SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?

2025.10.21 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

リアウィンドウにワイパーが装着されているセダンは非常に数が少ないと思います。SUVやミニバンでは一般的なのに、セダンにあまり採用されないのはどうしてですか?

自動車という工業製品は、もともとはセダンみたいな形から始まっています。それで、さほどリアワイパーの必要性はなかったのですが、ある時期から2ボックスタイプのクルマが多く出回るようになり、車体の後端に切り立ったリアウィンドウに、跳ね上げた泥や砂、ほこりなどが付着して後方視界をさえぎるケースが増えてきました。

つまり、話が逆なんです。「セダンにリアワイパーが備わっていないのが不思議」なのではなくて、「リアワイパーを必要とするSUVやミニバンが相対的に多くなってしまった」だけなんです。

昔はリアカメラなんてありませんから、バックする際に重要な後方視界を確保すべく一気に普及した、という流れですね。いまは、運転支援のカメラもあれば、デジタルルームミラーもあるという時代ですから、リアワイパーそのものに対する必要性も下がってきています。

もっとも、セダンに装着してはいけないなどということはなく、一時は高級セダンの差異化アイテムとして装備されていました。また、寒い地域ではリアウィンドウに霜が付着することもあるので、寒冷地仕様として用意されることもありました。

こうしたワイパーの話は、なにもリア側に限ったものではありません。フロントのワイパーだって、自動車メーカー内では、昔から何度となく「あれを使わずに済む手はないものか」と議論されてきたのです。

例えば「すべての水滴の付着を防ぐ完全はっ水の実現」とか「カメラが高度に進化して、フロントウィンドウ越しに景色を見ることがなくなる」とか……いつか、フロントワイパーが要らなくなる技術ができたなら、当たり前のように付いているコレもなくなることでしょう。

そもそも邪魔だし、一瞬とはいえ視界をさえぎるものなので、ないに越したことはありません。ワイパーをなくすのはエンジニアの長年の夢なのですが、なかなか決定打がないというのが現状です。

→連載記事リスト「あの多田哲哉のクルマQ&A」

多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。