座ったままで移動できるホンダの「UNI-ONE(ユニワン)」でモビリティーが変わる?
2025.10.23 デイリーコラムあの「ASIMO」の技術を活用
ホンダは電動ハンズフリーパーソナルモビリティー「UNI-ONE(ユニワン)」の事業を本格的にスタートさせた。ユニワンは、座ったまま体重移動を行うだけで歩行するように移動できる着座型のパーソナルモビリティーで、まずは2025年9月に日本国内の法人向けに「サービス契約」形式で販売が始まった。
開発にあたっては、二足歩行を行うロボット「ASIMO(アシモ)」などのロボティクス研究で培った技術を活用。全方位移動駆動機構「ホンダ・オムニトラクションドライブシステム」によって前進・後進・並進が行える。最高速度は6km/hで、道交法では歩行者として扱われる。交換式のリチウムイオンバッテリーを搭載し、距離にして約10km(3時間程度)の稼働が可能となる。
ユニワンは2012年5月に発表された「UNI-CUB(ユニカブ)」、その小型・改良モデルとして2013年11月に登場した「UNI-CUB β(ユニカブ ベータ)」の最新進化版ともいえる。ユニカブから最新のユニワンまで一貫しているのは、目線が高く両手が使えるというこれまでの電動パーソナルモビリティーにはない特徴である。車いすやシニアカーの代わりとしてだけではなく、さまざまな使用シーンが想定されるのも同じだ。
ただ、ユニカブとユニカブ ベータが左右のステップに足をかけて乗るのに対して、ユニワンは足を前方にそろえて乗る点が異なっている。ホンダつながりで足もとの状態をスクーターになぞらえるなら、前者は「ロードパル」、後者は「タクト」ということか(参考例が中高齢者向けですみません)。
先日、好評のうちに幕を閉じた大阪・関西万博の「ロボット&モビリティステーション」でもユニワンの体験試乗が行われていたので、現地で目にされた方も多いのではないかと思う。
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シニアカーとは似ているようで違う
道交法では歩行者として扱われるので、クルマの運転免許は不要。ユニワンは車道ではなく歩道を進むことになる。もちろん、公道走行が可能な「移動用小型車」の型式認定も取得している。ただ、法人向けに「サービス契約」形式で販売が始まったことでもわかるように、個人が所有することを想定してはいない。
ホンダは「クルマなどで移動したあとの“目的地で利用するモビリティー”として、テーマパークや商用施設、博物館や空港内といった特定エリアにおけるお客さまの回遊を想定しています」と、ユニワンを紹介している。
例えば、最近テレビCMでも見かけるダイハツの歩行領域モビリティー「e-SNEAKER(eスニーカー)」と大きく異なるのはそこだ。ダイハツeスニーカーは、DC24V 250Wのモーター2基で後輪を駆動する新型の電動車。座ったまま移動できるのは同じだが、ハンドルとアクセルグリップ、ブレーキレバーで、車両の動きを操作する。フロントに8インチの大径タイヤが装着され、最大75mmの段差や最大100mmの溝の乗り越えが可能だ。つまり、こちらはシニアカーの進化版ともいえる存在だ。
いっぽうユニワンは、車いす走行エリアなどの平滑で整備された路面での運用を想定。20mm程度の段差は乗り越えられるというが、砂利道や芝生といったコンディションは不得意だ。傾斜地を含め、屋内外のバリアフリーエリアが基本的な行動範囲にあたる。ここもパーソナルユースのシニアカー的な使い方を想定するeスニーカーと、出かけた先の特定エリアでの使用を念頭に置くユニワンとの大きな違いである。
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新たな雇用が生まれるかも
eスニーカーは、公共交通機関の減便や廃止が進む地方部などの地域において、免許返納者を含む高齢者の近距離移動をサポートする新しい小型モビリティーとして開発された。ダイハツは「自由に外出を楽しみたいアクティブシニアをはじめとする、幅広いユーザーの使用を想定。買い物や家族・友人との外出など、歩行領域のちょっと先を気軽に楽しんでもらえるモビリティーを目指した」という。
そうした個人での所有が前提とされるeスニーカーは、愛車と同じようにオーナーが維持、管理、保管の多くをカバーしなければならない。価格は41万8000円(非課税)。さらに自身が使用するとなれば、自宅や行く先々のバリアフリー環境も必須となる。
ユニワンは、前述のとおり移動先の施設で使用するモビリティーとして、施設側が運用を管理する。テーマパークやショッピングモールに行きたいけれど長時間の歩行は不安という高齢者や子どもが使用する以外にも、空港や博物館、コンベンションセンターでの活用などが考えられる。また、企業が導入することによって、これまで車いすユーザーや高齢者が担当しづらかった業務への従事といった新たな雇用が生まれるかもしれない。
実際に、東京2025世界陸上競技選手権大会では大会運営移動用モビリティーとして活用され、大分のサンリオキャラクターパーク ハーモニーランドでは、長時間の歩行に不安がある来場者向けのパーク内の移動手段としてユニワンの本格導入を進めている。栃木のモビリティリゾートもてぎでは、ARとユニワンを融合させた「森の調査隊」と題した自然探索アトラクションが運営されている。ユニワンの活躍の場は、発想次第でさらに広がるだろう。
ちなみに「ジャパンモビリティショー2025」(会期:10月29日~11月9日)においては、日本自動車工業会主催のメインプログラム「Tokyo Future Tour 2035」にユニワンが登場。試乗も可能なので、シニアカーとも電動キックスケーターとも違う動きをぜひ味わってほしい。その未来的な乗り味に、「人間尊重」を掲げるホンダの伝統と企業理念、そして技術にこだわる社風の凝縮を、きっと感じるはずである。
(文=櫻井健一/写真=本田技研工業、ダイハツ工業、webCG/編集=櫻井健一)
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櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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