ランチアのオーナーズミーティング「ランチア・ランチ 2014」
2014.10.29 画像・写真2014年10月26日、静岡県裾野市にある帝人富士教育研修所で「ランチア・ランチ 2014」が開かれた。このイベントはランチア本社の公認を受けた「ランチア・クラブ・ジャパン」の総会として、毎年開催されているオーナーズミーティングである。つまりは恒例のイベントなのだが、ここ数年は往年のランチアのワークスドライバーであるミキ・ビアシオンやサンドロ・ムナーリを招聘(しょうへい)するといった「走りモード」のときは大磯ロングビーチ、車両展示中心の「まったりモード」のときは、メタセコイアの並木道が美しい、緑に囲まれた帝人富士教育研修所といった具合に、企画によって会場を使い分けている。今回は後者で、1984年に登場したフラッグシップサルーンの初代「テーマ」が、生誕30周年を迎えたことを祝して「ランチア・テーマ・オーナーズクラブ」との共催となった。まさに「テーマはテーマ」ということで、集まった25台のテーマをはじめ100台以上の新旧ランチアが並んだ会場から、リポーターの印象に残ったモデルとシーンを紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)

メタセコイアの並木道を隊列を組んで入場する、今回のテーマカーである25台の「テーマ」。ティーポ4プロジェクトの名のもとに「フィアット・クロマ」「アルファ・ロメオ164」「サーブ9000」と共同開発され、1984年にデビューしたランチアのフラッグシップサルーンである。
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メタセコイアの並木道を隊列を組んで入場する、今回のテーマカーである25台の「テーマ」。ティーポ4プロジェクトの名のもとに「フィアット・クロマ」「アルファ・ロメオ164」「サーブ9000」と共同開発され、1984年にデビューしたランチアのフラッグシップサルーンである。
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1984年にデビューした初期型(フェイズ1)の「テーマi.e.ターボ」。ジウジアーロ率いるイタルデザインの手になるシンプルながらシックなボディーに、166psを発生する2リッター直4DOHCターボエンジンを搭載。このほかエンジンは同2リッターの自然吸気(NA)およびPRV(プジョー・ルノー・ボルボ)製の2.8リッターV6SOHCが用意された。
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1986年に追加された「テーマ8.32」。テーマのボディーに「フェラーリ308GTBクアトロバルボーレ」用の3リッターV8DOHC32バルブエンジンを移植したスーパーサルーン。最高速度240km/hをうたう当時世界最速のFFサルーンで、ドライバーの意思で作動できるリアスポイラーをトランクリッドに内蔵していた。この個体を含め、8.32は11台が参加した。
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“LANCIA by Ferrari”の文字が光る「テーマ8.32」のエンジン。「フェラーリ308クアトロバルボーレ」では180度だったクランクは一般的な90度に変えられ、吸排気系やカムプロファイルも変更、最高出力は240psから215psにデチューンされていた。
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「テーマ8.32」のインテリア。現在では多くのメーカーの高級モデルの革内装を引き受けているポルトローナ・フラウが、初めて手がけたクルマがこの8.32だった。ちなみにメータークラスター上のカバーは、紫外線によるレザーの縮み対策としてオーナーが作ってかぶせたものである。
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1988年にマイナーチェンジしたフェイズ2の「テーマi.e.16V」。IDEAの手でマスクを中心にフェイスリフトされ、2リッター直4エンジンをそれまでの8バルブから16バルブに変更。この個体は147psを発生するNAエンジン搭載モデルで、オーナーが92年に新車で購入して以来愛用しているワンオーナー車という。
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1992年にはランチア社内で再びフェイスリフトされたフェイズ3が登場。8.32がラインナップから外され、上位グレードにはPRVに代わってアルファ・ロメオ製の3リッターSOHCV6エンジンが搭載された。これはそのV6を積んだ「テーマ・ステーションワゴンV6」。リスタイルからボディー製造までピニンファリーナが担当したワゴンはフェイズ1時代の86年に追加されていたが、日本に正規輸入されたのはフェイズ3のみだった。
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生誕30周年を記念してテーマ・オーナーズクラブが製作したフェイスタオル。ほかにステッカーも作られた。
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初代テーマの後を受けた「カッパ」を経て2001年に登場したフラッグシップサルーンの「テージス」。ランチアのチェントロスティーレ(デザインセンター)の手になるクラシックなディテールを持つボディーに、アルファ・ロメオ製の3リッターV6DOHCなどのエンジンを搭載する。今回はなんと6台も参加していた。
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25台のテーマをはじめ、100台以上のランチアが集まった会場風景。
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「デドラ i.e.ターボ」。初代「デルタ」のサルーン版である「プリズマ」の後継車として1989年に登場したデドラ。「フィアット・テムプラ」や「アルファ・ロメオ155」とプラットフォームを共用するモデルで、スタイリングはIDEAの手になる。「i.e.ターボ」は2リッターDOHC16バルブのターボユニットを積んだトップグレード。
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「リブラ・ステーションワゴン」。1999年に登場した前出の「デドラ」の後継モデルが「リブラ」で、フロアユニットは「アルファ・ロメオ156」と共用する。スタイリングを手がけたのは元ピニンファリーナのエンリコ・フミアが率いていたランチアのチェントロスティーレである。
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ぐっと時代はさかのぼって、1959年にデビューした「フラミニア・スパイダー」。57年に登場したフラッグシップサルーンであるフラミニアのそれを短縮したシャシーに、カロッツェリア・トゥリングが2座オープンボディーを架装。当初は2.5リッター、後に2.8リッターのV6OHVエンジンを積んだ。
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「フラミニア・スポルト」。前出のスパイダーと同じシャシーにザガート製のアルミボディーを架装したモデルで、1959年に登場。この個体は63年式で、148psを発生する2.8リッターV6OHVエンジンを積む。
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「アルデア・トラック」。1939年から53年まで作られたアルデアは903ccのV4エンジンを積んだモデルで、セダンのほかにこのトラックとバンがあったという。1982年から98年までランチアの輸入代理店を務め、その後も長らくランチアを扱っていたガレーヂ伊太利屋のデモカーである。
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「フルヴィア・ベルリーナ」。1963年にデビューしたフルヴィアの基本形だが、今となってはクーペより希少な存在かもしれない。この個体は67年式で、1.2リッターのV4エンジンで前輪を駆動する。
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ランチアのベルリーナ(サルーン)は、基本的にエクステリアは地味というかオーソドックスだが、インテリアにはイタリアらしい斬新なデザインを採用することがある。「フルヴィア・ベルリーナ」もそんな一台で、インパネ中央の速度計は目盛りを記したボビンが回転する方式。4段MTはコラムシフトだ。
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国際ラリーで大活躍し、「ラリーのランチア」の評判を築いた「フルヴィア・ラリーHF」。1965年に登場した「フルヴィア・クーペ」をスープアップしたモデルで、66年のデビュー当初は1.2リッターV4エンジンを搭載。1.3リッターを経て、69年には1.6リッターへと発展した。この個体は「フルヴィア・ラリー1.6HF」である。
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前車軸にオーバーハングされた「フルヴィア・ラリー1.6HF」のエンジン。一見したところ直4DOHCかと思うが、13度という狭角のV4SOHC。ツインチョークのソレックスキャブレターを2基備え、最高出力114psを発生する。
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1967年に追加された「フルヴィア・スポルト」。フルヴィア・クーペのシャシーにザガート製のテールゲートを持つアルミボディーを架装したモデル。この個体はマイナーチェンジを受けた70年以降のモデルで、バンパーが外されている。
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毎回、車種別ではもっとも参加台数が多い「デルタHFインテグラーレ」だが、そのなかに1台だけ参加していた“インテグラーレ”と名乗る前、1986年から87年にかけて作られた「デルタHF 4WD」。HFインテグラーレとは異なりフェンダーはブリスター化されておらず、ノーマルのデルタと車幅は同じである。
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8バルブエンジンを積んだ1988年デビューの初期型から16V、95年に出た最終限定車の「コレツィオーネ」まで、ズラリと並んだ「デルタHFインテグラーレ」。
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ワークスマシンを模したマルティニカラーほか、並木道をパレード走行する「デルタHFインテグラーレ」。
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「デルタS4ストラダーレ」。「プジョー205ターボ16」からWRC王座を奪還すべく、1985年にデビューしたグループBマシンの公道仕様。ターボとスーパーチャージャーを備えた1.8リッター直4DOHCエンジンをミドシップし、駆動方式はフルタイム4WD。翌86年のWRCでは3勝を挙げたが、第5戦ツールド・コルスの事故でエースドライバーのトイボネンとコドライバーが死亡し、王座奪還ならず。この死亡事故を契機にモンスター揃いのグループBの終了が決定、翌87年からはグループAに移行した。
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「デルタS4ストラダーレ」のコックピット。ホモロゲーションモデルとはいえ、ダッシュ下面やドア内張、シート(運転席は交換されているが)はアルカンターラ張りでオシャレ。目盛りが濃いオレンジで刻まれたメーターパネルもカッコイイ。
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「フィアットX1/9」の上級車種として開発されたが、販売政策上ランチア・ブランドから発売されたミドシップスポーツである「モンテカルロ」。1975年のデビュー当初は「ベータ・モンテカルロ」を名乗っていたが、80年以降は単に「モンテカルロ」と名乗った。
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横開きのエンジンフードがシャレている「モンテカルロ」。 横置きされるエンジンは2リッター直4DOHC、シングルキャブ仕様で最高出力120psと、見た目から想像されるほどチューンは高くない。
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「ラリー037ストラダーレ」。1982年からグループB規定のWRCに投入され、翌83年にメイクスタイトルを獲得したマシンの公道仕様。「モンテカルロ」のセンターセクションを流用したジャンパオロ・ダラーラ設計のシャシーに、スーパーチャージャーで過給した2リッター直4DOHC16バルブエンジンをミドシップ。スタイリングおよびFRP製のボディー製造はピニンファリーナが手がけている。
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「ラリー037ストラダーレ」の後ろ姿。ちなみにWRCにおけるこれの後継モデルが、前出の4WD化された「デルタS4」となる。
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参加車両なかで唯一の現役ラインナップである3代目「デルタ」が6台そろっていた(この写真では5台だが)。2008年にデビューした当初は、このモデルからランチアの正規輸入が再開されるという話もあったが、ご存じのとおり実現しなかった。全長約4.5m、全幅1.8m近いボディーに1.4リッターのターボエンジンの組み合わせは、ダウンサイジングターボの先駆けだったといえる。