WRC第5戦 ラリーイタリア・サルデーニャの現場から
2011.05.09 画像・写真2011年5月8日に行われた世界ラリー選手権(WRC)第5戦は、MINIのワークスマシンが出走して注目を集めるなか、フォルクスワーゲンがWRC参戦を表明するなど、見どころ豊富。そんな「ラリーイタリア・サルデーニャ」の模様を、戦いの現場からリポートする。(文と写真=廣本泉)

WRC(世界ラリー選手権)第5戦のラリーイタリア・サルデーニャに、2012年に正式参戦を果たすMINIが、テストを目的に2台のワークスマシンを投入。1960年代のラリーモンテカルロで活躍した“Mini”の復活だ。
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WRC(世界ラリー選手権)第5戦のラリーイタリア・サルデーニャに、2012年に正式参戦を果たすMINIが、テストを目的に2台のワークスマシンを投入。1960年代のラリーモンテカルロで活躍した“Mini”の復活だ。
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MINIの主力モデルは、有名チューナーの名を冠した「MINI ジョンクーパーワークス WRC(JCW WRC)」だ。ベースは「MINIカントリーマン」(日本名:MINIクロスオーバー)。ロングホイールベースを持つことから、3ドアハッチバックのMINIよりも直進安定性が高くなっている。
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「MINI JCW WRC」には、2011年に導入された新規定に合わせて、1600ccの直噴ターボエンジンが搭載されている。エンジン開発はBMWが担当しており、WTCC用のパワーユニットを踏襲。とはいえ、ラリー競技では熟成不足が否めず、ドライバーによれば「もっとパワーが欲しい」とのこと。
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マシン開発およびラリーオペレーションは、かつてスバルのテクニカルサプライヤーを務めていた英国プロドライブが担当。BMWともタッグを組んだ経験を持っており、「M3」で制した1987年のツール・ド・コルス以来の勝利を目指している。
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シトロエンのセカンドドライバーとして活躍してきたダニエル・ソルドが開発ドライバーを担当。「まだまだテストの段階。きっちりと完走したい」との言葉どおり、コンスタントな走りを披露。WRCのデビュー戦で見事6位完走を果たした。
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2009年のIRC(インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ)のチャンピオン、クリス・ミークもMINIのワークスチームに大抜てきされた。デイ1でスロットル、デイ2で水漏れのトラブルに見舞われリタイアすることとなったが、デイ1では4番手につけるなどそのスピードを証明した。
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MINIのWRCチームは、ワークスマシンとともに、2台の“カスタマーマシン”を投入。2009年および2010年のPWRC王者、アルミンド・アラウジョもそのひとりで、「WRカーといよりもスーパー2000仕様車に近い」と語りながらも、12位で完走を果たした。
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レギュレーションの変更に合わせてシトロエンは「DS3 WRC」を投入している。C4で培った経験をフィードバックしながらも、ラリー専用に開発されたエンジンなど新たな技術を投入。これまで消化した5戦のうち4戦で勝利を獲得している。
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2010年にドライバーズ部門の7連覇を果たしたセバスチャン・ローブは今年も健在だ。開幕戦のスウェーデンこそ、雪かき役に苦戦して4位に甘んじたが、その後はすべてのラリーで表彰台を獲得するほか、第2戦メキシコ、第5戦イタリアを制覇。8連覇に向けてタイトル争いを支配している。
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昨年までジュニアチームで活躍してきたセバスチャン・オジエがワークスチームに昇格。その期待に応えるかのように第3戦ポルトガル、第4戦ヨルダンで2連勝を達成した。ローブにとって最大のライバルで、今後も激しい同門対決が続くことになりそうだ。
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フォード陣営は「フィエスタRS WRC」を投入。これまでのフォーカスより優れたシャシーバランスを持っており、開幕戦のスウェーデンで表彰台を独占した。が、グラベルでは足まわりとデフのセッティングに苦戦。今後の熟成が期待される。
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開幕戦のスウェーデンを制覇したミッコ・ヒルボネン。グラベル戦ではパンクやトラブルに苦戦を強いられるものの、抜群の安定性は健在だ。確実にポイントを積み重ねており、ランキング2位につけている。
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ヤリ-マティ・ラトバラは持ち前のスプリント能力を発揮。これまでの序盤戦はマシントラブルやパンクにたたられてトップ争いから脱落することが多かったが、マシンの熟成が進めばラトバラも上位争いに加わってくるはずだ。
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元スバルのワークスドライバー、ペター・ソルベルグも昨年と同様に自社チームでエントリーしている。マシンは「シトロエンDS3」。ワークス勢に匹敵するスピードを見せるもののトラブルに苦戦。第5戦イタリアでは3位入賞を果たし、今季初めて表彰台に登った。
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スズキのワークスチームで活躍したパー-ガンナー・アンダーソンもプライベーターとして散発的な活動を展開。マシンは「フォード・フィエスタ」。第5戦イタリアではSS2でサスペンションを破損し、15位に終わった。
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WRCのグラベル戦では翌日の出走順をコントロールすべく、意図的なペースダウンが行われがちだが、第5戦イタリアではローブが常に全開のプッシュを披露。先頭スタートの“掃除役”として苦戦しながらも、真っ向勝負で今季2勝目を獲得した。
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第5戦イタリア・サルデーニャの会場で、フォルクスワーゲンがついに2013年からのWRC参戦を発表した。マシンは「ポロR WRC」で、会場にはチーム監督としてうわさされている2010年のダカールラリーの王者、カルロス・サインツ(右)とドライバーのひとりと目される2011年のダカール王者、ナッサー・アルアティヤーらが登場した。
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マシンは、世界で最も成功したコンパクトカーとされる「ポロ」をベースに開発。記者会見の会場に展示されたのはモックアップだが、大胆に張り出したフェンダーなど、すでにこの段階から迫力あるフォルムに仕上がっていた。WRCに最適なディメンションとなっているだけに、今後の動向に注目したい。
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同時開催のSWRC(スーパー2000世界ラリー選手権)第3戦では「フォード・フィエスタS2000」を駆るオット・タナクが今季初優勝を獲得した。
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S2000仕様車に対抗すべく、グループN車両にプラスアルファの改良を施した「三菱ランサーR4」がデビュー。残念ながらSS6でエンジントラブルに見舞われてリタイアを喫した。