トラバント・サファリツアー@ベルリン
2009.11.12 画像・写真東西ドイツを隔てていた壁が崩れて早20年、いまベルリンでは、旧東ドイツを回顧するイベントやモノが大流行している。旧東ドイツを代表するクルマ「トラバント(トラビ)」に同乗試乗できるという「トラビ・サファリツアー」も、そのひとつだ。(文=沼口高幸/写真=Kサワベ)

旧東ドイツを代表するクルマ「トラバント(トラビ)」に同乗試乗できるという「トラビ・サファリツアー」の受付。かなりの人だかりができている。料金は30ユーロ(4名乗車のひとり料金)〜60ユーロ(1名乗車の場合)。
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旧東ドイツを代表するクルマ「トラバント(トラビ)」に同乗試乗できるという「トラビ・サファリツアー」の受付。かなりの人だかりができている。料金は30ユーロ(4名乗車のひとり料金)〜60ユーロ(1名乗車の場合)。
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旧東ドイツを代表するクルマ「トラバント」は、2008年1月から施行された排ガス規制により、ドイツ国内での走行ができなくなってしまった。今回「トラビ・サファリツアー」を主催する「ERHA TOURS(本部ドレスデン)」が、観光事業の名目で特別走行許可を取得し、走行が可能になったのだ。納車まで10年待ちと言われた東の夢のクルマに乗れるのは現在ここしかない。
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ツアーの参加者たち。最近は欧州以外からの参加が多いという。
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最終型である「トラバント601S」。東ドイツ庶民の憧れのクルマだった。ボンネットの「S」は、トラバント名づけの元になった「スプートニク」の頭文字だと思われる。
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「601S」のリアビュー。初期型の「P50」「P60」(1964年以前のモデル)は、めったに見ることができない希少車になった。
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タイヤサイズは145/80R13。
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トラバントに搭載されるのは、2ストロークの594cc2 気筒エンジン。最高出力は23ps/3800rpm、最大トルク5.5kgm/3000rpmと、かなり非力だ。
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太いシフトレバーは、ステアリングコラムから伸びる。ギアはコンスタントメッシュの4段で、変速時は常にダブルクラッチを必要とする。
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スピードメーター。ダッシュボードに燃料計はなく、次の給油タイミングはトリップメーターを記憶するか、燃料タンクのキャップを開けて確認するしかない。
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燃料タンクは、バルクヘッド側に取り付けられている。車体の強度不足もあり、フロントからクラッシュする事は即、大惨事につながった。
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シンプルなフロントシート。余分なものがないので、全長3500mm、全幅1500mmでも大人4人が乗車できる。
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「トラビ・サファリツアー」のネーミングどおり、ゼブラカラーもある。
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このツアーを主催する「ERHA TOURS」の社長のトラビは、カブリオレ仕様。気分はフェラーリ! 名づけて“フェラービ”。
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混合燃料方式(ガソリンとエンジンオイルを混ぜる)のため、大量の紫煙を吐きながら走行するトラビ。欧州での規制が強化されれば、ツアーの消滅もありうるらしい。
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ベルリン市内を走るトラビ。このツアーはあらかじめコースが決まっており、自由に走りまわることはできない。こんな光景が見られるのは、ツアーが開催されている期間のみ。
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ベルリンには約60台のトラバントがあると言われている。
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ベルリンの名所、戦勝記念塔「ジーゲスゾイレ」を走るトラビ。エグゾーストノートはオートバイのようなパキパキ音だ。
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普通なら走行許可が無い違反車両だけに、ツアー中もMPの検問にあう。が、実はこれ“ドッキリ・アトラクション”なのだ。自由に走れないぶん、何か面白い事ができないかとオーナーが考えた妙案。
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全員がクルマから出され、MPから免許やパスポートの提示を求められたりして、粋な演出だ。まだドッキリだとは知らされていないツアー客だが、みんな苦笑い。その後真相が明かされ、出発地点に戻るのだ。
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気になるこのツアー。ベルリン市内を巡るコースは、クラシック(ベルリン市内の歴史的な場所)とワイルド・イースト(旧東側限定)の2コースが用意されている。ツアーは2人以上16人までで実施され、所要時間は1時間。走行中は無線ガイドで観光案内を聴くことができるので、いったいドコを走っているんだ? と迷う事もないのである。排ガス規制がこれ以上厳しくなると、ツアーが消滅する可能性も残されており、この夢の遺物に乗るチャンスは今しかないかもしれない。