アルファ・ロメオ ジュリエッタ スポルティーバ(FF/6AT)
イタリアの宝 2013.06.30 試乗記 スポーティーな装いが自慢の、「アルファ・ロメオ ジュリエッタ」の新グレード「スポルティーバ」に試乗。ワインディングロードで、その走りっぷりを確かめた。こだわりが伝わる
「ジュリエッタ」シリーズに追加された新グレード「スポルティーバ」は、1742ccの「クアドリフォリオ ヴェルデ」と1368ccの「コンペティツィオーネ」との、中間に位置する新グレードである。
18インチのホイール&タイヤとレザーシートはクアドリフォリオ ヴェルデ譲りで、エンジンはコンペティツィオーネや「スプリント」と同じ170psの1.4リッターターボ。クアドリフォリオ ヴェルデは6段MT仕様のみだから、ジュリエッタにATで乗りたい人にとっては、このスポルティーバが最上級グレードとなる。価格は、コンペティツィオーネより10万円高いだけの368万円。“お買い得感いっぱいのモデル”でもある。
アルファ・ロメオといえば、まずエンジン、そして足まわりだ。走行性能を最重視する姿勢を伝統としているこのブランドは、技術開発の最前線に立つことを、自らの義務と心得ている。
例えば、DOHC(ツインカムエンジン)は、今日のように広く一般化する前から実用車に採用してきた経緯がある――のだが、いまや、そのカムシャフトさえも葬り去ってしまった。「回転するカム山の突起で押し下げては、スプリングの復元力で戻す」という、これまでのバルブ開閉機構を改め、油圧と電子制御を使った、より自由度の高いバルブ制御システム「マルチエア」を搭載している。
もっとも、論理の上では決して新しいアイデアではない。実際、他社で試作エンジンなどを見せてもらったこともある。しかし、これを量産化して成功させたのはアルファが最初であり、その後も他の追従は見られない。
センターコンソールのスイッチで操作する「D.N.A.システム」は、その電子制御エンジンの可能性をちょっと遊びに振った、面白い装置だ。いわゆる「走行モードの切り替え」であるが、単にスロットル開度だけを変えて、あたかもパワーがスイッチひとつで変化するように見せかけたものとは違う。
例えば「D(ダイナミック)」モード選択時には、ターボの過給圧を瞬時にオーバーブースト状態にしたり、電子制御のディファレンシャルロックを作動させたりと、クルマのレスポンスを総合的にアップさせることができる。最高出力こそ170psと変わらないものの、最大トルクは「N(ノーマル)」や「A(オールウェザー)」の23.5kgm/2250rpmから25.5kgm/2500rpmへと増大する。
ちなみに「A」モードは、路面のミューが低い氷雪路などでの発進時に威力を発揮する。パワフルなFFのAT車では微妙なスロットルワークを行いづらいから、発生するトルクをあらかじめ絞ってしまおうというわけだ。だからといって、燃費の向上が期待できるわけではないから、通常は「N」や「D」を選んで、スロットルは自分でしっかりコントロールできるようにしたほうがいいだろう。
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いまや得がたい走行感覚
アルファ・ロメオ ジュリエッタには美点がいくつもあるが、中でも足まわりのセッティングが光る。ボディーは上下動することなく、常にフラットな姿勢のまま移動する。この感覚が得られるクルマとしては、最近の欧州車の中でも群を抜く存在である。
ドイツ勢をはじめとする、多くのクルマに見られる高速寄りのセッティングは、タイヤなどバネ下の動きを封じる手だてとして、「サスペンションをストロークさせずに、方向性を持たせて柔らかくしたブッシュのコンプライアンスで逃げる」という方法を採るものが多い。
しかし、大径で太いホイール&タイヤの採用(=バネ下重量の増加)はもはや流行であり、それを押さえつけながら路面からの入力に対処するためには、ボディーの剛性アップやブッシュの変形特性などに頼るのでは、限界があるというものだ。
特に微少領域の動きに関しては、細かな上下動は見逃せないところ。経験豊富なシニア世代のドライバーにとっては大いに気になる点である。その「姿勢変化の少ない走行感覚」という観点からは、今回テストしたジュリエッタや、フェラーリなどに代表されるイタリア製スポーツカーこそは最善と評価できる。
ドイツはそもそも平たんな道が多い。フランス車もまた、特に日本仕様はドイツ流のセッティングをよしとする流れにある。「フラットで上下の揺れが少ないことが、高級感ある乗り心地の象徴」と考える自分に言わせてもらえば、そういうメーカーの自覚が感じられないクルマが増えているという状況は、憂慮すべきである。
乗ればわかる“作りこみ”
操縦安定性の点で無駄な動きが少ないことも、ジュリエッタのすぐれた性質である。サスペンションアームが長いためアライメント変化が少ない点が、まず特筆される。ゆったりとした周期の動きが実現でき、路面からの入力に対しておさまりがよくなることは言うまでもない。他社も軽合金の鋳造パーツを使って剛性と軽量化に取り組んではいるが、アームスパンを長く取るというのは、イタリア製高性能車における歴史的な成果ともいえる。
乗り心地はもとより、コーナーでの限界付近の挙動においてタイヤの接地感覚をみだりに変化させない特性は、太いタイヤを使うクルマほど気になるもの。ジュリエッタ スポルティーバは、コーナリング中に横Gが増加していっても、踏んばってほしい外側のリアタイヤが一向に降伏する様子を見せない。ネガキャンバーを強めなくとも、タイヤの接地面はぴったり路面に張り付いている、そんな感覚が得られる。
これはトーを維持する剛性が高いからである。これほど頼もしいアシを持つクルマは、最近ではまれな存在といえる。多くのクルマは、タイヤのグリップ限界が即“クルマの限界”。つまり、一気に接地感覚を失ってしまうのだ。グリップの絶対的な限界が高ければ、それを失ったときの落差もまた大きいのは、自明の理なのである。
ふだん高速道路で見られる程度の凹凸でも、大げさにキャンバー変化する様子が外から見てとれるクルマもあるが、それではとても高級車・高性能車とはいえない。また書き始めるとキリがないが、ダンパー減衰力の設定も、単に固めればいいというものではない。伸び側と縮み側の比率が重要なのであり、その点でもジュリエッタは、長い経験に基づく美点が継承されている。フットワークは、実に華麗。他のクルマに見られる、タイヤ本来の能力を発揮させない、安易に電子デバイスでブレーキをかけて限界点を下げてしまうような手法とは一線を画すものだ。
電動アシストのパワーステアリングは、登場初期には操舵(そうだ)力の軽さだけが取りえで操舵感覚においてあまり芳しい評価が与えられない例もあったが、ジュリエッタのパワーステアリングは路面からのフィールも良好、スクラブ半径もポジ側10㎜程度と最適値にある。もっともらしく説明されるまでもなく、“実際に乗ってちゃんと走行確認している姿勢”がクルマから感じられるところが、ジュリエッタの真価である。
最新のATも悪くはないが……
少し前まではパワー競争が激しく、とにかく速ければいいという風潮もあったように思う。しかし、小排気量エンジンでも、使い方次第で高性能車は成り立つ。ジュリエッタの名を持つ往年のモデルが1.3リッターだったことを考えると、今の1.4リッター170psは、数字の上では十分に高性能だ。それとて実際の路上で使い切るのは非現実的なことである。一方サーキットでスポーツ走行に興じるには、ATではストレスも感じられるから、お手軽に楽しむ程度の高性能ともいえる。
今選べるジュリエッタの中では、個人的には、自在に要求を満たせるMT仕様のクアドリフォリオ ヴェルデがベストと思う。ツインクラッチATの「アルファTCT」も通常の加減速においては痛痒(つうよう)なく作動するが、傾斜の強い坂道において極低速で前進・後退する際などは、動きがギクシャクして、機械任せのクラッチミートがかわいそうに思えるほどだ。
アイドルストップもかなり自然になったとはいえ、長い信号停止などでずーっとブレーキを踏みっぱなしにする必要はある。そんなときは、ギアを抜いてサイドブレーキを使いたいし、そもそもMTの方がクラッチにかかるストレスは少ないのだ。
ついでにギア比に言及するならば、セレスピードの時代から、なぜかアルファは1速のギア比を低めに採り、相対的に2速を離している。これによりステップアップ比は大きくなっており、以前よりスムーズになったとはいえ、いまだ“舟を漕(こ)ぐような加速感”は残っている。この点、同じような機構を持つ「フォード・フォーカス」はクロスレシオを採用しており、1-2速を接近させることの正しさを証明している。逆に、高速域で使う5-6速を接近させる必要性はあまりない。イタリア人は、ATなどそれほど真剣に開発する対象とは思っていないのかもしれない。
もっとも、クアドリフォリオ ヴェルデの6段MTとて1-2速がクロスしていない点では同じ。トランスミッションのギア比に関しては、フェラーリのテストドライバーの方が、アルファのドライバーよりもちゃんと走りこんで決めているのではないか? と思える。
ジュリエッタはスポルティーバに限らず、見目麗しい、快足を実用に使えるイタリアの宝。内容的には、ジュリエッタというよりも、お姉さんの「ジュリア」を思わせる。だから、「ミト」という妹の方が、ジュリエッタの名前を継承するにはふさわしいのかもしれない。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)
テスト車のデータ
アルファ・ロメオ ジュリエッタ スポルティーバ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4350×1800×1460mm
ホイールベース:2635mm
車重:1400kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 SOHC 16バルブターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:170ps(125kW)/5500rpm
最大トルク:23.5kgm(230Nm)/2250rpm
タイヤ:(前)225/40R18(後)225/40R18(ブリヂストン・ポテンザRE050A)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:368万円/テスト車=368万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:606km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:265.8km
使用燃料:22.4リッター
参考燃費:11.9km/リッター(満タン法)

笹目 二朗
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