「シートの快適性について」
2003.07.10 クルマ生活Q&A シート「シートの快適性について」
クルマのシートは、輸入車のほうが良いとよく耳にしますが 、基準の体格(身長、体重、座高)なんかは、メーカーによって違うのでしょうか。(SBさん)
お答えします。いまはほぼ同じです。なぜならば、安全基準を満たすために、それが求められているからです。主要マーケットである米国の基準では、100万人のうち95パーセントの安全性を確保することが求められています。この場合、安全性というのは衝突安全性の高さを基準としたものと考えてよいでしょう。乗り心地は犠牲になっている部分があります。
十数年前までは、ヨーロッパ車のシートは、疲れにくく良質であるといわれていました。ヨーロッパではイスの歴史が日本に比べて長く、長距離をメインに乗るということもあり、たとえ大衆車であっても手を抜かないで作っている、というのが定説でした。
いっぽう日本のメーカーは、人体計測法にもとずいた数学的な座標分析により、シートの形状やクッションの固さを決めてきました。しかしこれでは経験値によるシートづくりに負けてきました。
しかしある時期からヨーロッパでもコスト削減が叫ばれるようになって、日本メーカーのようにコンピュータを使ったシートづくりをするようになってきました。結果、シートの質はかつてほどよくなりました。
ただし、最近ではシートづくりがまた進歩してきました。トヨタのファンカーゴのシート設計者に話を聞いたとき、60年代の「シトロエン2CV」のシートを参考に、小型車でも簡素で乗り心地の良いものを考えて作った、と言っていました。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。