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第536回:世界中のバイクメーカーが一堂に集結
巨大モーターサイクルショー「EICMA」の今とこれから

2018.11.27 エディターから一言
最も来場者が多い土曜・正午あたりのドゥカティブースの様子。地元イタリアのトップブランドであるドゥカティはEICMAで特に人気が高く、ブースは毎年、車両に近づくことが困難なほどの人であふれかえる。
最も来場者が多い土曜・正午あたりのドゥカティブースの様子。地元イタリアのトップブランドであるドゥカティはEICMAで特に人気が高く、ブースは毎年、車両に近づくことが困難なほどの人であふれかえる。拡大

イタリア・ミラノで開催される世界最大級のモーターサイクルショー「EICMA(エイクマ)」。あまたのメーカーがニューモデルを発表するイベントの様子を、様変わりする取材や情報配信のあり方とともに、会場からリポートする。

ドゥカティは毎年、EICMAのプレスデー前にミラノ市内の別会場でプレスカンファレンスを行う。また近年はその様子をライブ配信し、世界中のファンにその様子をいち早く伝えている。
ドゥカティは毎年、EICMAのプレスデー前にミラノ市内の別会場でプレスカンファレンスを行う。また近年はその様子をライブ配信し、世界中のファンにその様子をいち早く伝えている。拡大
今年最大のトピックは、市販車ベースのマシンで争われるスーパーバイク世界選手権用のホモロゲーションモデル「パニガーレV4R」の発表だ。ファクトリーチームのライダー、チャズ・デービスのライドインでお披露目されたV4Rは、EICMAの終了後、すでに実戦へ向けたテストが行われている。
今年最大のトピックは、市販車ベースのマシンで争われるスーパーバイク世界選手権用のホモロゲーションモデル「パニガーレV4R」の発表だ。ファクトリーチームのライダー、チャズ・デービスのライドインでお披露目されたV4Rは、EICMAの終了後、すでに実戦へ向けたテストが行われている。拡大
ドゥカティと同じく、EICMAの前に別会場でプレスカンファレンスを行うヤマハ。とくにイタリアでは人気が高く、自国ブランドのように感じているイタリア人のファンも多い。
ドゥカティと同じく、EICMAの前に別会場でプレスカンファレンスを行うヤマハ。とくにイタリアでは人気が高く、自国ブランドのように感じているイタリア人のファンも多い。拡大

1週間にわたって行われるバイクの祭典

2018年11月8日~11日、イタリア・ミラノ郊外にある巨大なエキシビション施設「Fiera Milano-Rho(フィエラ・ミラノ=ロー)」にて、世界最大級のモーターサイクルショー「EICMA 2018」が開催された。通称ミラノショーとも呼ばれるこのイベントは、正確には上記の日程の前に2日間のプレスデーがプラスされる。さらにはその前の2日間で、EICMAとは別の会場でプレスカンファレンスを行うメーカーまであり、実質的には11月4日から11日までがEICMAの開催期間といえる。

EICMAでは、翌年にリリースされる予定の新型車が各メーカーから発表される。早いものでは発表後すぐに翌年モデル(今回の場合だと2019年モデル)として発売され、その他の多くのモデルも、翌年の初めから春にかけて欧州でデリバリー開始となる。

それは欧州メーカーに限らず、日本メーカーも同じだ。EICMAでは主にグローバル市場で販売される世界戦略車が発表され、日本仕様を含め、仕向け地に合わせて排気量などがアレンジされたモデルについては、その後におのおのの市場でお披露目となる。ただし、かつての大排気量世界戦略車は「欧州/北米/豪州仕様車はフルパワー、自主規制によって日本仕様車は大幅にパワーダウンしている」というのが通例だったが、いまは世界共通の排出ガス規制の導入などにより、仕向け地による出力差はほとんどない。だからこそEICMAでの発表に、世界中の注目が集まるのである。

いまや世界最大のモーターサイクルショーに

実は欧州には、2つの大きなモーターサイクルショーが存在する。そのひとつがEICMAであり、もうひとつは2年に1度、ドイツ・ケルンで行われる「INTERMOT(インターモト)」だ。かつてEICMAとINTERMOTはともに2年に1度開催され、EICMAが奇数年、INTERMOTが偶数年の実施だった。しかし2006年よりEICMAは毎年開催に変更。それでもINTERMOTが開かれる偶数年は、先に行われるINTERMOTで多くのニューモデルが発表され、両者のパワーバランスは均衡が保たれていた(INTERMOTは10月初旬開催、EICMAは11月初旬開催)。しかしEICMAが毎年開催に踏みきってから10年以上が経過し、その規模や注目度が格段に向上。今年も両モーターサイクルショーが開催される偶数年であったが、多くのメーカーがEICMAに比重を置いた構成となっていた。

それにしても、EICMAの規模はちょっとすごい。6つのパビリオンに分かれた展示会場の総面積は28万平方メートル。幕張メッセ時代の東京モーターショーが約21万平方メートルなので、会場はそれよりもさらに広いのだ。それに加え、屋外のイベントスペースでもレースや試乗会など、さまざまなアクティビティーが行われている。近年、主催者は正確な来場者数を明らかにしていないが、最後に発表された2014年の来場者数は、プレスデーを含めた6日間で延べ62万人だった。それ以来、EICMAの開催規模が拡大していることを考えれば、少なく見積もっても60万人は維持していると考えられる。

モト・グッツィは、昨年(2017年)発表したアドベンチャーモデルコンセプトの市販版「V85TT」をINTERMOTで発表。EICMAにも展示し、好評を得た。エンジンは既存の「V9」系から発展させた850cc縦置きV型2気筒。専用開発のフレームにストロークの長い前後サスペンションを採用し、オフロードにおける走破性向上を目指している。
モト・グッツィは、昨年(2017年)発表したアドベンチャーモデルコンセプトの市販版「V85TT」をINTERMOTで発表。EICMAにも展示し、好評を得た。エンジンは既存の「V9」系から発展させた850cc縦置きV型2気筒。専用開発のフレームにストロークの長い前後サスペンションを採用し、オフロードにおける走破性向上を目指している。拡大
2018年のINTERMOTでフラットトラッカースタイルの新型車「FTR1200」を発表したインディアン。EICMAでは、そのFTR1200にアクセサリーパーツをセットアップした「スポーツ」「トラッカー」「ツアー」「ラリー」の各モデルを発表した。写真はサイドバッグやタンクバッグなどを装着したツアーコレクション。
2018年のINTERMOTでフラットトラッカースタイルの新型車「FTR1200」を発表したインディアン。EICMAでは、そのFTR1200にアクセサリーパーツをセットアップした「スポーツ」「トラッカー」「ツアー」「ラリー」の各モデルを発表した。写真はサイドバッグやタンクバッグなどを装着したツアーコレクション。拡大
土曜・昼過ぎのアプリリアブースの様子。並列2気筒エンジンを搭載したコンセプトモデル「RS660コンセプト」の周囲はご覧の通りだった。
土曜・昼過ぎのアプリリアブースの様子。並列2気筒エンジンを搭載したコンセプトモデル「RS660コンセプト」の周囲はご覧の通りだった。拡大

様変わりする情報発信の形

また、EICMAは“B2B”のトレードショーでもあり、今年は1279社が会場内に自社ブースを出展したという。そのうちの52%はイタリア以外の国からの出展であり、その数は延べ44カ国にも及んだ。その中には、ここでニューアイテムを発表するメーカーもあれば、EICMAをきっかけに世界市場に打って出る新興メーカーもあり、ブースには「これが初披露」という新技術や新製品があふれていた。そしてニューモデルの発表で浮かれる展示スペースの裏では、年次報告や新規発注、または新規契約など、真剣なビジネスのやり取りが行われているのだ。

デジタルメディアやSNSの普及によって、報道のされ方も大きく変わった。プレスデーでニューモデルを発表する二輪車メーカーのほとんどは、SNSを通じてその様子をライブ配信しているし、発表と同時に、事前に用意していたニューモデルのオフィシャル写真とスペックデータを、世界中に一斉配信する。いくつかのデジタルメディアは会場内にあるメディアセンターに特別室を設け、会場で撮影した動画や写真を瞬時に自社メディアやSNSで公開する。その恩恵にあずかり、最新の情報を得ている日本のバイクファンも多いのではないか。いまやEICMAは、足を運ばずともタイムラグなしに情報を得られるイベントなのだ。

しかし、ニューモデルがアンベールされる会場の熱気、発表された新型車が持つ独特のオーラ、それを見る来場者の興奮は、会場でしか感じられない。また広い会場をくまなく歩けば、面白いブランドをたくさん見つけることができるし、有名無名を問わず、エンジニアやデザイナーたちから聞く話は刺激的だ。熱気と刺激にあふれた世界最大の二輪の祭典。EICMAは、そんな場所なのである。

(文と写真=河野正士/編集=堀田剛資)

世界最大のバイクショー「EICMA」の詳しい写真はこちら

日本のサスペンションメーカー、ショーワも、いまやEICMA出展の定番ブランド。近年力を入れている自社開発の電子制御サスペンションは、カワサキのスーパースポーツやツーリングモデルに純正採用されている。今年は車両が停車間際になると自動的に車高が下がり、ライダーの“足つき”をアシストする「ショーワ・イーラ ハイトフレックス」技術を発表。デモ車両を展示した。走りだしたらサスペンションのダンパーをポンプとして使用し、走行しながら車高を指定の高さまで戻すという。
日本のサスペンションメーカー、ショーワも、いまやEICMA出展の定番ブランド。近年力を入れている自社開発の電子制御サスペンションは、カワサキのスーパースポーツやツーリングモデルに純正採用されている。今年は車両が停車間際になると自動的に車高が下がり、ライダーの“足つき”をアシストする「ショーワ・イーラ ハイトフレックス」技術を発表。デモ車両を展示した。走りだしたらサスペンションのダンパーをポンプとして使用し、走行しながら車高を指定の高さまで戻すという。拡大
今年のEICMAでは、二輪界におけるヘッドアップディスプレイのトップメーカーの多くがブースを展開し、技術をアピールした。この「クロスヘルメット」は日本発のブランドであり、システムはもちろんデザインもすべて自社開発している。ディスプレイはヘルメット開口部の上側にセットされており、クルマのルームミラーを見る感覚で情報の確認が可能。ナビゲーションの画面のほか、バックカメラの映像も表示できる。
今年のEICMAでは、二輪界におけるヘッドアップディスプレイのトップメーカーの多くがブースを展開し、技術をアピールした。この「クロスヘルメット」は日本発のブランドであり、システムはもちろんデザインもすべて自社開発している。ディスプレイはヘルメット開口部の上側にセットされており、クルマのルームミラーを見る感覚で情報の確認が可能。ナビゲーションの画面のほか、バックカメラの映像も表示できる。拡大
EICMAでは、ほとんどの展示車両に実際にまたがることができ、人気モデルには“またがり待ち”で行列というか円陣のような人だかりができる。先ほど紹介した、モト・グッツィの「V85TT」も大人気だった。
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