人とくるまのテクノロジー展2016
2016.05.27 画像・写真2016年5月25日~27日、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、日本最大の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2016 横浜」が開かれた。自動車メーカーをはじめ、部品メーカー、材料メーカー、計測・解析機器メーカーなどが最新の自動車技術を展示するこの技術展。1992年に始まり、25回目となる今回の出展者数は538社、1155ブースを数え、過去最大規模での開催となった。会場を埋め尽くした環境関連を中心とする展示のなかから、リポーターの目に留まったものを紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)
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1/21「我々をワクワク、ドキドキさせた技術の今昔」と題された特別企画展示コーナーに並べられた、エポックメイキングな7台の日本車。手前から時代をさかのぼる形で「トヨタ・ミライ」(2014、世界初の量産FCV)、「トヨタ・プリウス」(1997、世界初の量産HV)、「日産セドリック ターボ」(1979、国産初の市販ターボ車)、「トヨタ・スポーツ800」(1965、空力的な軽量ボディー)、そして「たま電気自動車」(1947、戦後混乱期のEV)。
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2/211947年「たま電気自動車」。戦前・戦中の立川飛行機から派生し、後にプリンスに発展する東京電気自動車が開発したEV。国産EV自体は戦前から存在したが、これは戦後のガソリンが乏しく、いっぽうでは産業が破壊されたため大口電力需要者もおらず、電力が余剰気味だった時代に作られた。日産が保存していた個体を、2010年の「リーフ」発表に合わせてフルレストア。走行も可能となった。
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3/21マツダが発表した新技術「G-ベクタリングコントロール」。簡単に言うと、コーナリングや車線変更の際に、ステアリングと連携してエンジンのトルクを制御することで荷重移動を最適化し、操縦安定性を向上させる機構。近い将来、順を追って全車種に標準搭載することになるという。
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4/21スズキが展示していた、EV走行も可能な「フルハイブリッド」のベアシャシー。昨2015年の東京モーターショーにも参考出品されていたもので、直列4気筒のデュアルジェットエンジンとモーター、そしてAGS(オートギヤシフト)を組み合わせたハイブリッドシステムを搭載している。
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5/21スズキが展示していた「E08A型」直列2気筒793ccディーゼルターボエンジン。インドで販売している小型車用として昨年発表されたもので、スペックはDOHC 8バルブ、圧縮比15.1、最高出力47ps(35kW)/3500rpm、最大トルク12.7kgm(125Nm)/2000rpm。
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6/21新型「トヨタ・プリウス」のカットモデル。こうして見ると、新型リチウムイオンバッテリーのコンパクトさがよくわかる。
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7/21同じく「トヨタ・プリウス」のE-Four車のリアアクスル周辺。ドライブトレインがコンパクトに収まっており、荷室スペースがFF車と同レベルという主張が納得できる。
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8/21「ホンダ・クラリティ フューエルセル」が、四輪では世界初採用したアルミ中空ダイキャスト・フロントサブフレーム。従来、複数の部材を溶接して接合していたサブフレームを、一体中空成形のアルミダイキャスト製とすることで、従来比20%の大幅な計量化を達成。同時に高剛性化も両立したという。
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9/21電動車両から、一般家庭用電気に変換・出力する、ホンダの可搬型外部給電器「パワー・エクスポーター9000」。災害時などの非常用電源として、また平常時でも屋外イベントなどの電源として使用可能。ホンダ車のみならず、外部給電機能を備えた他社の電動車両との接続互換性を確保しており、「クラリティ フューエルセル」と組み合わせた場合、一般家庭のおよそ7日分の電力供給が可能という。
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10/21炭素繊維複合材料のトップメーカーである東レが出展していた引き抜き成型カーボンCチャンネル。トラックのフレームに使われるスチール製の部材をCFRP(炭素繊維強化プラスチック)に置き換えたもので、シャシー重量を60~70%低減できるという。
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11/21世界トップクラスのダイカストメーカーであるリョービが出展していた、超薄肉・軽量化を果たしたトルクコンバーター・ハウジングの試作品(左)。量産品(右)の肉厚3.7mm、重量6446gに対して、肉厚1.5mm、重量2888gと半分以下。あくまで「この薄さまで成型は可能」という、製品テスト以前のサンプルとのことだが。
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12/21トヨタ車体が出展していた、国産間伐材を原材料に用いたTABWD(タブウッド)と呼ばれる射出材料。「アルファード/ヴェルファイア」のハーネスプロテクターや「エスティマ」のフォグランプ取り付け部品に使われているという。
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13/21マクラーレンの量産スポーツカー用エンジンなども手がけているエンジニリアリング会社のリカルドが出展していた超軽量リアドライブユニット(ディファレンシャル)。特許の関係で中身は公開できないが、画期的な機構を採用しており、従来品と比べ25%の軽量化を達成しているという。
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14/21ボルグワーナー(旧KKK)、ハネウェル(旧ギャレット)、IHIと並ぶターボチャージャーのトップメーカーである三菱重工のブースから。左は3.8リッターガソリン用ツインターボ、右が3.5リッターガソリン用ツインターボ。ちなみに左は英国製スポーツカー、右は国産スポーツカー用という。
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15/21HKSが出展していた電動スーパーチャージャーの試作品。ターボエンジンの立ち上がりのターボラグの改善、燃費改善を狙ったアシスト専用スーパーチャージャー。いわゆるツインチャージャーになるわけだが、電動式なので機械式スーパーチャージャーのような動力損失がない。
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16/21ベアリングのトップメーカーであるNTNが出展していたリア用軽量ドライブシャフト。薄肉タイプの中空シャフトに軽量ジョイント、コンパクトブーツを組み合わせたアッセンブリーで、従来品と比べ重量を30%軽減。
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17/21藤倉ゴム工業が出展していたCFRP製トルク伝達軸。ドライブシャフトを想定した試作品で、一番上がアッセンブリー。上から2番目がCFRP製シャフト単体で、3番目の一般的な鋼鉄製と比べ、持った感触では半分以下の重さだった。
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18/21三菱電機が出展していた、各種ディスプレイを使った情報伝達システムのデモンストレーション。保安基準改定により実現化が見込まれる、カメラとモニターを使ったリアビューミラーの代わりになるもの、センターコンソールにあるタッチパネルの操作状況を、視線を動かさずに視認できるヘッドアップディスプレイなどが搭載されていた。
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19/21バイクから飛行機用まで、幅広い電動パワーユニットを手がける英国のSAIETTA(サイエッタ)の電動モーターサイクル。モーターとバッテリーをはじめすべて自社開発した、バッテリーを構造材(フレーム)として使う画期的な設計で、レーシング仕様では最高速度270km/h以上に達するという。脇に立つ同社の創立者でCEOであるローレンス・マラッツィ氏は、デザイナーとしてレイトンハウス、ヴェンチュリー・ラルースやフォンドメタルといったF1チームを渡り歩いた経歴を持つそうだ。
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20/21周辺の一般道におけるメーカー各社の最新技術搭載車、最新スポーツカーおよび超小型モビリティの試乗も行われた。これはトヨタ車体の「COMS」。
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21/21パシフィコ横浜の1F展示ホールをすべて使った会場風景。