「マツダ3」「スープラ」「ジムニー」
人気3車種の最新納期情報をリポート
2019.06.05
デイリーコラム
行列はできないほうが望ましい
「行列のできる○○」という表現がある。人気を示す言葉として使うならいいが、現実に行列ができるのは、褒められたことではない。顧客を待たせ、大切な時間を浪費させているからだ。人気の高さに応じて供給量を増やし、行列ができないように配慮せねばならない。
クルマの納期も同様だ。顧客を待たせる売り方は、顧客満足度を下げてしまうことになる。
特に今は新車需要の70~80%が乗り換えに基づくものだから、下取り車が発生する。納期が長引くと、新車契約時点の査定と下取り車を引き渡す時とでは、査定額に違いが生じてしまう。従って納車する時点で、あらためて査定をやり直さなければならない。そうなれば顧客と販売店の双方に面倒を強いる。
またクルマは嗜好(しこう)品的な性格を併せ持つので、スポーツカーなどは「欲しい時に買いたい」という欲求もある。
一般的な納期は在庫車を除くと1カ月から2カ月ほどだが、ここでは納期が長いといわれている「マツダ・マツダ3」「トヨタ・スープラ」「スズキ・ジムニー」の最新情報を探った。
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マツダ3は年明け納車のグレードも
最近のマツダ車は納期が長い。生産と納車を伴う「発売」の数カ月前から予約受注を開始するためだ。マツダ3も同様で、販売店での予約受注は2019年3月に始まっていた。この時点では新型の車名が「アクセラ」を踏襲するのか、マツダ3に変わるのかさえ、販売店には知らされていなかった。
1.5リッターのガソリンモデルと1.8リッターのクリーンディーゼルターボモデルは5月24日に発売されたが、2リッターのガソリンモデルは7月下旬に発売、自己着火型ガソリンエンジン「SKYACTIV(スカイアクティブ)X」搭載モデルに至っては予約受注の開始が7月下旬で発売は10月だ。
販売店では「クルマを見たこともない段階で受注を開始した。スカイアクティブXは、5月の正式発表時点でも動力性能や燃費の数値が分かっていない。それでも購入を希望されるお客さまが多く、納車が来年以降になる可能性もある」と指摘する。
逆に1.5リッターのガソリンとクリーンディーゼルターボの納期は短く「2カ月程度に収まる」という。「2リッターのガソリンも発売が7月で、納期は9月頃の見込み」だというから、マツダ3という“車種自体”よりも、スカイアクティブXへの注目度が高いようだ。
マツダ3のように受注の開始時期を早め、しかも生産の立ち上がりがグレードごとにバラバラなのは、メーカーの生産効率を最優先しているからだ。早々に受注を開始すれば、人気の仕様などが早い段階で分かるから生産計画を立てやすい。受注をためておけば、生産開始後の納車も迅速に行える。その代わりに顧客が待たされてしまう。
顧客にとっては、いつ発売されたのか、すでに売っているのかも分からないので状況を把握できないという側面もある。『webCG』のサイト内で検索すると、マツダ3について10本以上の記事が出てくる。2019年1月の東京オートサロンへの出品からプロトタイプの試乗記までさまざまだから、これらを読めば、読者諸兄は即座に買えるクルマだと思うかもしれない。ところが実際には、メーカーが行った報道向けのイベントから購入可能な状態になるまで、3~10カ月も要するのだ。これではメーカーの信頼性も下がり、市場戦略として好ましくない。
販売店からも「われわれが試乗したことのない新型車を売るのは心苦しい。お客さまに自信を持って説明できず、通常のセールス活動を行えない。商談は試乗車が整ってから始めたい」という声が聞かれる。高額商品を販売する上で最低限度の条件が満たされていない。
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スープラ、ジムニーとも生産を拡大したが……
トヨタ・スープラの納期も長い。2019年3月上旬に予約受注を開始したが、この時点で販売店は「車両に関する解説を掲載したスタッフマニュアルの端末情報が届いていない」と言っていた。それでも3リッターターボ車の「RZ」は数日間で売り切れ、2リッターターボ車の「SZ」と「SZ-R」も残りわずかになった。2019年モデルの販売を終えてしまい、この時点で販売店は「スープラRZは2020年にならないと受注できない」とコメントしていた。
しかしこの後、生産枠を拡大。販売店では「人気の高いRZについて、日本向けの生産枠を1500台上乗せした。それでも納期は曖昧だが、2019年の6月に契約すれば、2020年の1~3月には納車できるだろう」と予想する。
不可解なのは外装色が「マットストームグレーメタリック」の仕様だ。カタログに掲載されながら、当面は24台の限定抽選販売としている。顧客を抽選で選別する方法も含め、快い売り方とはいえない。
これが少量生産のメーカーであれば納得もできるが、スープラはかつて大量に売られたなじみのあるトヨタ車だ。トヨタ車の素晴らしさは、住んでいる地域などにかかわりなく、誰でも公平に、適切な価格と納期で信頼性の高い商品とサービスを購入できることにある。新型スープラは優れたスポーツカーだが、こうした「トヨタ車の素晴らしさ」というところからは逸脱している。このような商品を販売したいなら、GRブランドなどから、スープラとは異なる別の車名で発売するべきだった。
スズキ・ジムニーは2018年7月に発売された。20年ぶりのフルモデルチェンジとあって受注が増え、納期が一気に1年にまで延びた。ジムニーはオフロードSUVだが、手軽に購入できる軽自動車でもある(「ジムニーシエラ」は1.5リッターエンジンの小型車)。納期が1年では長すぎる。
そこで最新の納期を販売店に尋ねると「ジムニーは納期が延びたのを受けて、2019年1月から増産しています。それでも納期は10カ月から1年を要しています。今後、短縮されるメドは立っていません」という返答だ。
このように人を待たせて行列ができることが、今では常識になりつつある。原稿の締め切りを守ることを含め、自戒して受け止めたい(本稿も遅れてしまいました。申し訳ございません!)。
(文=渡辺陽一郎/写真=マツダ、トヨタ自動車、スズキ、webCG/編集=藤沢 勝)

渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。 1985年に出版社に入社して、担当した雑誌が自動車の購入ガイド誌であった。そのために、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、車買取、カーリースなどの取材・編集経験は、約40年間に及ぶ。また編集長を約10年間務めた自動車雑誌も、購入ガイド誌であった。その過程では新車販売店、中古車販売店などの取材も行っており、新車、中古車を問わず、自動車販売に関する沿革も把握している。 クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。
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