ボルボXC60 D4 AWDインスクリプション(4WD/8AT)
じゃがバターの味がした 2018.07.24 試乗記 新千歳空港を起点に、北海道を西へ東へとあてのない旅に出た『webCG』取材陣。ドライブのパートナーは、ディーゼルエンジンを搭載した「ボルボXC60 D4 AWDインスクリプション」。1000km近いロングドライブの後に、リポーターは何を思う?北海道をひと筆書き
北海道にはアイヌ語で「美しい形」を意味する「ピリカノカ」と呼ばれる名勝がいくつも存在する。室蘭市の絵鞆半島外海岸にあるトッカリショ浜もそのひとつだ。トッカリショもアイヌ語で「アザラシ岩」を意味する。一帯は緑に覆われた急峻(きゅうしゅん)な断崖が連続してなかなかの絶景だ。船越英一郎が長々と謎解きしながら犯人を逮捕してそう。フランスのエトルタに似ているなと思った。郡カメラマンと私は崖の先まで足をのばして美しい風景を心に刻んだが、高所恐怖症の編集部・藤沢は怖がって崖へ近づこうとしない。現場にいたのにこの景色を後から写真でしか見ていないとは、実に気の毒だ。
ボルボから「北海道でXC60のディーゼルに乗りませんか?」と誘いを受け、6月末に北の大地を訪れた。伝統的に遠方で試乗会を開くのが好きなボルボ・カー・ジャパン。今回は新千歳空港を起点に、ある媒体には道北を、別の媒体には道南を試乗(推奨)コースとして設定し、各媒体の試乗コースをつなぎ合わせると北海道ひと筆書きのようになる企画を思い付いたようだ。われわれが担当したのは道南。トッカリショ浜のほかに、白老町周辺の競走馬生産牧場や洞爺湖、五稜郭などを訪ねた。
クルージングにはディーゼルが最適
経験がある人ならわかると思うが、北海道のドライブは高速道であろうと一般道であろうと、基本的にクルージングである。同じような景色を眺めながら目的地まで長時間を過ごすことになる。ストップ&ゴーが少なく、平均速度がやや高い北海道に限って言えば、ハイブリッド車よりもディーゼル車のほうがきっと経済的だ。その意味で4WD+ディーゼルのXC60は今回の旅にはパーフェクトなクルマだった。
最高出力190ps/4250rpm、最大トルク400Nm/1750-2500rpmを発生する2リッター直4ディーゼルターボエンジンのD4は、日本には2015年に「V40」や先代の「60シリーズ」に追加導入され、ここのところのボルボ躍進の立役者的エンジンとなった。このほど新型XC60のD4もデリバリーが始まり、「90シリーズ」と60シリーズの新世代ボルボは、ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッドと幅広いパワートレインを取りそろえることになった。
D4エンジン自体には日本導入当初から手が加えられていないが、フォードグループ時代から使うプラットフォームを用いて開発されたV40や先代60シリーズと、新世代プラットフォームの「SPA(スケーラブルプロダクトアーキテクチャー)」を用いて開発されたXC60では、乗員が感じる音や振動のレベルは大きく異なる。XC60はディーゼルエンジンが発する音と振動を、ほぼディーゼルとわからない程度にまでシャットアウトしている。「女房と畳は新しいほうがよい」という、現代では適切ではないと判断されかねないことわざがあるが、そこにプラットフォームも加えるべきだ。半面、車両重量が1.5tあまりのV40に対しXC60は1.9tに達するため、8段ATのギアリングは最適化されているものの加速力は異なり、V40のようなダッシュ力は望めない。ただし最大トルクが400Nmもあるので、何かと比較するのでなければ決して不満が出るレベルではない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“ほぼ自動運転”で安楽ドライブ
もう一点、北海道ドライブにこのクルマが最適な理由がある。それは全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロール(ACC)と「パイロットアシスト」が備わることだ。設定した速度の範囲内で先行車両を追従するACCは、一度体験するとやめられない装備の筆頭だが、それに加え、140km/h未満であれば、自車が車線の中央を維持すべくステアリングの修正操作を穏やかにアシストしてくれる。先行車両がいてもいなくても機能する。これが直線を基本としながら微妙に曲がっているような道内の一般道で威力を発揮する。ドライバーはステアリングを保持しているだけで“ほぼ自動運転”を味わうことができる。
現段階では事故があった際にはすべてドライバーの責任となるので、システムに任せっきりには絶対にできない。だが、そのことさえ踏まえて正しく利用すれば、長距離ドライブの疲労度を劇的に軽減してくれる。道内は一般道のみならず高速道も片側1車線しかない区間が多いため、道路自体はすいていても前に遅いクルマが1台だけいてストレスがたまる状況がよくある。そんな時にパイロットアシストを作動させ、自身が運転に関与する度合いをいくぶんか下げ、音楽や会話を楽しめば時間を感じさせない。
北海道とXC60ディーゼルの組み合わせは、じゃがいもとバター並みの相性のよさを感じさせた。
足りないのは実績だけ
ところで、これまでXC60 D4 AWDインスクリプション(今回のテスト車)は車両本体価格が679万円だったが、一部仕様変更と価格変更が行われ、2018年8月15日以降は724万円となる。45万円の値上げとなるが、テイラードダッシュボードやハーマンカードン製プレミアムサウンドオーディオシステム(600W、14スピーカー、サブウーファー付き)が標準装備となる。変更前のモデルに同種の装備をオプション装着するとほぼ同価格となり、実質的にはほぼ据え置きといったところ。エアサス(30万円)はできれば装着したいので、754万円。諸費用込みで800万円。
人々(市場)がブランドをプレミアムかどうか判断するには時間がかかる。プレミアムブランドとしてのボルボはドイツ勢ほどの実績がないためにまだ確立されたとは言えない。このため、60シリーズで800万円というのは条件反射的には割高に思える。しかし、最新ボルボは動力性能、先進性、安全性、質感……そのどれをとってもドイツ勢をはじめとするプレミアムブランドを本気であせらせるのに十分な内容を持つ。ボルボの日本での年間販売台数は、2015年が1万3493台、16年が1万4543台、17年が1万5751台とじわりじわり順調に伸びていて、18年上半期の販売台数も8000台以上と堅調だ(いずれもJAIA調べ)。この先、電動化への波にスムーズに乗ることができれば、非ドイツのプレミアムブランドの筆頭としてさらなる存在感を示すようになるのではないだろうか。
(文=塩見 智/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ボルボXC60 D4 AWDインスクリプション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1900×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:1910kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:190ps(140kW)/4250rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)235/55R19 105V/(後)235/55R19 105V(ミシュラン・ラティチュードスポーツ3)
燃費:16.1km/リッター(JC08モード)
価格:679万円/テスト車=794万9000円
オプション装備:電子制御式4輪エアサスペンション+ドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー(30万円)/Bowers & Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム<1100W、15スピーカー、サブウーハー付き>(42万円)/チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ(20万6000円)/メタリックペイント<マッセルブルーメタリック>(8万3000円)/テイラードダッシュボード(15万円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:6352km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:988.2km
使用燃料:67.6リッター(軽油)
参考燃費:14.6km/リッター(満タン法)/14.4km/リッター(車載燃費計計測値)

塩見 智
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。

















































