むかしのホンダ車大集合! 「1st HONDA CLASSIC MEETING」の会場から
2013.06.05 画像・写真2013年6月2日、千葉県袖ケ浦市の東京ドイツ村で「1st HONDA CLASSIC MEETING in 東京ドイツ村」が開かれた。これはちょうど50年前の1963年に発売されたホンダ初の四輪市販車である軽トラックのT360から、初代「シビック」など75年までに生産されたクラシック・ホンダ四輪車を対象とするミーティングで、主催は83年に設立された「ホンダNシリーズ」のワンメイククラブであるHONDA N360 ENJOY CLUB(HNEC)。HNECでは、かつてはCLASSIC HONDA JOINT TOURINGなどのイベントを定期的に開いていたが、2003年にTHE HONDA HISTORIC’Sと題したイベントをツインリンクもてぎで開催して以来、諸々の事情により途絶えていた。今回は10年ぶりの復活開催となったが、くしくも今年はHNECが設立30周年を迎える年でもあり、「これをきっかけに関東地区におけるクラシック・ホンダ愛好家の集いとして定期開催していければ」という。当日はHNECメンバーの乗るNシリーズを中心に、個性豊かな初期のホンダ車30数台が集まった。会場から、それらを紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)

ズラリと並んだ「ホンダN360」。1967年3月に誕生したホンダ初の量産軽乗用車で、それまでの常識を打ち破る高性能と高いスペース効率、そして低価格から爆発的にヒット。発売3カ月後には軽のベストセラーとなり、以後連続43カ月にわたってその座を独占、軽市場の構図を完全に塗り替えてしまったエポックメイキングなモデルだった。
-
ズラリと並んだ「ホンダN360」。1967年3月に誕生したホンダ初の量産軽乗用車で、それまでの常識を打ち破る高性能と高いスペース効率、そして低価格から爆発的にヒット。発売3カ月後には軽のベストセラーとなり、以後連続43カ月にわたってその座を独占、軽市場の構図を完全に塗り替えてしまったエポックメイキングなモデルだった。
-
1968年「N360S」。67年3月に発売されたN360は、当初はモノグレードで、同年12月にデラックス版の「Mタイプ」、翌68年2月にこの「Sタイプ」が加えられた。通称「N1(エヌワン)」と呼ばれる初期型の希少なSタイプのなかでも、この個体はオリジナルに近い姿が保たれており、程度もすばらしい。
-
「N360S」のディテール。インパネにはタコメーターが付くが、この個体は中央にもより正確な「ホンダCB250/350」(バイク)用のタコメーターが増設されている。オリジナルのステアリングホイールは革巻きだが、このウッドステアリングは非常に希少な純正オプション。本来エンジンはシングルキャブ仕様だが、68年9月に追加された「T(ツーリング)シリーズ」用のツインキャブに換装。リアクオーターのエアアウトレットカバーは「N1 Sタイプ」の特徴で、リアウィンドウに貼られた第4回日本グランプリの「生沢ポルシェ・カレラ6」のステッカーも泣かせる。
-
1968年「N360TM」。つい最近、HNEC内で新車から愛用していたオーナーから新オーナーに譲られたという希少な個体。ツヤが失われ、ところどころサビたボディーは、塗装もオリジナルのままで、走行距離は22万km以上。車名の「TM」とは、ツインキャブエンジンを積んだ「T」シリーズの「M」タイプ、つまり高性能なデラックス仕様という意味。本来は「N1」だが、フロントグリルは69年1月にマイナーチェンジされた通称「N2(エヌツー)」用が装着されている。
-
1969年「N360デラックス」。69年1月のマイナーチェンジでフロントグリルのHマークがプレス打ち抜きから赤地に白文字となり、リアクオーターのエアアウトレットもプレス打ち抜きから黒い樹脂製となったほか、中身も含め改良および変更を実施。グレード名も一般的なスタンダード、デラックス……などに改称された。これが正真正銘の「N2」である。
-
1969年「N360ツーリング・デラックス」。ツインキャブ仕様のT(ツーリング)シリーズは、「N2」になるとマットブラックのメッシュのみでクロムのバーが入らない、スポーティーなデザインのフロントグリルが与えられた。
-
「N360ツーリング・デラックス」には、当時モノのパーツがいくつか装着されていた。レンズカットが美しい、ネコがトレードマークの仏製「マーシャル」のハロゲンヘッドランプ、67年に発売されたヨコハマ初のラジアルタイヤだった「GTスペシャル」のバッジ、すっかり色があせてしまったクレイスミス・カムのキャラクターである「MR. HORSEPOWER」のステッカー、そしてまるでゴーカート用のような300mmの超小径ステアリングホイールに水中花シフトノブ。
-
1969年「LN360スタンダード」。「L」はライトバンの略で、つまりはN360ベースの商用バン。ドアから後ろがセダンとは異なり、まっすぐ伸びている。テールゲートは上下開きと横開きの2種類があったが、これは後者。この個体は「N2」で、フェンダーミラーとフォグランプはノンオリジナル。
-
1973年「N600」。「N360」のボディーに594ccまで拡大した空冷並列2気筒SOHCエンジンを搭載した輸出仕様(この個体は旧西ドイツ向け)。日本でも一時期「N600E」の名で販売され、最高速度130km/h、0-400m加速19.7秒の高性能から「プアマンズ・ミニクーパー」の異名をとった。ただし居住性はN360と変わらず、税金・保険などの維持費は普通車となれば一部のマニア向けにとどまり、販売台数は1500台程度といわれる。
-
1971年「NIII 360デラックス」。70年1月にN360は再度マイナーチェンジして顔つきが大きく変わり、車名も「NIII 360」に改称された。トランスミッションはそれまでのモーターサイクルと同じコンスタントメッシュからフルシンクロに変更され、一般的な自動車らしくなった。フェンダーミラーはノンオリジナル。
-
1970年「NIII 360ツーリングS」。タミヤの1/18チャレンジャー・シリーズの名作キットのモデルにもなっている、ポルシェのバハマイエローに似た「トニーイエロー」という純正色で塗られたNIIIの高性能グレード。フェンダーミラーは本来は黒塗りの砲弾型で、アルミホイールはもちろんノンオリジナル。
-
積載車から降ろされ、勇ましい音を立てて走ってきた1969年「N360ツーリングS」。塗り分けといい、フロントに装着されたオイルクーラーといい、ただものではない雰囲気だが、よく見ればドライバーが左側に座っている。本土復帰前の沖縄向け左ハンドル車とのこと。
-
FRP製に換えられていた「N360ツーリングS」のボンネットの下には、とんでもないエンジンが載っていた。腰下はN360用だが、シリンダーは削り出しのオリジナルで、ヘッドとピストンはなんと「ヤマハV-MAX」用。つまりツインカムエンジンなのである。キャブレターはFCRを装着している。
-
1973年「ZハードトップGSS」。70年10月にデビューした軽初のスペシャルティーカーである「Z360」は、71年12月にはベースカーを「N360(NIII)」から「ライフ」に変更してエンジンを水冷化。さらに翌72年11月にはセンターピラーを取り去り写真のハードトップとなった。この個体は、ツインキャブエンジンに5段ギアボックスを備えたトップグレードの「GSS」。
-
1972年「バモスホンダ・バモス4」。軽トラックの「TN360」をベースにしたユニークな多用途車の初代バモスは、70年11月に登場。おそろいのオリーブグリーンに塗られた「モトコンポ」は初代「シティ」と同時発売だから、両者のデビューには約10年の開きがあるのだが、こうして並べても違和感はない。
-
「NIII 360」の後継モデルとして1971年6月に登場した水冷エンジン搭載の軽乗用車「ライフ」のプラットフォームを流用した商用車の「ライフ・ステップバン」は、72年6月にデビュー。現代の軽ハイトワゴンにも通じるコンセプトを持っていたが、新車当時の販売は芳しくなく、生産中止後にカスタムベースとして人気が出た。ここに並んだモデルの多くも、思い思いのモディファイが加えられている。
-
ほぼフルオリジナルで、タイヤまでバイアスを履いた1974年「ライフステップバン・スーパーデラックス」。前述したように生き残りの多くがカスタムされているため、こうしたノーマル仕様は今となっては逆に希少である。ステップバンはコンセプトもユニークだが、ドアは前後同じプレスで、「N360」用フロントウインカーレンズ、軽トラックの「TN360」用フロントグリル、「LN360」用のテールゲートなど他車からの流用部品も多く、非常に合理的な設計だった。
-
1974年「ライフ・ピックアップ」。「ステップバン」をベースにした、FFのため低床が特徴のミニ・ピックアップ……なのだが、ホワイトとペパーミントグリーンという80年代風味のツートーンに塗られたこの個体は、荷台の後ろにもうひとつ荷台が。オーナーのアイデアによる特製トレーラー仕様なのである。
-
オーナーいわく、部品取り車のサビたボディーを処分する際にひらめいて製作したとのこと。もちろん公認取得済みで、堂々と公道を走れる。シビレたのが、ホワイトをベースにアンドレ・クレージュの頭文字であるAとCがピンクとブルーで塗り分けられた、80年代テイストをさらに強調するクレージュのアルミホイール。そういや当時、ホンダの「クレージュ・タクト」(スクーター)なんてのもあったっけ。
-
薄いブルーメタリックのペイントが美しい1967年「S800クーペ」。フロントグリルのパターンが「N360」に似ているが、デビューはこちらが先(66年1月)。で、グリルをデザインする際に参考にしたのが、当時本田宗一郎氏が所有していた初代「フォード・マスタング」だったとか。
-
1969年「1300 77S」。いかにも当時のホンダらしい独創の塊、裏を返せば強烈なひとりよがりの産物だった、DDAC(二重空冷)という特異な空冷エンジンを積んだ「ホンダ1300」。残存車両自体が希少だが、加えてこの個体は、新車から乗り続けられているワンオーナー車である。
-
「1300 77S」の最大の特徴であるDDACエンジン。オールアルミ製、しかも実用セダンなのにドライサンプで、左端にあるオイルタンクまで冷却フィンが切られたアルミ製。この77(セブンティセブン)はシングルキャブだが、SOHC1.3リッターから当時としては驚異的な最高出力100psを発生(ちなみに同時代の「ブルーバード1300」は72ps)。4キャブの高性能版の「99(ナインティナイン)」に至っては115psを発生した。
-
1973年「シビック・デラックス」。先のDDACの「1300」が商業的に大失敗したことで、ホンダは空冷から水冷に転換。軽の「ライフ」に続いて、72年6月に初代シビックを送り出したところ、これが成功して小型車市場にもポジションを築いた。この個体は「GL」や「RS」といった上級グレードに比べ残存数の少ないデラックス。アルミホイール黎明(れいめい)期のヒット商品であるハヤシストリートを履いている。
-
1975年「シビックRS」。74年10月から75年8月まで1年足らずの間しか作られなかった、ツインキャブエンジンに5段ギアボックスを備えた、初代シビック唯一の高性能グレードであるRS。Racing Sportではなく、Road Sailingの略というRSを名乗った最初のホンダ車である。これも懐かしいコスミックのアルミホイールを履いている。
-
朝のうちは曇りで風も強く、肌寒いほどだったが、昼ごろからはご覧のような好天に。グリーンをバックに、Nのカラフルなボディーが映える。