モーターサイクルショー「EICMA 2019」の会場から
2019.11.18 画像・写真2019年11月7日から10日まで、イタリア・ミラノで世界最大規模のモーターサイクルショー「EICMA(エイクマ)」が開催された。二輪車メーカーや用品メーカーが翌年発売を予定している新製品を発表する場として、世界中から注目を集めているイベントだ。そのなかから、各メーカーの新型車を中心に紹介する。(文と写真=河野正士)
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1/36ホンダは「CBR1000RR-R FIREBLADE(ファイアーブレード)」を発表。市販車をベースに戦う、スーパーバイク世界選手権に参戦するホンダのスーパースポーツモデルを一新した。エンジンやフレームには、MotoGPを戦うホンダのファクトリーマシン「RC213V」で培った技術を投入。エンジンのボア×ストロークは、その市販モデルである「RC213V-S」と同サイズとした。最高出力は160kW(約217PS)/1万4500rpmとなっている。もちろんフレームやスイングアームも一新。リアショックはこれまでのユニットプロリンクから、エンジンのクランクケースに取り付けるプロリンク方式に変更されている。新しくなったボディーデザインは、つり目の2灯ヘッドライトというCBRらしさは引き継ぎながら、フロントカウル中央にラムエアのダクトを配置。さらに車体両サイドには風洞実験を重ね開発したダクトウイングを装着している。
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2/36ホンダのバイクでは「アフリカツイン」も排気量を拡大し「CRF1100Lアフリカツイン」となった。エンジンはストロークを増やし、それによって排気量を86cc拡大。シリンダーヘッドやFI(フューエルインジェクション)まわりも刷新されている。またフレームやボディーデザインも一新。LEDヘッドライトの採用などにより、フロントフェイスは大幅にスリム化。シートまわりも変更されている。そして大容量燃料タンクなどを採用する「CRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツ」には、SHOWA(ショーワ)の電子制御サスペンションシステム「EERA(イーラ)」を搭載している。
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3/36ローマに拠点を構えるホンダR&Dヨーロッパが、毎年EICMAで発表するデザインコンセプトモデル。今年は「CBR650」系の水冷4気筒エンジンを搭載した「CB4」を発表した。エンジンこそ市販車のものを使用するものの、その他の外装やフレームなどは、この車両のために一品製作したもの。アドベンチャーやモタードとは異なる、新しいスポーツモデルの可能性を表現したという。
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4/36ヤマハは欧州で人気の「MT-07」シリーズをベースとしたアドベンチャーツアラーモデル「トレーサー700」をマイナーチェンジ。フロントカウルはつり目のLEDデイタイムランニングライトとLEDヘッドライトの採用で、ヤマハのスポーツモデル「R」シリーズに通じるデザインとなった。またハンドルまわりの変更などによりライディングポジションを改善。フロントサスペンションも新型が採用されている。
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5/36アジアはもとより欧州でも需要を伸ばしているヤマハ製125ccモデルの基幹車種「MT-125」には、新型フレームと新型倒立フォーク、そして“ダブルアイ・フェイス”と呼ばれる「MT」シリーズに共通するフロントカウルを含む新外装が採用された。エンジンも、回転数に応じてバルブの開閉タイミングを変更する可変バルブ機構「VVAシステム」搭載の新型となっている。
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6/362018年のEICMAでコンセプトモデル「3CT」として登場した、フロント2輪のLMW(リーニング・マルチ・ホイール)機構を搭載する車両が市販化。「ヤマハ・トリシティ300」として発表された。300ccクラスのスクーターが日常の移動手段として確立しているイタリアにおいて、石畳やトラムの線路の上でも高い安定感を誇るLMW機構のスクーターは、ライバルに対して大きなアドバンテージとなる。
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7/36カワサキのスポーツツアラー「ニンジャ1000」がアップデート。「ニンジャ1000SX」として発表された。スタイリングやメカニズムにおいては、基本的には前モデルを踏襲しているものの、各部をアップデート。可動範囲を広げた可変式のスクリーンやカラーTFTモニターを採用。6軸IMUを搭載しており、そこで得たデータをもとにさまざまな電子制御デバイスをコントロールしている。
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8/36カワサキは今回のEICMAで、電動バイクの開発を進めていると発表。その開発車両が展示された。同時に発表された動画にはフルカウル付きの車両が走行するシーンなども収録されているが、会場にはカウルを取り払った車両のみを展示。バッテリーの下には、一般的なバイクでクラッチやトランスミッションがおさめられるクランクケースがセットされており、シフトペダルやクラッチレバーらしきアイテムも装着されている。
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9/36カワサキはイタリアの伝統的なスポーツバイクメーカー、bimota(ビモータ)社と合弁会社を設立。カワサキのエンジンなどを使用する、ビモータブランドの車両を製造および販売すると発表した。その第1弾が「ビモータ・テージH2」だ。テージの代名詞であるフロント・センターハブステアを採用。エンジンは「カワサキ・ニンジャH2」用のスーパーチャージャー付きだ。
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10/36スズキはアドベンチャーモデルの「Vストローム」をアップデート。「Vストローム1050」およびそのスポーツバージョンの「Vストローム1050XT」を発表した。エンジンや車体は前モデルのものを踏襲し、各部をアップデートするにとどめているが、外装類は一新。1980年代後半から1990年代にかけパリ-ダカールラリーに参戦したスズキのマシン「DR750」をほうふつとさせるデザインを復活させた。1050XTにはスポークホイールや6軸IMUと連動した電子制御デバイスが装備されている
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11/36ハーレーダビッドソンは、新型の水冷60度V型DOHC 4バルブエンジンを搭載した「BRONX(ブロンクス)」を発表した。これは2018年に発表された、2022年までの中期世界戦略「More Roads to Harley-Davidson」に基づいて設定される“ストリートファイター”モデルだ。しかし現物は、ストリートファイターというよりもネイキッドスポーツバイク。排気量975ccの新型エンジンのフィーリングも大いに気になる。
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12/36この「PAN AMERICA(パンアメリカ)」も「More Roads to Harley-Davidson」で設定が発表されたモデル。エンジンは「ブロンクス」と同じ水冷60度V型DOHC 4バルブながら、排気量は1250ccにまで拡大されている。クルーザーの雄たるハーレーが、欧州的アドベンチャースタイルを採用し、そこに挑んできたことは非常に興味深い。
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13/36「BMW F900XR」は、2017年のEICMAで発表され、2018年に国内販売がスタートした新型「F750GS/F850GS」のプラットフォームを使用したニューモデル。排気量を895ccへと拡大した新型エンジンを採用している。アドベンチャーバイク的スタイリングに、スポーツバイク的な前後17インチホイールを採用するこのカテゴリーには、いままで並列4気筒エンジンを搭載する「S1000XR」のみがラインナップされていたが、これで270度逆回転クランクを採用する並列2気筒エンジンモデルが加わったことになる。
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14/36「BMW F900XR」と同じ、並列2気筒エンジンを搭載するFシリーズの新型車「F900R」。BMWではカウルを持たないネイキッドモデルを“ロードスター”と呼び、モデル名にRを付けている。「F900R」はその最新モデルである。
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15/36スーパースポーツ「S1000RR」の並列4気筒エンジンを搭載する「S1000XR」もマイナーチェンジ。エンジンは可変バルブ機構「Shift-Cam(シフトカム)」を搭載しない先代のS1000RR用をベースとしたものだが、エンジン単体で4kgの軽量化を実現し、車体全体では前モデルから10kgの軽量化が行われている。リアホッピングやスライドを抑制するための新たな技術「MSR」を搭載するなど、各部にブラッシュアップが施されている。
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16/36ドゥカティはスーパースポーツカテゴリーに2気筒エンジンを搭載する「パニガーレV2」を新たにラインナップした。排気量955ccのL型2気筒エンジンを搭載していた「959パニガーレ」をベースに、欧州の新しい排出ガス規制「ユーロ5」に対応しながら出力アップと軽量化を実現。また「V4」シリーズに採用される外装類を装備している。今後、ドゥカティのスーパースポーツカテゴリーである「パニガーレ」ファミリーに属するモデルは、エンジンの搭載角度にかかわらず「V」と表記されることも明確になった。
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17/362017年、2018年と、世界中の二輪市場とレースシーンの話題をさらったドゥカティのV型4気筒エンジン搭載モデル「パニガーレV4」シリーズ。そのネイキッドモデルが「ストリートファイターV4」だ。しかしこのモデルは、単にカウルをはぎ取っただけではない。ステアリングヘッドまわりに小変更を加え、新型スイングアームを採用。さらにパニガーレV4シリーズに採用されるウイングレットを2枚装備。「バイプレーンウイング」と呼ばれるそれは、208PSのハイパワーマシンからカウルを取り外しても十分なスタビリティーを得るために、高いダウンフォースを発生させる。
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18/36この「スクランブラー モタード」は、EICMAでドゥカティが発表する2度目のコンセプトモデル。排気量800ccの空冷L型2気筒エンジン搭載のオフロードスポーツモデル「スクランブラー デザートスレッド」をベースに、前後17インチホイール+スポーツタイヤの“スーパーモタード”スタイルをつくり上げた。
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19/36同じくドゥカティが発表したコンセプトモデル「スクランブラー デザートX」。「スクランブラー1100」のエンジンとフレームをベースに、1980年代から1990年代にパリ-ダカールラリーで活躍し、タイトルも獲得したカジバのラリーマシンをモチーフに製作。ホイールはフロント:21インチ、リア:18インチで、砂漠でもパワフルに走ることを想定し、1100ccのエンジンを採用したという。
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20/362019年1月からスタートした「TFC=トライアンフ・ファクトリー・カスタム」。トライアンフが自社で製作・セレクトしたパーツをセットアップした、台数限定のオフィシャルカスタムバイクだ。そのTFCシリーズに「トライアンフ・ボバー」がラインナップされた。「ボバーTFC」は、低フリクションパーツなどの装着によりパワーアップを実現したエンジンに加え、ハイクオリティーな前後サスペンションやブレーキまわり、外装類がセットされている。
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21/36トライアンフの「ボンネビルT120 BUD EKINS Special Edition(バド・イーキンス スペシャルエディション)」。トライアンフのスタンダードモデルである、水冷並列2気筒エンジンを抱く排気量1200ccの「ボンネビルT120」をベースにした特別モデルだ。往年の名優スティーブ・マックィーンの親友で、マックィーンのバイクまわりのサポートを行うと同時に、プロのスタントライダーであり映画『大脱走』の有名なジャンプシーンでもハンドルを握った、バド・イーキンスをオマージュした特別モデル。
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22/36同じくトライアンフの特別モデル「ボンネビルT100 BUD EKINS Special Edition(バド・イーキンス スペシャルエディション)」。「T120」と同スタイリングながら、排気量900ccのコンパクトなエンジンを搭載している。
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23/36低く構えたセパレートハンドルを採用するなど、カフェレーサースタイルで人気の「トライアンフ・スラクストン」の上位モデルが「スラクストンRS」。前後にオーリンズ製のハイスペックサスペンションを採用。エンジンもパワーアップし、よりスポーティーで近代的なパフォーマンスが与えられている。
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24/362018年のEICMAで発表された、並列2気筒エンジン搭載のコンセプトモデル「RS660コンセプト」のプラットフォームを使用した新たなコンセプトモデル、それが「アプリリア・トゥオーノ660コンセプト」。トゥオーノはアップハンドルを持つアプリリア独自のスポーツモデルの呼び名で、このコンセプトはすぐにでも市販化できそうなほど完成度が高い。
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25/362018年のEICMAで大いに話題となった、並列2気筒エンジンを搭載した「RS660コンセプト」の市販化バージョン、それが「RS660」。コンセプト時とほとんど変わらぬスタイリングとディテールが見て取れる。ただし、バフ仕上げされていたコンセプトモデルのフレームやスイングアームは、いかにも量産車的な梨地の表面仕上げとなっていた。最高出力は100hp。169kgの軽量な車体と合わせれば、そのパフォーマンスは数字以上のものとなるだろう。
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26/362018年のEICMAで発表されて大いに話題となり、2019年にデリバリーが開始されてから世界中で人気となっているモト・グッツィのアドベンチャーモデル「V85 TT」。そのアップデートモデルが「V85 TTトラベル」だ。ロングスクリーンやパニアケース、フォグランプなど、長距離走行に便利なアイテムが追加されている。
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27/36排気量744ccの縦置きV型2気筒エンジンを搭載する、「モト・グッツイV7」シリーズの最新モデル。カフェレーサースタイルの「V7レーサー」のデビュー10周年を記念した「V7 IIIレーサー10thアニバーサリー」だ。新形状のフロントカウルとスクリーンのほか、新しいグラフィックを採用。トップブリッジに10thアニバーサリーを記念する特別プレートがデザインされている。
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28/36ハスクバーナ初の大排気量アドベンチャーモデル「ノーデン901コンセプト」。KTM傘下のハスクバーナはこれまで、KTM製品のプラットフォームを使用して独自のプロダクトを発表してきた。今回も、同時に発表されたKTMの新型ロードスターモデル「890デューク」に搭載されている排気量889ccの並列2気筒エンジンを搭載。これまでハスクバーナが発表したコンセプトモデルは、ほぼそのままのスタイルで翌年には市販化されていることから、このノーデンにも期待がかかる。
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29/362016年のEICMAでプロトタイプが、2017年に市販車が発表された、KTMの並列2気筒エンジンモデルである「790」ファミリー。早くもそのエンジンがバージョンアップされ、まずは「890デュークR」に搭載された。そのモデル名通り、排気量890ccの新型エンジンを搭載。ボア、ストロークともに拡大することで排気量アップを実現している。既存の「790デューク」と合わせ、熾烈(しれつ)を極める600~1000ccのミドル排気量市場でのラインナップ拡充を図る。
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30/36KTMのV型2気筒エンジンを搭載したスポーツネイキッドモデル「1290スーパーデュークR」が進化した。エンジンの出力特性を改善し、出力アップも実現。シャシーやスタイリングも一新した。
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31/36「1290」「1050」「790」と、異なる排気量のモデルをラインナップしていたKTMのアドベンチャーファミリーに、新型車「390アドベンチャー」が加わった。軽量でスポーティーなことで人気の「390デューク」をベースに、ツーリングにおける快適性を高めるとともにオフロード走行にも対応する仕様となっている。
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32/36イギリスのバイクブランド、ブラフシューペリアが、同じくイギリスの自動車ブランド、アストンマーティンとコラボレーションして製作したのがこの「AMB001」。外装類はすべてカーボンで、アストンマーティンのデザイナーがデザインを担当した。BMWの「Kシリーズ」や新型「ホンダ・ゴールドウイング」が採用するダブルアームのフロントサスペンションを採用。F1マシンのウイングをモチーフにしたというハンドルなど、ぜいたくなアルミ削り出しパーツも各所に使用されている。すでに多くのオファーを受けていて、販売の準備に取りかかるという。
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33/36MVアグスタが発表した新型車「スーパーベローチェ800」。2018年のEICMAで話題をさらった、3気筒エンジンを搭載するスーパースポーツ「F3 800」をベースに、専用デザインのフルカウルを装着したネオクラシックなコンセプトモデルの市販バージョンである。ディテールはシンプルに仕上げられているものの、そのボディーラインはコンセプトモデルそのものだ。
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34/36インディアン モーターサイクルの新型クルーザー「チャレンジャー」。新設計のエンジンは、排気量1768ccの水冷60度V型2気筒DOHC。大きな車体を支える高剛性なフレームに加え、倒立フォークや軽量アルミホイール、ラジアルマウントブレーキなど、スポーツモデルライクな足まわりやブレーキが採用されている。
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35/36日本のサスペンションブランド、SHOWA(ショーワ)は、何度もタイトルを獲得している世界スーパーバイク選手権で得たノウハウや、実際にレースで使用する技術を投入したメーカーオプションパーツの開発を進行中。写真は「カワサキZ900RS」用に開発中の高性能フロントフォークとリアサスペンション装着車。
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36/36ヘルメットブランドのSHOEI(ショーエイ)は、クラシカルなスタイルの新型フルフェイスヘルメット「グラムスター」を発表した。2018年に国内販売がスタートした、ネオクラシックなオフロードタイプヘルメット「EX-ZERO」の兄弟モデルといえる。インナーバイザータイプのEX-ZEROに対し、グラムスターは一般的な開閉シールドを採用。しかしその開閉機構まわりをコンパクトに、そしてクラシカルに仕上げている。