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
自然吸気仕様で、スペック上は58psを発する0.66リッター直列3気筒DOHCエンジンは、冷静に評価するならたいした性能ではない。トルクがたっぷりあるわけではないから、どうしてもまわしてやらないと、望むだけの力を発揮してくれないのだ。まわせばエンジン音がうるさくなり、このあたりに“軽自動車の限界”を見る思いがする。最初から「こんなもの」と考えている人には問題ないだろうが、そうでない向きにはトルクがあり、おかげで多少静かなターボ仕様を薦めたい。
テスト車のトランスミッションは4段AT。ラインナップにあるCVTほどではないにせよ、変速はスムーズである。ステアリングコラムから生える、ガングリップ式セレクターの操作性も悪くない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
サスペンションは、かなりソフトなセッティングだ。だから乗り心地はいい。しかも低速から高速に至るまでそこそこフラットで、不快な揺れとは無縁である。ただし、高速でのレーンチェンジは、柔らかな足まわりがマイナス要素になる。そのうえスロー(ロック・トゥ・ロックは約3.4回転)なステアリングは、駐車する際の微低速域ではたしかに軽くてラクだが、中高速では心もとない操舵感触である。少なくとも、飛ばして気持ちいい性格のクルマではない。いうまでもなく、街なかでの使用を主体とした実用車だ。
(写真=中里慎一郎)
【テストデータ】
報告者:阪和明(CG編集局長)
テスト日:2002年10月30日から11月1日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:1165km
タイヤ:(前)155/65R14 75S(後)同じ(いずれもSINCREA SN-816)
オプション装備:跳ね上げ式バックドア(1.5万円)/ディープパープルクリスタルメタリック塗装(2.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(3):山岳路(1)
テスト距離:99.8km
使用燃料:11.0リッター
参考燃費:9.1km/リッター

阪 和明
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