ミシュラン・チャレンジ・ビバンダム2011 ベルリン
2011.06.22 画像・写真2011年5月18日から22日までのあいだ、世界的な“エコカー”の祭典「チャレンジ・ビバンダム」が開催された。100台を超えるさまざまなカテゴリーの出展車の性能テストやラリーのほか、専門家を招致してのカンファレンスやフォーラム、さらには展示ブースでのワークショップ等々、多種多様なプログラムが同時進行で行われる。2010年のブラジルに続く11回目となる今回の開催地は、ドイツの首都ベルリン。会場はかつての東西冷戦時代に西側への物資補給路としても使われた、2008年に閉鎖された旧空港だ。
(文=河村康彦/写真=日本ミシュランタイヤ)

来場者はまず、「自動車125年の歴史」に関する車両やパーツ展示も行われる旧空港「テンペルホーフ」のターミナルビルで入場の手続き。受付はかつてのチェックインカウンターをそのまま利用。ここを含め、ここの建屋や滑走路は2008年10月の閉鎖後も保存され、各種のイベントや公園スペースとして活用されている。
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来場者はまず、「自動車125年の歴史」に関する車両やパーツ展示も行われる旧空港「テンペルホーフ」のターミナルビルで入場の手続き。受付はかつてのチェックインカウンターをそのまま利用。ここを含め、ここの建屋や滑走路は2008年10月の閉鎖後も保存され、各種のイベントや公園スペースとして活用されている。
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扇型に広がる建屋から滑走路側に目をやると、ご覧のとおりの広大さ。展示スペースの前に各種のテストコースが設定され、たとえ雨に降られても濡れずにテストドライブに出発できるという素晴らしさ。
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「エキスパート・デイ」と名付けられた正式開会の前日には、空港のメイン会場を起点とした3種のラリー競技を開催。これは、2010年のパリサロンで公開されたプジョーのコンセプトEV「EX1」のスタート風景。こんなモデルが普通にナンバーを付けて公道を走ってしまうところがすごい……。
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300kmの区間が設定された「インターシティ・ラリー」のひとこま。ご存じのとおり、福島の原発事故を受けて早々に“脱原発宣言”を行ったドイツでは、電力使用者が希望する電力会社と契約できる。それによって、「コストが割高になるのは承知の上で、風力など自然エネルギーのみで発電した電力を使う」といった選択が可能という。
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340kmというエンジン車顔負けの航続距離を誇る「テスラ・ロードスター」は、あえて最も長距離の走行タスクが課せられた“インターシティ・ラリー”へとエントリー。
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大型航空機が複数駐機できそうな格納庫跡を利用してセッティングされたビュッフェレストランは、なんと「2000人が同時に食事できる」という、今までに目にしたことのない壮大さ!
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さすがはフランス企業が主催するイベントだけあって、どこに行ってもなくてはならないのが「コーヒー」。というわけで、会場内にも巨大な「ビバンダム・カフェ」を設営。飲み物が無料で振る舞われるこれもまた、毎度のチャレンジ・ビバンダムの名物。
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旧空港の建屋を用いたフォーラム会場では、モーターショーも顔負けの各種カンファレンスを開催。今回のチャレンジ・ビバンダムの特徴は、まずは「なにしろその会場規模が壮大だった」ということ。写真は、マネージング・パートナーであるミシェル・ロリエ氏によるミシュラン社のプレスカンファレンス。
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1989年に生誕100周年を記念しての第1回チャレンジ・ビバンダムが開催され、それゆえ今年は122歳となるはずのミシュラン社のマスコット、「ビバンダム」君ももちろん会場に。ただし、日本やアメリカなどの市場では「ミシュランマン」が正式名称。世界中「ビバンダム」でいいのに……。
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ミシュランがワールドプレミアし、屋外展示場でデモンストレーションを行ったのが「パンクしても瞬時に自己補修する」というセルフリペアリングタイヤ。トレッド面に開いた5mmまでの穴の85%は、内面に貼られた特殊スキンが瞬時に塞ぎ、以後の修理も必要ないという。現在、市販化に向けてその需要などを検証中とのこと。
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セルフリペアリングタイヤの説明をする、ミシュラングループ リサーチダイレクターのフィリップ・ドニマル氏(左)。右は日本ミシュランタイヤのベルナール・デルマス社長。ちなみにデルマス社長も、かつてはフランス本社の研究所に勤務をしていた元エンジニア。「ドニマルさんはとても仲の良い同僚」とか。
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開会日には、130台に及ぶ参加車両の多くがベルリンのシンボルであるブランデンブルク門でのパレードへと参加。趣旨に合致すれば参加車両の種類や装着タイヤのブランドを問わない、門戸を広く開いたイベントだけに、セグウェイのような電動アシスト2輪車から大型トレーラーに至るまで、実にさまざまな「持続可能を目指すモビリティの手段」が大集結する。
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屋内展示場には、さまざまなメーカーやサプライヤーがブースを設営。モーターショーの部品館さながらに、説明員が来場者の質問に答える姿もあちこちで見られた。
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「多くの農民は高過ぎるタイヤ内圧で使っているため、接地圧の上昇とそれによる沈み込み深さの増加で、作業中の燃費低下と地中作物へのダメージ増加を招いている」という、ミシュランによる農耕機用タイヤの適正内圧での使用を促すデモンストレーション。
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今回のチャレンジ・ビバンダムでは、5日間の会期最後の土曜日、日曜日を一般公開。会期中には世界各国から500名のジャーナリストが招致され、一般公開日の来場者数は企業関係が6000名、一般が1万5000名に及ぶという。
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ボルボはこの場で、「2012年中に発売予定」という「V60」のプラグインハイブリッドモデルを初公開。12kWh容量のリチウムイオン電池と最高70psを発生するモーターを用いるシステムで後輪を駆動。「CO2低減にフォーカスしたため」という理由から、前輪を駆動するエンジンには2.4リッターのターボ付きディーゼルユニットを採用する。
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ドイツでの開催ゆえ、当然、地元ドイツメーカーが気合いを入れた今回のイベントだが、なかでもひと際強い熱意を感じさせたのが「プレミアムメーカーの中では“電動化”で最先端を行く」と宣言済みのアウディ。会場中央に立派なブースを構えたほか、各種試乗車に加え、次期「A3」をベースとしたプラグインハイブリッドモデル「A3 e-tronコンセプト」も出展。
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このところ、立て続けにハイブリッドスポーツカーを発表していたポルシェは、ついにピュアEVモデルを出展。「ボクスターE」と名付けられた2台は、1台が1モーター式の後輪駆動で、もう1台は2モーター式の4WD。今後は本社のあるシュトゥットガルト地区で「EVの実用性と使われ方、とりわけ運転と充電についての調査」のための試験に用いられるという。
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ドイツ勢に負けじと頑張ったのは、主催者ミシュランと“同胞”のフランス勢。シトロエンは、2010年のジュネーブショーで披露した、0-100km/h加速を5秒以下でこなし、最高速は260km/hに達するEV「サーボルト」を出展。チャレンジ・ビバンダムが追求する“持続可能なモビリティ”には、夢のあるデザインも不可欠であることをアピールした。
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走行距離30kmのアーバンラリーにエントリーしていたのが、「Tukki」なる愛称を与えられていたこのモデル。タイのタクシー「トゥクトゥク」をベースとした、7kWのモーターとディープサイクルの鉛電池を用いたEV。単なるお遊びかと思えばさにあらずで、なんと「エルクテスト」など欧州の安全基準もクリアした上で、12900ユーロからの価格で発売中とか。