サービスエリアの進化が止まらない!
メニューコンテストに見る“SAグルメ”最前線
2018.01.08
デイリーコラム
腕利き料理人の本気のメニューを楽しめる
筆者には毎年、年末に楽しみな取材がある。それがサービスエリア(SA)の料理コンテストだ。
公団時代のSAの料理といえば、「どこでも同じ味を」を合言葉に厳密にレシピが決められ、さらに定期的に味のチェックまで行われていた。どこに行っても同じメニューで同じ味。旅情もなにもあったものではなく、販売ランキングのトップは不動の「とん汁定食」だった。しかし、高速道路の民営化により方針は一転。「それぞれの店で独自の料理を提供する」ことが許され、毎年のように新メニューによる料理コンテストが開催されるようになったのだ。
当然のことながら、供されるメニューも以前とは雲泥の差だ。今日におけるSAの経営は、ホテルなどを擁する地元の観光企業が担っていることが多く、そのためSAのレストランにも、ホテルなどで腕を磨いた料理人がいたりする。いつもは“影の存在”であるそうした料理人たちにとって、料理コンテストは自分の腕を証明するチャンス。メディアに注目されるということもあり、毎回、非常に気合の入ったメニューが用意される。取材する側としては、そうしたプロの本気の姿を見るのも楽しいし、試食と称してご相伴にあずかれるのもうれしいご褒美なのだ。
今回取材したのは、都内の料理学校で開催されたNEXCO中日本エリアの「第10回メニューコンテスト」である。
不動の王者はあえてのカレーで勝負!
今回、事前の予選会には33カ所のSAが参加。そこから決勝に進出した11カ所のSAは、以下の通りである。
- 有磯海SA(下り/北陸自動車道)
- 有磯海SA(上り/北陸自動車道)
- 尼御前SA(上り/北陸自動車道)
- NEOPASA駿河湾沼津(上り/新東名高速道路)
- 上郷SA(上り/東名高速道路)
- EXPASA足柄(上り/東名高速道路)
- 談合坂SA(上り/中央自動車道)
- EXPASA多賀(下り/名神高速道路)
- 多賀SA(上り/名神高速道路)
- 養老SA(上り/名神高速道路)
- 梓川SA(下り/長野自動車道)
これらの中でも、特に注目なのが有磯海SA(下り)である。2016年の覇者というだけでなく、ここ4大会を連続で制覇。通算で5度にわたり最優秀賞を獲得している強豪中の強豪で、果たして今年も連覇なるか? というのが筆者の気になるところだった。ちなみに、有磯海SA(下り)の料理担当者は38歳の副調理長・麻生貴司さん。若手で勝負しているというのも、有磯海SA(下り)の特徴だろう。
そんな有磯海SA(下り)が持ち込んだメニューが「越中とやまのやくぜんカレー“豊かな大地 みな穂の恵み”」(2000円)である。名称の通り、そのメニューはカレーがメイン。審査の後の関係者試食タイムに筆者もいただいたが、地元富山の食材をふんだんに使ったカレーは驚くほど甘くて優しい味であり、さすがの力量を感じさせるものだった。しかし同時に、これはかなりの挑戦だとも思えた。というのも、過去の受賞メニューを振り返ると、何か一品が強い個性を放つものより、繊細でアラカルトが楽しめる、コース的なメニューの方が選ばれやすい傾向にあったからだ。そこを有磯海SA(下り)の料理人に尋ねてみれば「それもあわせて挑戦です」と力強い答え。過去の傾向も知った上での挑戦というから恐れ入った。
決勝に残ったSAのレストランは要チェック
そして結果はといえば――余談だが、今回は相当に審査が難航したようで、結果発表が予定時刻から20分もおした――尼御前SA(上り)の「食べまっし 加賀彩々膳」(1980円)が最優秀賞に選ばれた。同SAにとって、初の快挙である。
「食べまっし 加賀彩々膳」は、地元石川の魚介や肉、野菜などをふんだんに使った豪勢な懐石料理。「4回目からずっと参加しており、今回も何を作っていいのか分からずに苦労しました」と語った料理長の福井敏裕さんは、表彰後の会見では感動を隠し切れない様子だった。
一方、注目の有磯海SA(下り)は、4品が選ばれる審査員特別賞に。大賞は逃したものの、次席をきっちり押さえるあたりはさすがの実力といえるだろう。他の審査委員特別賞は、EXPASA多賀(下り)の「近江牛 味ごのみ膳」(1780円)。多賀SA(上り)の「まごわやさしい 牛味噌茶漬け御膳」(1980円)。そして養老SA(上り)の「美濃三昧の集い」(1980円)となった。
この大会、賞レースとしても見ごたえがあるし、もちろん決勝に出たSAの名前を覚えておくだけでも、ドライブの役に立つ。腕自慢の料理人がいるSAならば、他の料理も期待が持てるというものだ。高速道路でおいしい食事を求めるのならば、ぜひこれらのSAのレストランを訪ねてみよう。
(文と写真=鈴木ケンイチ/編集=堀田剛資)

鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
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