モーターサイクルショー「EICMA 2018」の会場から
2018.11.27 画像・写真毎年11月上旬、イタリア・ミラノで開催される世界最大級のモーターサイクルショー「EICMA(エイクマ)」。多数の二輪車メーカーと二輪用品メーカーが、翌年に(早いものでは発表と同時に)リリースする最新モデルを披露することで知られ、世界中のバイクファンがここから発信される情報に注目している。熱気あふれる会場から、イベントの様子を写真で紹介する。(文と写真=河野正士)
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1/42地元イタリアでの開催ということもあり、EICMAの顔ともいえるドゥカティ。今年のトピックは市販車ベースのマシンで争われるレース、スーパーバイク世界選手権に参戦するホモロゲーションモデル「パニガーレV4R」の発表だ。2017年にドゥカティが市販量産車として初めてV型4気筒エンジンを採用した「パニガーレV4」をベースに、スーパーバイクのレギュレーションに合わせた排気量998ccのエンジンを搭載している。
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2/42来季(2019年シーズン)のスーパーバイク世界選手権に向け、テストを重ねている「パニガーレV4R」の競技用モデル。各部のパーツは継ぎはぎだらけで、フレームなどの溶接痕も生々しいまさにテスト車だ。本来なら一般ユーザーの目に触れることのない車両だが、ドゥカティはあえて展示し、レースへの意気込みを表現した。
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3/42EICMAの開催前に発表された、イタリアの電動アシスト自転車メーカー「Thok Ebikes」とのコラボレーションによって生まれたマウンテンバイク「ドゥカティMIG-RRエンデューロ」。バッテリーはフレームのダウンチューブ前方にセット。モーターにはシマノ製「Shimano Step E8000」を使用する。2018年のEICMAでは、数多くの電動アシスト付き自転車メーカーが、“電動モーターサイクルブランド”のいちカテゴリーとして出展していた。
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4/42ドゥカティの中で、最も販売台数が多いモデルファミリーといえば「ムルティストラーダ」である。今年は排気量が小さな950ccモデルをベースに、電子制御サスペンションを搭載した「ムルティストラーダ950S」が新たにラインナップに加えられた。オプションでスポークホイールを選ぶことができる。
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5/42イタリアで高い人気を誇るヤマハは、EICMAの開催前に別会場で行ったプレスカンファレンスにて新型車「テネレ700」を発表。2年前のEICMAからコンセプトモデルを発表し続け、満を持しての市販モデルの発表となった。エンジンには「MT-07」と同じ、排気量689ccの水冷並列2気筒を搭載。そのスタイリングや足まわりのスペックから、オフロードへ重心を置いたモデルといえる。
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6/42「ヤマハMT-07」をベースに、クラシカルな外観デザインが採用された「XSR700」。その車体をアレンジし、スクランブラースタイルとしたのが、この「XSR700 XTribute(エックストリビュート)」である。ロングセラーモデル「SR」の前身であり、パリダカールラリーの初回大会で優勝した「XT500」の“トリビュート”だ。
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7/42フロント2輪でありながら、車体を傾けてコーナリングすることで二輪のオートバイと変わらぬ軽快感と、二輪にはない安定感を生み出すヤマハの「LMW(リーニング・マルチ・ホイール)テクノロジー」。そのLMWを用いた最新のコンセプトモデルが「3CT」である。排気量300ccのスクーターで、停車時にLMW機構をロックして自立することができる「ティルトロック・アシスト」機構を採用している。
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8/42ヤマハのスーパースポーツモデルをベースとした台数限定のレース専用車「YZF-R1 GYTR」。「YZF-R1」が今年デビュー20周年を迎えた記念として、ヤマハのファクトリーチームは、鈴鹿8時間耐久ロードレースに初代「R1」のカラーリングを施したマシンで参戦。見事優勝を果たした。YZF-R1 GYTRは、そのカラーリングを踏襲するとともに、世界耐久選手権を戦うヤマハの有力チーム「GYTR」が特別にしつらえたパーツを、GYTRのファクトリーで組み上げてデリバリーするスペシャルマシンである。
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9/42昨年(2017年)のEICMAで発表され、大いに話題となった3輪のモーターサイクル「ヤマハ・ナイケン」に、ツーリング仕様車の「ナイケンGT」が加わった。市販化の見込みがない“未来のクルマ”的なコンセプトモデルには一切興味を示さない欧州のバイクファンも、ナイケンの市場投入が発表された昨年は大いに驚き、展示車両の前は人垣が絶えなかった。ヤマハはそのインパクトをそのままに、矢継ぎ早にバリエーションモデルを発表した。
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10/422018年10月に開催されたドイツ・ケルンのモーターサイクルショー、INTERMOTで、トライアンフはスクランブラーモデルの「スクランブラー1200」を発表。オンロードとオフロードの両方に軸足を置いた「XC」と、オフロードに重心を置いた「XE」の2モデルを、このEICMAにも出展した。
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11/42同じく10月のINTERMOTで発表されたスズキの新型車「KATANA(カタナ)」。EICMAではそのブラックバージョンが発表された。新型KATANAはスポーツネイキッドモデル「GSX-S1000」をベースに、1981年にデビューした「GSX1100Sカタナ」のボディーデザインを新たな解釈で再構築した意匠が取り入れられている。
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12/42スズキのスーパースポーツモデル「GSX-R1000」を軽量化し、スペシャルパーツをセットしたサーキット専用車「GSX-R1000 RYUYO」。RYUYO=竜洋は、スズキが有する自社テストコースの通称で、スズキのさまざまなプロダクトはもちろん、MotoGPレーサーのテスト走行にも使用されている。また、過去にはそのテストコースを舞台にジャーナリスト向けの国際試乗会が開催されるなど、“RYUYO”は海外のスズキファンの間でも知られた存在なのだ。
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13/42BMWは、「シフトカム」と名付けた独自の可変バルブ機構付きエンジンを搭載した「R1250ST」(写真中央)と「R1250R」(写真左)を発表。これにより、先に発表した「R1250GS」(写真右)および「R1250RT」を含め、水冷フラットツインエンジンを搭載する“R”シリーズは、すべてシフトカム付きの新型エンジンとなった。
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14/42BMWでは、水冷並列4気筒エンジンを搭載するスーパースポーツモデル「S1000RR」も一新。エンジン、フレーム、ボディーデザインとすべてを従来モデルから変更しており、エンジンには“R”シリーズにも採用される独自の可変バルブ機構「シフトカム」を搭載した。また、2014年以降休止していた、市販車ベースのマシンで争われるスーパーバイク世界選手権でのワークス活動再開を宣言。2019年より、この新型S1000RRで選手権を戦う。
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15/42カワサキは並列4気筒エンジンを搭載したアドベンチャーモデルの新型「ヴェルシス1000」を披露。サスペンションメーカーのショーワと共同開発した、電子制御サスペンションシステムを初採用した上級モデル「ヴェルシス1000SE」も発表した。
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16/42スーパーチャージャーを搭載したスーパースポーツモデル「H2」をベースに、フルカウルや快適装備を採用してツーリングモデルに仕立てたカワサキの「H2 SX」。今回のショーでは、「ヴェルシス1000SE」と同じくショーワと共同開発した電子制御サスペンションシステムを搭載した「H2 SX SE+」が発表された。
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17/42カワサキブースには数多くのカスタムバイクも展示されていた。中でも注目を集めていたのが、スポーツネイキッドモデル「Z900」をベースに、1990年代の耐久レーサーをイメージしたカウルをセットアップしたこの車両だ。
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18/42ホンダが発表した「CB650R」。並列4気筒エンジンを搭載したネオクラシックスタイルの新型車だ。ホンダは昨年(2017年)、欧州で人気のスポーツネイキッドモデル「CB1000R」を一新するとともに、人気のネオクラシックエッセンスをトッピングした「CB300R」と「CB125R」も同時に発表し、新しいCBワールドを構築した。600ccカテゴリーは欧州市場の中型車にあたり、この「CB650R」はそのコアマーケットに投入される。
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19/422018年のパリモーターショーで発表された「NEO SPORT CAFE CONCEPT(ネオスポーツカフェコンセプト)」も、EICMAのホンダブースに展示されていた。ドイツのINTERMOTより若干早く開催されるパリモーターショー。かつては二輪界においても存在感を示していたが、近年の二輪メーカーはパリに重きを置いてこなかった。しかし、パリショーは二輪における存在感を取り戻すべく、最近になって活発な誘致活動を再開しているという。
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20/42並列2気筒エンジンを搭載した「ホンダCB500F」。2013年から累計で実に7万5000台も販売されている人気モデルだ。新型では新しいボディーデザインを採用。灯火系をすべてLEDに変更したほか、中回転域でのトルク特性を改善し、扱いやすさをさらに向上させた。
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21/42「CB500F」と同じ並列2気筒エンジンを搭載したホンダのアドベンチャーモデル「CB500X」。フロントに19インチホイールを装着し、前後のサスペンションストロークを伸ばすことで悪路での走破性を高めている。同時に細身のシートを採用することで足つき性も向上。専用のウインドスクリーンでウインドプロテクション効果も高められている。
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22/42「ホンダCRF450ラリーコンセプト」。EICMAの前に発表された、モトクロッサー「CRF450」の市販バージョンである「CRF450L」をベースにしたコンセプトモデルだ。デザインのモチーフはホンダファクトリーのダカールレーサー「CRF450ラリー」。大型の燃料タンク、高い位置にマウントされたデジタルディスプレイなど、ラリーレイドを強く意識したディテールとなっている。
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23/42ここ数年、イタリア・ローマにあるホンダR&DヨーロッパはEICMAのホンダブースで市販車をベースにしたデザインスタディーモデルを展示している。今年はホンダのネオクラシックモデル「CB125R」をベースとした、アドベンチャースタイルの「CB125X」(ホワイト)とモタードスタイルの「CB125M」(オレンジ)を発表した。
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24/42ハスクバーナのオンロードスポーツモデル「ヴィットピレン701」をベースにした「ヴィットピレン701エアロコンセプト」。昨年(2017年)もハスクバーナは、排気量373ccの単気筒ロードスポーツモデル「ヴィットピレン401」をベースにした同様のコンセプトモデル「ヴィットピレン401エアロコンセプト」を発表している。ハスクバーナはEICMAで発表したコンセプトモデルを次々に市販化していることから、この「ヴィットピレン701エアロコンセプト」の市販化も期待される。
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25/42ハスクバーナの2019年モデルにラインナップされる「スヴァルトピレン701」。スヴァルトピレンは「ヴィットピレン」と同じプラットフォームをベースにスクランブラースタイルに仕立てたモデルだったが、新しい701ではフラットトラッカースタイルを採用。排気量692ccの水冷単気筒エンジンを搭載する。
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26/42KTMの新型アドベンチャーモデル「790アドベンチャーR」。KTMの「790」シリーズは、新世代の並列2気筒エンジンを搭載するモデルファミリーである。まずは2016年にロードモデル「790デューク」のコンセプトが、次いで昨年(2017年)はその市販モデルが発表された。790アドベンチャーは昨年コンセプトモデルが発表され、今回はその市販車がお披露目となった。エンジンは790デュークと共通。この「アドベンチャーR」はフロントに21インチホイールを装着するなど、オフロード走行の比重を高めたディテールとなっている。
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27/42こちらは「KTM790アドベンチャー」。高いオンロード性能とオフロード性能を併せ持つモデルで、フロントの19インチホイールや、ややストロークの短い前後サスペンションがその特徴となっている。
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28/42ハーレーダビッドソン(以下HD)は、2014年の発表以来開発を続けていたEVモーターサイクル「ライブワイヤー」を2019年に市販化するとアナウンスしており、ここEICMAでついに市販バージョンを発表した。走行モードの切り替え機構は、HDがセットアップした4つのライディングモードに加え、ユーザーの好みを反映した3つのライディングモードの設定が可能。低重心化をかなえる車両骨格は初期型から改良を重ねたアルミダイキャストフレームで、前後にショーワ製サスペンションを採用している。
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29/42なんの前振りもなく、突然発表されたアプリリアのコンセプトモデル「RS660コンセプト」。アプリリアのスーパースポーツモデル「RSV4」のV型4気筒エンジンの、後ろ側2気筒を取り外したかのようなコンパクトな並列2気筒エンジンを、スリムでコンパクトなオリジナルフレームに搭載している。
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30/42アプリリアが発表した新型「トゥオーノV4ファクトリー」。スーパースポーツモデル「RSV4 RF」の基本コンポーネンツを使用しつつ、アップハンドルのネイキッドスポーツスタイルに仕立てたモデルで、エンジンはボアをわずかに広げ、排気量を999ccから1077ccとしている。
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31/42ロイヤルエンフィールド(以下RE)のブースに展示されたカスタムバイク。REは昨年(2017年)のEICMAで、650ccの並列2気筒エンジンを搭載した新型車として、スタンダードな「インターセプター650」とカフェスタイルの「コンチネンタルGT650」を発表。2018年のEICMAでは、その正式な市場導入と価格が発表された。この車両は、そのコンチネンタルGT650をベースに、台湾を拠点に世界的に活躍するカスタムファクトリー「ラフ・クラフト」が製作したマシンだ。
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32/42同じくロイヤルエンフィールド(以下RE)が発表したコンセプトモデル「KXコンセプト」。これはREが1930年代に発表したV型2気筒エンジン搭載の「KX」をモチーフにしている。V型2気筒エンジンも前後サスペンションシステムもフレームも新たに製作されたものだ。
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33/42これまでスクーターを中心にラインナップを拡大してきたプジョーは、先のINTERMOTでブランド名を「プジョー・モトシクル」へと変更。小排気量のモーターサイクル「P2xコンセプト」(奥が300cc、手前が125cc)を発表した。これらのモデルはEICMAの会場にも展示された。
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34/42ベスパは、EICMAにタイミングを合わせて欧州での販売をスタートさせる電動スクーター「エレットリカ」を展示。屋外エリアでは試乗イベントも開催されていた。2019年以降、アジアや北米でも販売を開始するという。
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35/42「MVアグスタ・スーパーベローチェ800」。MVアグスタがラインナップする、800cc並列3気筒エンジンを搭載するスーパースポーツ「F3 800」をベースに、専用デザインのフルカウルを装着したネオクラシックなモデルである。各部にレザー素材が使われ、クラシックとモダンの融合が図られている。
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36/42F1ドライバーのルイス・ハミルトンとMVアグスタがコラボレーションした「ブルターレ800RR LH」。
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37/422019年からスタートする、電動モーターサイクルによる世界選手権「Moto-e」。イタリアの電動モーターサイクルメーカーであるエネルジカ社のスーパースポーツモデル「エネルジカ・エゴ・コルサ」のワンメイクレースとなる。これがその車両だ。
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38/42ライディングウエアブランドのレブイットは、ワイヤとダイヤルでフィット感を調整する“BOAシステム”を使用した、新型の全天候型アドベンチャーブーツを発表した。
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39/42イギリスのヘルメットブランド、ヘドンはEICMAで最新カラーを展示。欧州では近年、クラシカルなスタイルのヘルメットが人気であり、ヘドンはそのトップブランド。2019年シーズンからBMWとのコラボレーションもスタートする。
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40/42日本のショーと同じく、EICMA会場でも各メーカーのコンパニオンは大人気。観客もコンパニオンもフレンドリーで、気さくに写真撮影に応じてくれる。
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41/42最も来場者が多いとされる土曜日の各ブースでは、有名ライダーやコメンテーターなどを招いてのトークショーや、プレゼント大会が開催され、いたるところで歓声が上がる。
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42/42ドゥカティの新型スーパースポーツモデル「パニガーレV4」のエンジンのカットモデル。可動式の模型で、バルブスプリングを持たないデスモドロミック機構がよく分かることから人垣が絶えなかった。ちなみにブース外からここまで辿り着くのに10分以上を要した。