ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)
天井しらず 2026.04.27 試乗記 「ランボルギーニ・テメラリオ」がいよいよ日本の道を走り始めた。その電動パワートレインはまさに融通無碍(むげ)。普段は極めて紳士的な振る舞いを見せる一方で、ひとたび踏み込めばその先には最高出力920PSという途方もない世界が広がっている。公道での印象をリポートする。目覚めると即、猛獣
分かってはいても、身構えていても、“ギャイーン”とV8ツインターボがかかった瞬間はドキッとしてしまう。そのさく裂感はいかにもランボルギーニながら、これほど豹変(ひょうへん)するハイブリッドも珍しい。モーターによるほぼ無音の電動走行は、新型V8エンジンを劇的に演出するための仕掛けではないのかと勘繰りたくなるほどだ。
最も成功したランボルギーニといわれる「ウラカン」の後を受けて、2024年の夏にモントレーでお披露目されたテメラリオは、皆さんご存じのとおり、ランボルギーニの新世代プラグインハイブリッド車(PHEV)の第3弾である。あのランボルギーニが、いつの間にかラインナップをすべてモーター付きに一新しているのだから、やはり世の中の変化は速い。
そもそも意外と言っては失礼ながら、テメラリオは想像していたよりもずっと快適というか居心地がいい。まず先代にあたるウラカンに比べボディーがひと回り大きくなったことで室内が広くなり(全高も40mmほど高くなった)、窮屈さを感じないことに加え、ガラスエリアが拡大されたおかげで視界も思った以上に良好でルーミーだ。さらに乗り心地もフラットで決してスパルタンではない。1万回転まで回るという新型V8ツインターボに目を奪われがちだが、それ以前にテメラリオは現代的に洗練されているのだ。
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1速で100km/h
ウラカンの自然吸気V10に代えて搭載されるのは新開発の4リッターV8ツインターボ(ホットインサイド型)、それに「レヴエルト」同様のフロント2基/リア1基(8段DCT内蔵)のモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドパワートレインを採用している。4リッターV8ツインターボと聞くとフォルクスワーゲン グループ内で広く使用されている従来のユニットを思い浮かべるが、テメラリオのそれはターボユニットでありながら1万回転まで回るというまったくの新開発ユニットだ。しかもフラットプレーンクランクにチタンコンロッドなどレーシングカーさながらの技術が盛り込まれ、エンジン単体で最高出力800PS/9000-9750rpmと最大トルク730N・m/4000-7000rpmを発生。モーターのパワーを足したシステム最高出力は920PS(!)で、0-100km/h加速2.7秒、最高速343km/hというモンスターである。
センタートンネルに格納されたリチウムイオン電池の容量は3.8kWhで、EV走行もわずかながら可能だが(約10kmというが、メーター内表示は6km以上になることはなかった)、前述のようにひとたびエンジンがグワンとほえれば野性味むき出し、ドライブモードにもよるがシフトショックもおそらくは意図的に明確だ。8段もあるから各ギアのレシオは特別に高くはないが、何といってもレブリミットは1万回転である。1速でリミットまで回すとほぼ100km/h、2速では140km/hまで伸びるから、超高回転型V8ツインターボを存分に試すにはどこを走ればいいのかと悩むことになる。
どっちが本性か
いっぽうで、高回転まで回さなければテメラリオは従順で穏当だ。例の赤いフラップを上げてスタートボタンを押してもシステムがオンになって準備完了の表示が出るだけ。最初はEV走行の「チッタ(シティー)」モードで動きだし、バッテリー残量があればそのまま高速道路も走れる(140km/hまで可能という)。それに加えて標準モードの「ストラーダ」、さらに「スポルト」「コルサ」と4種類のドライブモードを選べるが、パワートレインが適正温度に達するまではスポルト以上を選択できないうえに、冷間時はEV走行中でも暖機のためにエンジンをかけるというように制御が行き届いている。さらに「リチャージ」「ハイブリッド」「パフォーマンス」と3種類のハイブリッドシステムモードも選択可能。これらのスイッチはすべてステアリングホイール上にぎっしり並んでいるが、ちょっと煩雑で操作性は褒められたものではない。
したがって街なかを普通に走る限り、エンジンがほえる機会はほとんどない。ダイヤルをいじってエンジンを始動させてもせいぜい2000rpmも回せば十分に軽快であり(何しろ強力なモーターアシスト付きだ)、さらにオープンロードでも5000rpmほどで人目をはばかるスピードに達してしまう。しつこいようだがレブリミットは1万rpm、まだまだその先があるにもかかわらず、である。2モーターによる前軸駆動AWDのトルクベクタリングの効果はてきめんであり、多少頑張ったつもりでも何事もなく、ただただリニアに自然に思いどおりのラインをたどれる。ウラカンに比べて200kgは車重が増えているはずだが、まったくそれを感じさせず、ドライバーにもアシストを意識させないその制御の巧みさが出色である。
機能を追求したすごみ
タイヤが半ばむき出しになったリアスタイルを除けば(後続車ははね石注意である)、テメラリオは比較的地味で機能的なデザインといえる。おそらくはGT3レースのベース車両(競技車はハイブリッドシステムなし)であることも理由と思われるが、派手な演出なしのロードカーでもエアロダイナミクスは大幅に向上しているという。
実はこの取材とは別にロングドライブする機会もあったが、テメラリオはやせ我慢なしで長距離をこなす実用性と快適性も備えている。スタビリティーも乗り心地も文句なし、シート背後には実用になる手荷物スペースがあり、さらにフロントトランクにはキャリーオンケースも収まる。燃費志向のPHEVではないことは言うまでもないが、おとなしく走れば高速道路では9km/リッター台まで燃費も伸びた。GTカーとしての実用性も以前のウラカンとは段違いである。それにしても、このような扱いやすい日常のドライバビリティーから、情け容赦なく1万回転まで回る怒涛(どとう)の速さまでの振れ幅の広さをどう捉えればいいのか。何もあきらめずにすべての性能を追求するテメラリオのようなクルマが、これからのスーパースポーツカーの基準となるのかもしれない。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=ランボルギーニ ジャパン)
テスト車のデータ
ランボルギーニ・テメラリオ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4706×1996×1201mm
ホイールベース:2658mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:800PS(588kW)/9000-9750rpm
エンジン最大トルク:730N・m(74.4kgf・m)/4000-7000rpm
フロントモーター最高出力:150PS(110kW)/3500rpm(1基あたり)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:150PS(110kW)/3500rpm
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:920PS(677kW)
システム最大トルク:--N・m(--kgf・m)
タイヤ:(前)255/35ZR20 97Y XL/(後)325/30ZR21 108Y XL(ブリヂストン・ポテンザスポーツ)
燃費:11.2リッター/100km(約8.9km/リッター、WLTPモード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:エクステリアカラー<ジアッロテネリフェ>/シートベルト<ロッソアララ>/フルハイアシスタントパック/サラウンドアシスタンスパック/パーキングパック/ロッソCCBブレーキキャリパー/カーボンパックforステアリングエリア/20/21インチ鍛造キャストホイール<シャイニーブラック>/Sonus Faberサウンドシステム/カーボンステアリングホイール<レザーサイド、レッドセンターマーク>/マトリクスビームライト/ビジブルカーボンファイバーリアディフューザー<シャイニー>/フロアマット<レザーボーダー、ダブルステッチング>/補助ヒーター<HVPTC>/スタイルパッケージ<ハイグロスブラック>/コントラストカラートリム/「Lamborghini」リアロゴ<シャイニーブラック>/エアベント<マットカーボン>/センタートンネルボックス<マットカーボン>/ドアスイッチフレーム<マットカーボン>/磁性流体リフティングシステム/ランボルギーニスマートフォンインターフェイス/インストゥルメントクラスター<マットカーボン>/カップホルダー&スモーカーパッケージ/パッセンジャーディスプレイ/ビジブルカーボンファイバーサイドミラー<シャイニー&フットシャイニーブラック>/ビジブルカーボンサイドエアインテーク<シャイニー>/LEDアンビエントライト<RGB>/ビジブルカーボンフロントスプリッター<シャイニー>/ヘッドレストのランボルギーニシールドステッチ/テールパイプ<マットブラック>/フル電動シート<ヒーター&ベンチレーション>
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:556km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:318.7km
使用燃料:58.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:5.4km/リッター(車載燃費計計測値)/5.5km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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