スマート#1ピュア(RWD)/#1ブラバス(4WD)【海外試乗記】
実はかなりの実力派 2024.08.20 アウトビルトジャパン 続々とラインナップを拡大している、スマートブランドのフル電動SUV「スマート#1」とはどんなクルマなのか? その価格とデザインからパワーユニット、イクイップメント、試乗した印象まで、すべての情報をお届けしよう。※この記事は「AUTO BILD JAPAN Web」より転載したものです。
新たなエントリーグレードが登場
2022年に生まれた“#1”は、スマートの新たな幕開けとなった。中国のメーカー、吉利汽車との合弁事業から生まれたシティーカーブランドの最初の車種である。また、#1はブランド初となる、電気自動車としてゼロから設計されたモデルでもある。高度なデジタル化とファンキーなデザインは、若いターゲット層へのアプローチにも大いに役立つはずだ。
メルセデスと吉利汽車は、合弁事業において責任の分担を厳格に行っている。#1の技術開発と生産は中国メーカーが担当するが、デザインは引き続きシュトゥットガルトが担当するのだ。
そんなスマート#1は、2024年夏に向けて2つの新バリエーションが追加され、製品ラインナップを拡大する。
これまでは、「スマート#1プロ」が3万7490ユーロ(約637万円)で販売されていた。今回新たに、3万4990ユーロ(約595万円)の「ピュア」グレードに加え、3万9900ユーロ(約680万円)の「ピュア+」も発売する。このほかすでに、「プロ+」「プレミアム」「パルス」「ブラバス」といったバリエーションが販売されている。
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デザインには妥協なし
スマートのエクステリアはモダンですっきりしており、ほとんど角がなく、鋭いエッジもない。市販車は、2021年にミュンヘンで開催されたIAAで発表されたスタディーモデルに近いデザインである。フロントエンドは完全には閉じておらず、LEDヘッドランプの下にエアインテークがある。
ローンチエディションのカラーコントラストを強調したルーフは、視覚的に浮遊感があり、Cピラーに向かって下がっている。ドアハンドルはドアパネルと同平面になるようボディーにはめ込まれ、必要なときだけ現れる。リアはメルセデスの「EQA」をほうふつとさせるフルレングスライトで、フロントのデザインに合わせている。
ボディーサイズは、これまでのモデルポートフォリオと共通するところはない。数mmの誤差はあるものの、そのサイズは「フォルクスワーゲンID.3」に匹敵する。オールエレクトリックプラットフォームの採用により、フロントボンネットの下にはトランクルームが確保されている。
【サイズ一覧】
全長:4270mm
全幅:1822mm
全高:1636mm
ホイールベース:2750mm
荷室容量:273~411リッター
トップモデルは0-100km/hが4秒以下
スマート#1はすべて電気自動車だが、グレードにより駆動システムは異なる。基本となるパワーユニットは、最高出力272PSの電動モーター。これがリアアクスルを駆動する。電気は容量49kWhのバッテリーに蓄えられ、航続距離は最大310kmとなる。
上級グレードには容量66kWhのバッテリーが搭載され、駆動方式により航続距離は最大420kmとなる。大容量バッテリーを搭載するエントリーモデルは、272PSの後輪駆動モデル。その上に位置するのが428PSの四駆モデルだ。
トップモデルのスマート#1ブラバスは、それだけの大パワーを発生する。チューナーの手が入ったこのSUVは加速も鋭くなっている。わずか3.9秒で静止状態から100km/hにまで達するのだ。ただし、最高速度は180km/h止まりだが。
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特筆すべきは車内の広さ
インテリアは2021年のスタディーモデルと比べても遜色ない。運転席と助手席はフリーフローティングのセンターコンソールで仕切られており、フロントのスペースは申し分なく、コックピットにはほとんどボタンがない。
インフォテインメントシステムと車両に備わる機能の設定は、中央の12.8インチタッチスクリーンで行う。計器類は平たい9.2インチディスプレイにデジタル表示され、さらに10インチのヘッドアップディスプレイも備わっている。大きなパノラミックガラスルーフは、空間的な広がりにプラスの効果をもたらしている。
特に特筆すべきは、背の高い人でも後部座席にゆったりと、しかも真っすぐに座ることができることだ。つまり、少なくとも、スペースという点では大人4人での旅行に十分適している。
前述のとおり、ベーシックグレードはプロではなくピュアになった。従来のエントリーグレードと比較して、ピュアに欠けているのはパノラミックガラスルーフで、そのほかにはフロントシートヒーター、アンビエントライト、携帯電話の充電システムが省かれている。
このシティーSUVのインテリアは、12.8インチのタッチスクリーンがコントロールセンターを形成している。デジタルアバターは、車両とのインタラクション(やり取り)を可能な限り自然にできるように設計されている。さらに、サブウーファーを含む最大13個のラウドスピーカーが適切なサウンド体験を提供する。
なかなか優秀なコンパクトEV
路面の段差を乗り越えてもスマート#1のハンドリングは非常に快適で、コーナリングを楽にこなすことができる。限界を感じるのは、高速でのコーナリング中に、車軸間のバッテリーの重量ゆえに横方向に押され始めるときだ。幸いなことに、制御システムが非常に巧みに介入し、スマート#1を軌道に戻すように助けてくれるが。
スマートがクラスアップしたのは、パワフルな走りのおかげだけではない。このブランドは、コンパクトクラスではめったに見られない高級感をスマート#1に与えることに成功している。これはシャシーだけでなく、インテリア全体に使用されている素材にも当てはまり、トランクルーム内のフカフカのフェルトにまで及んでいる。
われわれは、最高出力428PSのスマート#1ブラバスにも試乗している。その最初の印象を裏づけるように、望めば非常に力強い走りが体感できる。品質も良く、スペースもそこそこある。加速は全くシームレスだ。e-pedalをフロアまで踏みつけようとするなら、念のため頭をヘッドレストに押し付けておく必要がある。そうしないと、“ロケット発射”の際に突然頭をぶつけてしまうからだ。一方、車内が快適で装備が充実しているのはうれしい。
スマート#1は、ゴールデンステアリングホイール2023の「5万ユーロ以下のベストカー」部門で賞を手にしている。このコンパクトな電気自動車は、実に優れたコネクティビティー、最高のボイスコントロール、そして現代性も印象づけた。運転の楽しさと航続距離も印象的である。
結論
スマートは#1で全く新しい一面を見せた。優れた品質、十分なスペース、パワフルな駆動システム、そして急速充電技術。軽快なブラバス仕様がまだ用意されているのもうれしい。
(Text=Peter R. Fischer and Andreas Huber/Photos=Mercedes-Benz AG)

AUTO BILD 編集部
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