【SUPER GT 2018】第6戦菅生で山本&バトンのRAYBRIG NSX-GTがポール・トゥ・ウイン

2018.09.17 自動車ニュース 古屋 知幸
SUPER GT第6戦を制した山本尚貴/ジェンソン・バトン組のNo.100 RAYBRIG NSX-GT。
SUPER GT第6戦を制した山本尚貴/ジェンソン・バトン組のNo.100 RAYBRIG NSX-GT。拡大

2018年9月16日、SUPER GTの第6戦が宮城県のスポーツランドSUGOで開催され、GT500クラスはNo.100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/ジェンソン・バトン)が、激戦を制してポール・トゥ・ウイン。バトンにとっては喜びあふれる初優勝となった。GT300クラスもNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)が完勝を果たした。

GT500クラスのスタートシーン。トップのRAYBRIG NSX-GTに、No.12 カルソニック IMPUL GT-Rとほかの「NSX-GT」が続く。
GT500クラスのスタートシーン。トップのRAYBRIG NSX-GTに、No.12 カルソニック IMPUL GT-Rとほかの「NSX-GT」が続く。拡大
No.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/伊沢拓也)は2位でゴール。ホンダのワンツーフィニッシュを実現した。
No.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/伊沢拓也)は2位でゴール。ホンダのワンツーフィニッシュを実現した。拡大
予選2位のポジションからスタートしたNo.12 カルソニック IMPUL GT-R(佐々木大樹/ヤン・マーデンボロー)は3位でレースを終えた。
予選2位のポジションからスタートしたNo.12 カルソニック IMPUL GT-R(佐々木大樹/ヤン・マーデンボロー)は3位でレースを終えた。拡大

絶対不利な状況の下で

今シーズンも残り3戦となる第6戦SUGOを前に、NSX-GTの性能調整(BoP)が10kgアップされた。今季のNSX-GTは5戦2勝3ポールポジションと好調で、特認のミドシップ車でもあるだけに致し方ない。シーズン最大のウェイトハンディとなる第6戦とあって、NSX-GTの不利もささやかれた。

ところが、予選はウェイトハンディ80kgを背負ったRAYBRIG NSX-GTがポール。予選トップ5台中4台がNSX-GTと圧巻だった。今季のNSX-GTは軽量化と低重心化をより進めている。ホンダの佐伯昌浩プロジェクトリーダーは、BoPの10kg増加に対して「さらにグラム単位の軽量化を行い、重心を下げ、コーナリングスピードを損なわないような準備をした」と言う。さらに「同じエンジンを使うスーパーフォーミュラでの経験を生かし、タイヤとのマッチングやドライバビリティーに重きを置いたエンジン特性を追求した」とも。まさに、その成果が表れていた。

決勝スタートでは山本がポールから逃げを打つが、2番手のNo.12 カルソニック IMPUL GT-Rのマーデンボローもウェイトハンディが36kgと軽めであっただけに1秒差程度で食い下がる。そして、タイヤが厳しくなってきた山本は23周目にトップから陥落。しかし、それでもカルソニックの背後にきっちりつけてチャンスをうかがった。

RAYBRIG NSX-GTは、少し早めの35周目にピットイン。39秒の作業でバトンを送り出す。対してカルソニックは39周目にピットへ。ここで43秒と少し時間が掛かった。RAYBRIGの前でコースに戻れた佐々木大樹だったが、冷えたタイヤではRAYBRIGを抑え切れず、トップは交代する。

この後、バトンは佐々木より1秒弱速いペースでスパート。広がる差に焦りが出たか、佐々木は45周目の最終コーナーでアウトに膨らんでコースアウト。すぐにコースに戻れたが、芝生を走ったためにラジエーターには葉や土が詰まり、この後オーバーヒートに悩んでペースも落ちた。このためNo.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀)に抜かれて3番手に下がった。

レースを制したジェンソン・バトンを、チームメイトが歓喜の声とともに迎える。
レースを制したジェンソン・バトンを、チームメイトが歓喜の声とともに迎える。拡大
勝利を喜ぶTEAM KUNIMITSUの3人。写真左からジェンソン・バトン、高橋国光総監督、山本尚貴。
勝利を喜ぶTEAM KUNIMITSUの3人。写真左からジェンソン・バトン、高橋国光総監督、山本尚貴。拡大

“ルーキー”バトンに重なるピンチ

楽になったはずのバトンだが、この後にSUPER GTの経験不足が露呈する。彼は2017年にスポットでSUPER GTに初参戦し、今季もまだ6戦目という“ルーキー”だ。15秒以上のマージンがあるにも関わらず、57周目の最終コーナーでGT300車両をアウトから抜こうとして、ダーティーな部分に入ってしまう。これで佐々木と同様にコースアウト。それでも、幸運なのか“ベテランの知恵”なのか、ほとんど芝生を走らなかったため、タイムロスも最小限で、オーバーヒートの不安も抱えずに済んだ。

「クレージーなレースになると皆が言っていたけど、ホントだった」とバトンが述懐するとおり、彼の試練はまだ終わらない。終盤、GT300車両のクラッシュでセーフティーカーが入り、リスタート後は6周のスプリントとなった。ここまで築いたARTAとの14秒のマージンがなくなり、野尻の猛攻を受けることになる。しかも、コースの2カ所でコースアウトする車両が出て、黄旗区間(追い越し禁止)もある難しい状況だ。しかし、こういう修羅場こそ“F1王者のキャリア”がモノを言った。最後まで野尻にすきを見せずに、バトンは走り切ってゴール。自身7戦目での初勝利。そして、今シーズンのドライバーズランキングでも山本と共にトップに立つことになった。

初優勝のバトンは「F1を経験していればSUPER GTは簡単だろうという人もいますが、違います。ここは、とてもコンペティティブでタフです。でも、そのタフなレースを楽しむことができたし、最後はアメージングな結果につながりました」と、レース後に笑顔を浮かべていた。一方、山本は「(ウェイトハンディが減る)次戦も僕らだけがリストリクターが絞られる状況です。当然、楽ではないでしょうが、クルマとタイヤが決まれば速く走れることを今回証明できたと思うので、次戦も優勝を目指します」と、NSX-GTに手応えを感じつつ、タイトルを視野に入れ気を引き締めていた。

GT300クラスでは、No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(写真先頭)が圧倒的な強さを見せて勝利した。
GT300クラスでは、No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(写真先頭)が圧倒的な強さを見せて勝利した。拡大
2位のNo.10 GAINER TANAX triple a GT-R(星野一樹/吉田広樹)。予選5位からスタートし、一時はトップ争いを演じたが及ばず。
2位のNo.10 GAINER TANAX triple a GT-R(星野一樹/吉田広樹)。予選5位からスタートし、一時はトップ争いを演じたが及ばず。拡大
勝利のポーズを決める、R&D SPORTのメンバー。写真左から井口卓人、渋谷 真総監督、山内英輝。
勝利のポーズを決める、R&D SPORTのメンバー。写真左から井口卓人、渋谷 真総監督、山内英輝。拡大

GT300はSUBARU BRZ R&D SPORTの“完璧な勝利”

この菅生戦にGT300クラス必勝態勢で乗り込んできたのは、SUBARU BRZ R&D SPORTの面々。今季は開幕戦以外の4戦を予選ひと桁でスタートしながら、第3戦タイの3位表彰台以外の3戦はリタイアと、マシンの信頼性がウイークポイントになっていた。加えて、昨今のGT300はマシンごとにコースの得意不得意がはっきり出る。ここ菅生はコーナリングに強みを見せるSUBARU BRZが得意とするレイアウトでもある。

結果、予選のQ1とQ2ともに1位を獲得。しかし、Q2でポールを決めた山内英輝は「ここまで何度もトラブルに見舞われてきたが、チームがその度に対策してくれた。ポールはその成果。ただ、大事なのは明日(決勝)です」と気を緩めない。

そして迎えた決勝でも、山内がわずか3周で5秒ものリードを築いて独走。最大のピンチは、セーフティーカー導入で訪れたラスト6周のスプリント。そこまで実質的にトップを一度も譲らずに作った約19秒のマージンはゼロとなり、井口卓人は追うNo.10 GAINER TANAX triple a GT-Rの星野一樹と一騎打ちに。しかし、この日のBRZは完璧だった。毎周1秒の差をつける激走で後続を振り切ってみせた。井口と山内は、スタンドに陣取っていたスバルの大応援団と今季初勝利の喜びを分かち合った。

次戦、第7戦の決勝レースは10月22日に大分県のオートポリスで開催される。

(文=古屋知幸/写真提供 GTA)

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