360cc軽の集い「富士サンロクミーティング2014」の会場から
2014.03.26 画像・写真2014年3月23日、静岡県富士宮市の朝霧高原ドライブインもちや駐車場で「富士サンロクミーティング2014」が開かれた。これは「ホンダ・ライフ・ステップバン」および「ライフ・ピックアップ」のワンメイククラブであるLOVESTEP!が主催する、360cc規格の軽自動車オンリーのミーティングである。会場のロケーションである富士山麓と360を掛け合わせたタイトルというわけだが、LOVESTEP!がこのイベントを開催するのは、2008年、2009年に続いて3回目。今回は昨年、富士山が世界文化遺産に登録されたことを記念して、360cc軽も勝手に日本文化遺産に登録してしまおう、という趣旨のもとに企画されたという。春の彼岸の3連休の最終日、快晴に恵まれた会場には、50台以上を数えたライフ・ステップバンおよびピックアップを中心に、計196台もの個性豊かな360ccが集結。遠くは大分県から片道約800kmの道のりを自走してきた参加者をはじめ、全国から集まった熱心な愛好家で大盛況だった会場から、リポーターが独断で選んだ車両を中心に紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)

午前8時の開場と同時に、富士山を見上げる会場にエントリー車両が続々と入場していく。
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午前8時の開場と同時に、富士山を見上げる会場にエントリー車両が続々と入場していく。
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1963年「スバル360デラックス改コンバーチブル」。オーバーライダーの付いたバンパーは輸出用として開発され、国内でも少数が販売された小型車登録の「スバル450」用である。
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「マツダR360クーペ」。1960年に誕生したマツダ初の乗用車。軽量化のためアルミを主体に一部にマグネシウムも使用した空冷4ストロークVツインエンジンをリアに積む。
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「ホンダN360G」。1967年に誕生したN360に、68年に加わった最高級グレードが「Gタイプ」。ボディーはメタリック塗装にオーバーライダー付きバンパー、フォグランプ(この個体は欠品)、スポーツミラー、サイドモールなどで装い、室内にはタコメーター、革巻きステアリング、木製シフトノブ、シートベルトなどが備わる。
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「ホンダZ GS」。1970年にデビューした軽初のスペシャルティーカーであるZのトップグレードで、5段ギアボックスに前輪ディスクブレーキ、ラジアルタイヤなどを標準装備。コスミックのアルミホイールを履いたこの個体は、新車からのワンオーナー車という。
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「ホンダNIII360」の顔つきをミニ風にモディファイした、通称「Nクーパー」。これは自家仕上げのようだが、Nが流行(はや)っていた当時は社外品の改造キットも存在していた。
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1969年「スズキ・フロンテS」。2ストローク3気筒エンジンをリアに積んだ2代目フロンテのホットバージョンであるフロンテSSのボディーに、おとなしい標準仕様のエンジン(それでも3キャブだが)を積んだモデル。非常に珍しい。
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1973年「スズキ・フロンテGT/W」。3代目フロンテの最終型で、見たところフロントエンジンのようだが、水冷化された2ストローク3気筒エンジンをリアに積む。顔つきはマニアの間で「ヨンゴー」と呼ばれる昭和45(1970)年式のハコスカこと「スカイライン2000GT」の子分といった雰囲気だ。
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総アルミ製で、クロスフロー、ヘミヘッドの水冷4ストローク4気筒という高級な設計のエンジンをリアに積んだ初代「マツダ・キャロル」。オリジナルの2ドアと後から追加された軽初の4ドア、それもライトグレーとエンジの2トーンという同色同士が並んでいた。
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「スズキ・ジムニー」。1970年に誕生した当初はフロントグリルのスリットが横バーで空冷2ストローク2気筒エンジンを積んでいたが、72年のマイナーチェンジでスリットが縦バーになり、エンジンは水冷化された。右は73年式、左が74年式で、フロントフェンダーの形状やウインカーが異なる。
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1968年「スズライト・フロンテ・バン」。空冷2ストローク2気筒エンジンで前輪を駆動する「スズライト・セダン」と基本設計を共有するFFの商用バン。かなりの希少車。
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「ダイハツ・フェロー・バン」。1966年にダイハツ初の軽乗用車として誕生した初代「フェロー」から派生した商用バンで、ボンネット型の「ハイゼット・バン」の後継モデルとなる。この個体はローダウンされ、リアサイドウィンドウを特注の1枚ガラスに替えるなど手が加えられている。
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1971年「マツダ・ポーター・バン・デラックス」。ポーターというとキャブオーバートラックの「ポーター・キャブ」を連想する向きもいるだろうが、最初に出たのはボンネット型トラックとバンである。初代「キャロル」と同じ水冷4ストローク4気筒エンジンをフロントに積み、後輪を駆動する。きれいに仕上げられたこの個体のフェンダーミラーは、「ホンダS」用とか。
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「マツダ・ポーター・トラック」。先のバンに対してこちらはトラックだが、エンジンが軽乗用車の「シャンテ」と同じ水冷2ストローク2気筒に換装された、1973年のマイナーチェンジ以降のモデル。
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ホンダの二輪レース活動を統括するHRC(ホンダ・レーシング)のトリコロールカラーに塗られた「バモス・ホンダ」。ベースとなったのは軽トラックの「TN360」で、この個体のホイールキャップは初期型「N360」用。
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「スバル・サンバー・トラック」。顔つきから「あかんべサンバー」などと俗称される、1961年に誕生した初代サンバーのトラックで、荷台に積んでいるのはデッドストックのスバル純正部品。スワップミートで販売していた。
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1966年にフルモデルチェンジした2代目「スバル・サンバー・トラック」。ローダウンし、ワイドホイール/タイヤやリアスポイラーを装着。手前に飾られたティントイも同じ仕様に仕立ててある。
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「商売繁盛」をキャッチフレーズに掲げて1967年に登場した「ホンダTN360」。床下にミドシップしたエンジンによる後輪駆動、前ストラット、後ろド・ディオンのサスペンションというレイアウトは、今日の「アクティ」まで受け継がれている。
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今回は仲間がおらず1台きりで、ちょっぴり寂しそうだった「マツダ・ポーターキャブ」。昭和50(1975)年4月以降に新規登録された車両は、360cc規格でも黄色いナンバープレートが付く。
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「スズキ・キャリイ・バン」。1969年にデビューした4代目キャリイで、ジウジアーロが独立して立ち上げたイタル・デザインの記念すべき第1作となる。前後対称に近いボディーはスタイリッシュだが、テールゲートが傾斜しているぶん荷室が狭かった。
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50台以上集まった色とりどりの、そして思い思いのカスタマイズを施された「ホンダ・ライフ・ステップバン」と「ライフ・ピックアップ」。ちなみに両車の人気が出たのは生産終了後で、生産台数はステップバンが1万9012台、ピックアップはたった1132台。それを考えたら、残存率はかなり高いと言えるだろう。
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1972年夏から74年末までの2年と少々の間しか作られなかった「ライフ・ステップバン」。「6岐」のシングルナンバーの付いたこの個体は、アーモンドグリーンとベージュの中間のような上品なカラーリングが印象的。インテリアも外装色とベージュの2トーンでまとめられていた。
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こちらもステキな2トーン(?)の「ライフ・ステップバン」。ただしエンジンルームは、サビどころかシミひとつなくきれいに仕上げられていた。
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カスタムショップのCOKECLUBがデモカーとして製作したというドラッグ仕様の「ライフ・ステップバン」。こうして見るとエンジン搭載位置の低さが目立つが、ノーマルのままという。
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雑誌『POPEYE』創刊(1976年)と前後して巻き起こったアメリカ西海岸ブームの際に、日本に上陸したバニング風のカスタマイズを施した「ライフ・ステップバン」。リアサイドウィンドウをツブして、リアクオーターにはハート型ののぞき窓を装着。内装も当時風のチンチラ仕上げ。
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「ステップバン」より約1年遅れて1973年夏に登場、生産期間はわずか1年ちょっとだった「ライフ・ピックアップ」。ちなみにFFを採用したトラックは、日本ではこれと「いすゞ・エルフ・マイパック」「スズキ・マイティボーイ」の3車しかない。
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段差のないスムーズなボンネットとフロントフェンダーを持つ「ライフ・ピックアップ」。ワンオフの改造車だが、最初からこの姿だったように違和感なく仕上がっている。フロントウインカーはバンパー内に移設。
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こちらはモノトーンでクールにキメた「ライフ・ピックアップ」。ボディーと同色仕上げの「ローラースルーGOGO」(一世を風靡<ふうび>した、チェーンドライブ機構を持つホンダ製スクーター)も雰囲気を盛り上げている。
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なにやら店を広げていると思ったら、なんとエンジンを載せ替えていた「ライフ・ステップバン」。オーナーの友人いわく「エンジンの調子がよくなかったので、スペアのエンジンを積んできたんですよ」。用意がいいのか悪いのか、よくわからない話だが(笑)、めったに見られないアトラクションとして来場者を楽しませてくれたのは間違いない。
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朝のうち吹いていた冷たい風も程なくしてやみ、気温もぐんぐん上昇。会場は絶好のイベント日和となった。