ヒルクライムレース「Auerberg Klassik/アウアーベルククラシック」の会場から
2019.10.25 画像・写真「Auerberg Klassik(アウアーベルククラシック)」は、約30年ぶりに復活した、舗装された山道、いわゆる“ワインディング”を封鎖して行われるヒルクライムレースだ。場所は南ドイツの小さな街Bernbeuren(ベルンボイレン)。南部の都市ミュンヘンからクルマで約2時間。オーストリアとの国境に近いこの街を、ドイツ人たちは「ババリアンの伝統的な田舎町だ」という。
しかし、1967年から1987年までのあいだ、このベルンボイレンでは毎年9月の第3日曜日に、「Auerberg Rennen(アウアーベルクレンネン)」という名のヒルクライムレースが開催されていた。土曜日にバイク、日曜日にクルマのタイムアタックが行われ、イベントが近づくと近隣諸国から多くの参加ドライバーやライダーやチーム、そして観客がつめかけて大いに盛り上がったそうだ。
2017年、最後に開かれたアウアーベルクレンネンから30年の時を経て、同様のヒルクライムイベントを復活させたのは、そのベルンボイレンの出身者を中心とした5人のエンスージアスト。子供の時、毎年開催を楽しみにしていた村のイベントを復活させようと、自治体や警察、地元企業や二輪メーカーに呼びかけたのだ。
レース形式は、アルプスの麓にあるAuerberg (アウアーベルク)の、約2kmの山道を使ったタイムアタック。時間差で1台ずつスタートし、ゴールを目指す。それを土日の2日間行い、合計4回のタイム計測で勝者を決めるのだ。参加車両は1979年以前に生産された二輪車とサイドカー。年式や排気量によって6クラスに分かれている。車両はオリジナルコンディションにこだわらず、年式さえ合致すればチョッパースタイルのカスタムバイクも参加可能だ。ランチタイムにはヒストリックカーのデモランも行われるが、これについてはタイム計測はない。
ヒルクライムのスタート地点から少し離れた、教会がある街の中心には、スポンサー企業のプロモーションブースやドゥカティの歴史的な車両を展示するミュージアムコーナーも開設。もちろん、たくさんのテーブルとイスを設置した広場を囲むように、フードトラックやビール販売所もでき、レース後も大いに盛り上がっていた。
天候に恵まれた今回は約1万人の来場者を集め、イベントは大成功に終わった。2年ごとの開催を目指すアウアーベルククラシックの、次回の開催は2021年9月中旬だ。
(文と写真=河野正士)
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1/392019年の「Auerberg Klassik」は、9月13日と14日の2日間にわたり開催。初日は昼ごろまで濃い霧に覆われたものの、午後からは天候が好転し、2日目は朝から雲ひとつない快晴のなかでタイムアタックが行われた。
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2/39コース中盤にある観戦スポット。山の斜面に腰を下ろし、名車たちのタイムアタックをノンビリと眺める。
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3/39BMWのクラシック部門、BMW Classicはファクトリーマシンを持ち込んだ。ゼッケン11は1929年式のスーパーチャージャー付きモデル「R57 Kompressor」。
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4/39サイドカークラスには25台ものマシンがエントリー。自作フレームのマシンも多く見られた。この車両は「モト・グッツィV7スポーツ」用エンジンを搭載。
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5/39パドックからスタート地点まで、一般道を含む約1kmの道のりを、およそ200台のエントリーマシンが一斉に移動する。
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6/39教会がある街の真ん中を抜け、スタート地点に向かうエントリーマシン。ゆっくりしたペースとはいえ、レーシングマシン200台がまとまって走れば、その排気音はとてつもなく大きくなる。
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7/39ライダーたちを待ち受ける観客。みな目を輝かせながらレーシングマシンを待ち、手を振る。
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8/39出走を待つライダーたちのピットは、道路脇のフェンス。ライダー同士がノンビリと会話し、観客たちはマシンをじっくりと見て歩く。
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9/39スタート地点までマシンを運び、出走までのんびりと過ごすサイドカーのライダー。マシンは「ホンダCB750」のDOHCエンジンを搭載している。
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10/391981年にTTフォーミュラ2世界選手権でタイトルを勝ち取った、トニー・ラッターが駆ったドゥカティの「レーシングパンタ」を模して製作されたマシン。
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11/39日本からは小坂俊之氏が参戦。熊本・天草でバイクショップ「スイッチスタンス」を営む小坂氏は、昨年(2018年)にもこの「ドゥカティ900MHR」でヨーロッパのさまざまなイベントに参加していた。
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12/391934年および35年にマン島TTレースに参戦した、オリジナルコンディションのロイヤルエンフィールドのファクトリーレーサー。
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13/39参加者の中には往年のレーサーの姿も。1970年代初頭、レースシーンが市販車用をベースとした4ストローク大排気量エンジンの時代へと移行する中、BMWのファクトリーレーサーとして活躍したのが、このヘルムート・ダーネ氏だ。赤ベースのレーシングスーツは、そのときからの彼のアイコンである。
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14/39「Auerberg Klassik」には多くの女性ライダーも参加していた。奥に写る250ccの「Motobi」は彼女のマシンである。
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15/39クラシカルな衣装を着た彼女は、入場料のもぎり担当。脇に抱えた小箱には、チケット代わりのリストバンドとパンフレットが収められている。
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16/39無料で配られていたパンフレット。南ドイツ・バイエルン州の州旗であり、BMWのエンブレムのモチーフになったという青白カラーのサイドカーと、ベルンボイレンの街が表紙となっている。
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17/39スタート地点脇の土手に車両を止め、エンジンまわりを確認するライダー。トラブルかと思ったが、ライダーは細部を確認したのち、お茶を飲みに行ってしまった。
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18/39スタートフラッグを振るスタッフ。毎回、結構派手なアクションでライダーを送り出すのだが、200台も出走するのだから彼らも大変だ。
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19/391920年代後半から30年代にかけて、ドイツのモーターサイクルメーカーNSUの名前と、その製品の高性能ぶりを世界中に知らしめたファクトリーレーサーといえばトム・ブルス。「500SS BULLUS」は彼の名を冠したモデルだ。
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20/391920年代から30年代に世界を席巻したモト・グッツィの水平単気筒エンジン。この車両は30年代後半、ジレラとの熾烈(しれつ)な覇権争いのなかで生まれた500ccの「コンドール」。
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21/39サイドカーは、車体構成はもちろんライダーやパッセンジャーのライディングスタイルによって、コーナーでの姿勢が大きく変わる。こんな風にカー(側車)側が浮いてしまうことも少なくない。
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22/39カー側がインになるコーナーでは、パッセンジャーは肩やヘルメットが地面に着きそうなほど体を内側に傾ける。ちなみに、このパッセンジャーは女性である。
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23/392ストローク2気筒エンジンを搭載する「Puch(プフ)」のスタートシーン。リアまわりのプレスフレームやチャンバーの取りまわしなど、ユニークなディテールが目を引く。
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24/39ゴール地点。このゲートを通過すると自動的にタイム計測がストップする。
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25/39ランチタイムに行われた自動車のデモラン。ツーリングカーやフォーミュラーカー、ラリーカーなど、さまざまな年代のさまざまな車両が走行した。
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26/39バイク勢は、1本目のタイムアタックが終了すると、タムスケジュールの都合で2時間以上山頂のカフェで待機する。のんびりと待つ彼らが手にしているのがビール(!)というあたり、ドイツならではというか、日本ではありえない光景である。
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27/39コース脇に見えるのは、ワラをつめた黄色い緩衝材。これでガードレールをカバーしているのだ。
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28/39観客の中には男の子たちだけのグループも。彼らは最後まで皆でかたまってレース観戦を楽しんでいた。
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29/39規制線を絶妙にはみ出しながら観戦する家族連れ。時にタイムアタックする車両を真剣に追い、時には車両を気にせずおしゃべりに花を咲かせる。
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30/39奥に見える赤いレンガの小屋には、ケータリングサービスが出展。ハンバーガーやホットドッグ、ケーキにスナック、コーヒーにジュース、もちろんビールも販売されている。
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31/39タイムアタックを終え、一斉に下山してくる車両と、それを待ち構える観客たち。
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32/39山を下るマシンを待って手を振る観客たち。それに応え、ライダーも手を振り返す。
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33/39メイン会場でもある街の広場には、こんな風にテーブルとイスが置かれ、常に人であふれていた。
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34/39ケータリングスペースには、すべての場所でこんな風にスイーツが販売されていた。そのほとんどは、地元の人たちが焼いた、地元の素朴なお菓子なのだという。
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35/39タイム計測を終えた土曜日の夕方、翌日の走行に備えてマシンの整備を行うライダー。それを囲んだ仲間たちは話をしたりビールを飲んだり。ゆっくりとした時間が流れる。
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36/39土曜の夜に行われたパーティーで、壇上に上がってあいさつする5人の主催者。多くの人がクラシカルな衣装に着替え、パーティーを楽しんでいた
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37/39主催者5人は、参加者へのあいさつを終えた後に、多大なサポートを続けるそれぞれの奥さんに花束をプレゼント。参加者からは大きな拍手が送られた。
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38/39「Auerberg Klassik」では観客もクラシカルな衣装で着飾っている。こうした衣装で来場すると入場料が半額になり、また衣装コンテストも行われているのだ。
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39/39土曜日の夕暮れ、マシンの整備を終えた2人がビールを飲んでいた。実に気持ちがよさそうだった。