日産ティーダラティオ15M(CVT)【ブリーフテスト】
日産ティーダラティオ15M(CVT) 2004.11.26 試乗記 ……214万9350円 総合評価……★★★★ 2004年10月29日に発売された、日産の3ボックスセダン「ティーダラティオ」。9月に発売した「ティーダ」から派生したコンパクトセダンだ。その「M」グレードに、自動車ジャーナリストの森口将之が試乗した。
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意味のある5ナンバーセダン
機能的には2ボックスのほうが有利なのはわかっている。しかし、機能100%の機械ではないのがクルマというものである。ベテランドライバーは、昔から慣れ親しんだセダンというスタイルに安心感を抱く。隣近所との付き合いが密な地方都市では、まわりと同じ5ナンバーに乗ることが仲間意識を深めてくれるのかもしれない。
クルマをほんとうに必要としているのは、大都市よりも地方都市、若者よりも高齢者のほうだ。ティーダが2ボックスのほかに、3ボックスのラティオを用意した背景には、サニーの後継車であるということ以上に、こうした事情が絡んでいるのではないかと思っている。
しかし、ラティオは「トヨタ・カローラ」と同じ道は歩まなかった。最近の日産が得意とするモダンファニチャー風デザインを、ティーダに続いて取り入れることで、ライバルとの違いをはっきりさせたのだ。でもそれは、無理やり若者趣味を押し付ける類いのものではない。ティアナがそうだったように、オジサンやオバサンにも受け入れられるモダンである。
あとに書くように、ラティオは走りの面では、もう少し洗練してほしいという部分がいくつかある。でも仮に、自分がいまのような仕事に就いていなくて、地方都市に住んでいて、そろそろ定年を迎えようかという歳になっていたら、このクルマの出現を喜んでいるんじゃないだろうか、という気もする。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ティーダ」から派生したコンパクトな3ボックスセダン。ルノーと共同で開発した新型オールアルミ製エンジン「HR15DE」(109ps、15.1kgm)を搭載し、4ATおよびCVTを介して前輪を駆動(電動4WDもあり)するなどの、基本骨格はティーダと同じである。ティーダのモダンリビングを思わせるインテリアを活かしつつ、木目調パネルなどでアクセントをつけて質感を向上。「モダンで高級」をキャッチにハッチバックとの差別化を図った。セダンならではの大容量ラゲッジルームを持つ。
内装や便利装備、AV機器の違いで3グレードに分かれる。トランスミッションは「S」のみが4ATで、「M」「G」がCVT(4WDは4AT)。タイヤサイズやサスペンションなどのほかの走りの機能に主だった違いはない。
(グレード概要)
15MはFF+CVTを組みあわせた、量販グレード。カラードドアミラーやオートライトシステムを備え、インテリアには木目調パネルやクオリティベロアのシート地、4スピーカーなどが奢られる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ハッチバックのティーダをベースとするが、フィニッシャーはメタル調から木目調パネルに置き換えられ、シフトレバーも木目調とすることで、落ち着き感を高めている。質感はこの木目調パネルを含めて、このクラスの国産車としては高いレベルにある。一段出っ張ったセンターパネルに集められたスイッチは扱いやすく、デザインも洗練されている。気になるのは、着座位置に対してインパネの位置が高く、しかも奥行きがあるので、車両感覚が掴みづらいこと。これもハッチバックも共通だが、保守的なユーザーが多いラティオだからこそ、改善してほしかった。
(前席)……★★★★
デザインはハッチバックと同じ。マテリアルも、中間グレードの15Mは専用のベロアを用意するが、ベーシックな15Sと最上級の15Gは共通。高めの着座位置は乗り降りしやすく、座り心地は分厚い座布団のようにソフトで、クルマのコンセプトに合っている。インテリアカラーはハッチバックがそうであるように、サンドベージュとブラックが用意されるが、木目調パネルにはサンドベージュのほうが合っているように思えた。
(後席)……★★★★
ハッチバックのような前後スライドは付かないが、信じられないような広さはそのまま。身長170cmの自分が運転姿勢をとった後ろに座ると、写真のように楽に足が組める。頭上空間も余裕がある。ソフトな座り心地は前席に近い。クッションにもう少し傾きをつけてくれると、姿勢が落ち着くのではないかと思う。ドアの開口部はハッチバックより少し小さくなったが、高めのルーフのおかげで、乗り降りは依然としてしやすかった。
(荷室)……★★★★★
「和製VWジェッタ」の称号を与えたくなるほど広い。トランクリッドの間口部は限られているものの、幅こそ5ナンバーレベルだが、深さ、奥行きともにたっぷりある。467リッターという容量は、ハッチバック「ティーダ」の後席をいちばん前にスライドさせた状態を、さらに上回るという。ただしトランクスルーになるのはセンターアームレスト部分だけ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
なぜかハッチバックより20kg軽いボディのおかげで、新開発の1.5リッターエンジンとCVTによる加速に、不満はまったくない。低中回転域のトルクを重視したエンジンの扱いやすさも光るが、なによりもCVTのデキがいい。自然なレスポンスはCVTであることを忘れさせ、一方では無段階変速ならではの滑らかさがしっかり味わえる。エンジンブレーキが効くようになるスポーツモードもあり、坂道などで重宝した。流れに乗って走るときにも、エンジン回転を効率的に抑えてくれるので、かなり静かでさえある。エンジン音は3000rpmを越えると高まるが、不快な音質ではなかった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
クルマの性格やシートの座り心地を考えれば、乗り心地は硬め。サスペンションがあまり動いていない感じで、路面が悪くなると直接的なショックが気になった。もう少ししなやかに動く足が欲しい。市街地中心の試乗だったので、ハンドリングをくわしくチェックすることはできなかったが、おおむね軽快かつ安定している印象。ただし電動パワーステアリングは、低速ではふつうに軽いのに、速度を上げると人工的な重みが加わって、かなり不自然。似たような傾向は、他の国産メーカーにも見られる。ヨーロッパ車の電動パワステの多くが、速度を上げるほど印象が良くなるのと対照的。日欧のスピードレンジの違いは、こんなところにも出ていた。
(写真=峰昌宏/2004年11月)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2004年11月5日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)185/65R15 88S(後)同じ
オプション装備:15インチアルミロードホイール(6万3000円)/キセノンヘッドランプ(5万2500円)/インテリジェントキー+エンジンイモビライザー(5万2500円)/カーウィングス対応TVナビゲーションシステム/ステアリングスイッチ+サイドブラインドモニター&バックビューモニター+ETCユニット(32万7600円)/SRSカーテンエアバックシステム(4万7250円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(9):高速道路(1)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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