「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」の会場から(その5)
2019.05.23 画像・写真少量生産の現場に新風を吹き込んだ3Dプリンターに、自動運転に必要不可欠なステアリング・バイ・ワイヤー、古い部品のリビルドなどなど。「人とくるまのテクノロジー展」の会場より、興味深い展示を写真で紹介する。
-
1/43足まわり関連の部品を主に手がける日本のサプライヤー、ショーワの展示ブースには、2つの目玉が用意されていた。
-
2/43ひとつは現在開発中のステアリング・バイ・ワイヤー技術。自動運転が実現した際、操作もしていないのに勝手にステアリングホイールが回っていたら、気になって仕方ないし、場合によっては危険である。ステアリング・バイ・ワイヤーは、自動運転の実現に向けた重要な技術なのだ。
-
3/43現行型の「日産スカイライン」にも採用されているステアリング・バイ・ワイヤーだが、ショーワのシステムの特徴は、ステアリングシャフトを完全に廃止している点にある(スカイラインのシステムでは、万が一の不具合に備えてステアリングシャフトが残されている)。ショーワの機構では、電源やストロークの検出/出力機構、モーター回転角センサーなどを、3重ないし3重以上に設けている。システムを徹底的に冗長化することで、不具合に対応しているのだ。
-
4/43ドライバーのステアリング操作に対して反力を発生させるアクチュエーター。ステアリング・バイ・ワイヤーでは、自然な操作感の演出も重要になる。
-
5/43ショーワのステアリング・バイ・ワイヤーシステムには、車速に応じてギア比が変化するバリアブルギアレシオなどの機能も備わっている。
-
6/43既存のステアリング機構についても、さらなる進化が図られている。こちらは2020年代上旬に市場投入予定の、第2世代デュアルピニオンアシスト電動パワーステアリング。
-
7/43高出力の電動モーターと、その動力をラックに伝える高強度の樹脂製ギア。第2世代デュアルピニオンアシスト電動パワーステアリングでは、応答性や操舵フィールのさらなる向上に加え、重量増が予想される電動パワートレイン車への採用を想定し、従来比で15%の高出力化と、20%の軽量化が計られている。
-
8/43こちらはベルトドライブ式ラックアシスト電動パワーステアリング。その名の通り、ラックへの動力伝達にベルトを使用している点が特徴で、先述の「第2世代デュアルピニオンアシスト電動パワーステアリング」より、さらに高出力なアシストモーターや、より重量の重い車両にも対応しているという。2020年代中ごろの市場投入が予定されている。
-
9/43ステアリングシャフトの“根本”に備わるトルクアングルセンサー。ベルトドライブ式ラックアシスト電動パワーステアリングは、センサーやモーターを冗長化させることで、自動操舵システムや自動運転にも対応している。
-
10/43ショーワのブースでステアリング・バイ・ワイヤー技術と並んで注目を集めていた「SHOWA EERA HEIGHTFLEX(ショーワ・イーラ・ハイトフレックス)」。2018年の「EICMA」(通称ミラノショー)で発表された新技術で、日本では今回が初公開となる。セルフポンピング機能とオイルの供給量を制御する電子制御式油圧バルブを組み合わせた、二輪車では初の電子制御式車高調整技術である。
-
11/43ショーワの二輪車用電子制御式減衰力可変ダンパー。手前の2本はカワサキのアドベンチャーモデル「ヴェルシス」に装備されるフロントフォーク、奥はスーパースポーツモデル「ニンジャZX-10R」のリアショックアブソーバー。
-
12/43スズキのブースでは四輪、二輪、マリン事業における同社の取り組みが紹介されていた。
-
13/43軽規格のクロスカントリーモデルとして高い人気を誇る「ジムニー」。今回のイベントでも注目を集め、多くの来場者がシートの座り心地やハンドルの触感を確かめていた。
-
14/43こちらは「スズキ・ジムニー」の走りを体感できる、VR技術を用いたドライビングシミュレーター。
-
15/431980年から2000年にかけて販売された往年の名車の名を、現代によみがえらせた新型「KATANA(カタナ)」。999ccの水冷4気筒エンジンを搭載した大型のネイキッドスポーツモデルである。
-
16/43船外機のエンジン情報をスマートフォンで取得できるアプリケーション「スズキ・ダイアグノスティックシステム・モバイル」の画面。回転域ごとの稼働時間や、前回のオイル交換からの運転時間などといった利用履歴を確認可能で、サービススタッフと情報を共有することで、より迅速で効率的なアフターサービスを実現できるという。
-
17/43「スズキ・ダイアグノスティックシステム・モバイル」で船外機の利用履歴を取得する際には、メーターやマルチインフォメーションディスプレイなどに表示される3つのQRコードを読み込む必要がある。このあたりが自動化されれば、より利便性が向上するかもしれない。
-
18/43会場にはトラックメーカーも多数出展していた。こちらはUDトラックスの展示ブース。
-
19/43UDトラックスのブースの主役は、排気量11リッターの直列6気筒エンジン「GH11」である。
-
20/43「GH11」コモンレールシステムとユニットインジェクターの特徴を生かした新しい燃料噴射システムにより、幅広いエンジン回転域で力強いトルクを発生するという。
-
21/43「GH11」の燃料噴射装置では、ポンプではなくインジェクターによってレール内の燃料の圧力を高めている。6本あるインジェクターのうち、3本は筒内への燃料噴射に専念、残りの3本が、燃料の噴射と加圧に用いられる。
-
22/43UDトラックスのブースでは、自動運転の技術開発や、“つながる技術”の現状についてもパネルや動画で解説されていた。
-
23/43日野自動車のブースに展示された、小型トラック「デュトロ」のハイブリッド車。
-
24/43ハイブリッドシステムを制御するコンピューター、インバーター、駆動用バッテリーを集約した、コンパクトなPCU。パワートレインはハイブリッド車専用ディーゼルエンジンとモーター兼ジェネレーター、6段ロボタイズドMTの組み合わせで、クラッチによってエンジンとモーター/ジェネレーターをつないだり切り離したりすることで、より効率的な走りや発電を実現している。
-
25/43こちらは180kgm(1765Nm)クラスの新型「A09C」エンジン。2段過給システムの採用などにより、従来の13リッタークラスのエンジンと同等の動力性能と、大幅な軽量化、省燃費化を実現しているという。
-
26/43大型トラック「日野プロフィア ハイブリッド」のハイブリッド機構。モーターの性能は最高出力90kW、最大トルク784Nmで、エンジンと12段AMTの間に搭載される。
-
27/43トラックメーカー、いすゞのブース。小型トラックにおける同社の大ヒットモデル「エルフ」は、今年で誕生60周年を迎える。
-
28/43「いすゞ・エルフ」に搭載される3リッターディーゼルターボエンジン「4JZ1」。175ps仕様と150ps仕様の2種類が用意される。
-
29/43排出ガスの浄化には、乗用車でもおなじみの尿素SCRと、DPD(ディーゼル・パティキュレート・ディフューザー)を採用。微粒子状物質(PM)と窒素酸化物(NOx)を低減する。
-
30/43展示車両のダッシュボード上部に搭載されていたステレオカメラ。「いすゞ・エルフ」にはプリクラッシュブレーキや車線逸脱警報、車間距離警報、誤発進抑制機能などの先進安全装備が用意されている。
-
31/43ブースでは、通信技術を用いた車両状態の管理や運行管理サービス、ミリ波レーダーやステレオカメラを用いた先進安全装備、40kWhのバッテリーを2基搭載した「エルフEV」、ミドリムシを原材料としたバイオディーゼル燃料などの技術が紹介されていた。
-
32/43HKSのブースに展示されていた、ビジネスユーザー向けの通信ドライブレコーダー。HKSというとチューニングパーツメーカーのイメージが強いが、4G通信の技術を用いたIoTコネクテッドサービスにも積極的に取り組んでいるのだ。
-
33/43こちらは「普段は金型の設計、製作などを行っている」というラピートが出品した「CFRTP製一体型ホイール」。熱可塑圧縮成形による樹脂製アルミホイールで、一発成形で作られているという。重量は3968gと、アルミホイールから46%の軽量化を実現。国土交通省が定めるJWL規格相当の強度試験もパスしているというが、「市販化は……(苦笑い)」とのことだった。
-
34/43創業以来、70年にわたりダイカストによる部品製造を手がけてきたリョービ。ブースではダイカスト製品の採用による自動車の軽量化が提案されており、電動車向けの巨大なアルミダイカスト製バッテリーケースの展示が目を引いた。
-
35/43コイワイは、試作品や少量生産部品の製造現場に大きな変革をもたらしつつある、3Dプリンターの技術を紹介。
-
36/43こちらは3Dプリンターによって製作された型(手前の2つ)と、それによって製造された部品(右奥)。3Dプリンターであれば、入り組んだ複雑な形状の製品も一発で成形することができる。
-
37/43こちらは3Dプリンターによって製作された金属部品。左がブレーキキャリパー、右がタンクカバーで、製作に要した時間はそれぞれ36時間と32時間とのことだった。なお、3Dプリンターによる金属部品の強度は「鋳造より強く、鍛造に近い」とのこと。
-
38/43左から、3Dプリンターで製作されたEVモーターと、インテークマニホールドのカットモデル、インテークマニホールド。製作時間は、順に120時間、24時間、190時間となっている。複雑な形状の部品も、強度が求められる部品も作れる3Dプリンターだが、現状では「生産コストと、製作に要する時間の長さが課題」とのことだった。
-
39/43会場を回っていると、ユニークな展示を行うブースも散見される。こちらは、さまざまな鋳造技術を駆使した試作品の製作などを得意とする、所沢軽合金のブース。鋳造で作られたチェスの駒や、サッカーJ2のクラブチーム、モンテディオ山形のマスコット「ディーオ」などが展示されていた。
-
40/43まるで老舗の和菓子屋さんを思わせる大阪フォーミングのブースだが、小皿に盛って展示されているのは……。
-
41/43複雑な形状をしたさまざまなナット。ちなみに、こちらのナットはこの形にするまでに5回の圧縮成形を行うという。
-
42/43最後に紹介するのは、他の企業とは趣を異にする信越電装のブース。オルタネーターやスターター、コンプレッサーの展示に、一見すると電装品のメーカーかと思われるのだが……。
-
43/43実は信越電装は、古い電装品のリビルドを手がけているのだ。日本でも、クラシックカーの愛好が趣味として市民権を得つつある昨今、今後はこうした部品の供給やサービスも重要になってくるに違いない。「人とくるまのテクノロジー展」の会場にあって、温故知新を感じさせるブースだった。