スマート#1ブラバス(4WD)/#1(RWD)【海外試乗記】
何もかもが変わった 2022.12.16 アウトビルトジャパン ジーリーという新たなパートナーのもとで開発された「スマート#1」は、大きくて、電動で……。そして、「ブラバス」バージョンは428PSという驚異的なパワーを持っている。初走行をリポート!※この記事は「AUTO BILD JAPAN Web」より転載したものです。
ダイムラーからジーリーへ
スマートといえば、全長2.50mのエレファントスケート「フォーツー」を思い浮かべるが、このフォーツーは25年以上前から、最近では電気自動車の「EQフォーツー」として走っている。しかし、新型スマートはスマート#1と呼ばれ、もはやスモールカーではない。全長4.27mと、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や「MINIカントリーマン(クロスオーバー)」のような大きさで、背の高いSUVのフォーマットで登場した。
電気自動車をつくるというアイデアは、すでにスウォッチグループの創業者であるニコラ・ハイエックが持っていたものだ。この点において、#1は都市型サブコンパクトの原点と共通するところがある。スイスの企業家は、スウォッチの時計を模した電気自動車を街で使いたいと考えていた。しかしフォルクスワーゲンはこのプロジェクトを望まず、1994年にダイムラーが買収に参加し、1998年にスマートの権利を完全に引き継いだのだった。
シュトゥットガルトの会社にとって問題だったのは、スマートが長年にわたってカルトカーにはなったものの、ベストセラーにはならなかったことである。結局、ダイムラーは中国のパートナーである吉利汽車(ジーリー)にこのプロジェクトを譲り渡すことになった。今回、スマートは#1として復活し、後輪駆動の3つの装備ラインと、スポーティーな「スマート#1ブラバス」が用意された。
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全輪駆動で最高出力428PS
そう、スマートとボツロップ(NRW州)のチューナー、ブラバスとの協力関係は続いているのだ。そうなると、デザインだけでなく、性能データもルール地方の方言を話すようになり、より武骨になるのは当然といえば当然だ。フロントとリアのアクスルに搭載された2基の永久磁石モーターにより、ブラバスは全輪駆動のスマートというだけでなく、印象的なパフォーマンスを発揮するマシンとなったのだ。
ブラバスモードで両モーターをフルパワーで稼働させると、428PSを発生し、543N・mの最大トルクが車重1.9tの#1を静止状態から100km/hまで3.9秒で押し上げる。
これは、ギアチェンジによってけん引力が中断されることがないため、シームレスに行われる。Eペダルを力強く踏み込む際には、頭をヘッドレストに押しつけるという予防策をとる必要がある。さもないと、ロケット発射の際に突然ぶつかる。でも、われわれは知っている。後頭部への小さな打撃が、思考力を高めることを。
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少ない費用で大きな力
スマート#1ブラバスの加速は、少なくとも価格と同じくらい印象的だ。4万8990ユーロ(約730万円)という価格で、同等の性能データを持つ内燃機関車が存在しないからだ。
ブラバスのツインモーターは、シングルモーターの兄弟機より速く走れると思っている人は、がっかりするだろう。左右のデジタルスピードメーターには、180(km)という数字が表示されている。
ブラバスがどの程度シャシーに影響を与えているかは、短時間の初走行では判断できなかった。とはいえ、パワフルな#1は路面の凹凸を気持ちよく乗り越え、コーナーを素早く曲がるために十分な引き締めを行うことができるのも事実だ。
高性能電動スマートが限界に達するのは、車軸の間にあるバッテリーの重量が、高速走行で横向きに押し出され始めたときだ。幸いにも、制御システムが巧みに介入し、スマートを安定させる手助けをしてくれる。
シングルモーターでも本当に速い
もちろん、272PSを発生するスマート#1は、公道でも速く走ることができる。343N・mの最大トルクを後軸にかけると、電気自動車は6.7秒で100km/hに到達し、信号待ちでも爽快にスタートできる速さを保っている。特に、どちらの駆動方式も180km/h以上のスピードは出せないので、注意が必要だ。
しかし、スマートのバリエーションは最高速度がほぼ同じなだけでなく、容量66kWhのニッケルコバルトマンガン電池も全車共通だ。最良のケースでは、#1は440km、#1ブラバスでは400kmの航続距離を可能にさせる。われわれの試乗では、実走行で350km弱であった。
充電には150kWの急速充電の場合、30分で10%から80%までバッテリーを満たす。22kWのコンセントでは3時間かかる。4万1490ユーロ(約620万円)から購入できる低価格のエントリーモデル「#1 Pro+」のみAC充電は7.5kWに制限され、7.5時間必要となる。
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クラスを超えた高級感
スマート#1では、内外装ともにゴーデン・ワグネル率いるメルセデスのデザインチームが仕上げを行った。縁がないドアハンドルはポップアップ式。フロントとリアで共通したデザインが印象的で、Cピラーには大きな「Smart」のロゴがあしらわれている。また、#1ブラバスにはフロントボンネットに2つのエアインテークを設け、スポーティーなキャラクターを強調している。
#1に乗り込むと、素材選びや作り込みに力が入っていることがわかる。このクラスでは、スマートは高級車である。「フォルクスワーゲンID.3」などとは全く違う。
往年の丸型メーターに代わる幅の狭い9.2インチデジタルメータークラスターのグラフィックにも文句のつけようがない。見やすく、邪魔にならない色で、とても情報量が多いので、ドライバーは運転に必要なものすべてをしっかりと見ることができる。
また、これらの情報は、要望に応じて、シャープなヘッドアップディスプレイで表示することも可能となっている。センターコンソールのエアベントの上にそびえ立つ12.8インチのタッチスクリーンのグラフィックは、そのソフトウエアがクアルコム8155チップセットと128GBのメモリを搭載していることもあって同様に鮮やかで、視覚的に成功している。
ナビゲーションシステムの地球儀を回転させたり、AIアシスタントのアバターとしてキツネのアニメーションを表示させたりといった、おちゃめなグラフィックも計算能力があればこそ可能なのだ。すべてが楽しく、魅力的で、新しいスマートに似合っている。
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「フォーツー」が帰ってくる
吉利汽車(ジーリー)が提供する「Sustainable Experience Architecture」、すなわちSEAプラットフォームもぴったりフィットしている。かつて自動車界でもてはやされたフォルクスワーゲンの「MQB(Modular Transverse Toolkit)」のような柔軟性を備えているのだ。マイクロカー、アッパーミッドレンジ車、3.5~5.5tの商用車の製造に使用することができるように出来ている。また、現在生産中止となっているマイクロカー「スマート・フォーツー」が、新たに電気自動車として発売されることも示唆されている。
結論
全長4.27mのスマート#1は、まさにコンパクトカー。つまり、スマートブランドがクラスアップしたことを意味している。これは純粋な電気駆動システムにも適用され、267~428PSの出力範囲となる。今となっては、e-driveのことを考えれば、それほど驚くことではないかもしれない。とはいえ、内燃機関でこれだけの性能を持つクルマは、4万2000ユーロ(約630万円)からという価格で手に入るわけではない。また、スマート#1は、コンパクトクラスにはあまりない、良い意味での高級感を持たせることに成功している。これはシャシーだけでなく、インテリア全体の素材にも言えることで、それは容量323リッターのラゲッジルームのフカフカのフェルトにまで及んでいるのだ。
(Text=Holger Preiss/Photos=Mercedes-Benz AG)
記事提供:AUTO BILD JAPAN Web(アウトビルトジャパン)
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AUTO BILD 編集部
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