旧車イベント「ノスタルジック2デイズ」の会場から
2015.03.04 画像・写真2015年2月28日、3月1日の2日間、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、『ノスタルジックヒーロー』など旧車専門誌のプロデュースによる恒例のイベント「ノスタルジック2デイズ」が開かれた。「日本最大級の旧車トレードショー」とうたったこのイベントは、実車をはじめパーツやオートモビリア(クルマ趣味の小物)などのショップによる展示即売、メーカーの所蔵車両や誌面を飾った車両の特別展示、そしてゲストによるトークショーを3本柱としている。今回は特別展示に「日産MID4」のI型とII型、そして「いすゞ・アッソ・ディ・フィオーリ」といった往年のコンセプトカーがそろうなど、例年にも増して見応えのある内容だった。2日間に前回を上回る2万人以上の旧車ファンが訪れた会場から、出展車両を中心に紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)

さかのぼること36年、1979年3月に開かれたジュネーブショーにいすゞが出展した「アッソ・ディ・フィオーリ」。初代「ジェミニ」のシャシーにジウジアーロ率いるイタルデザインがボディーを架装した、初代「ピアッツァ」のプロトタイプである。一見したところ生産型ピアッツァとほとんど変わらないように思えるが、以前に2台を並べてみたところでは一段と低くシャープで、ひとまわり小さく見えた。
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さかのぼること36年、1979年3月に開かれたジュネーブショーにいすゞが出展した「アッソ・ディ・フィオーリ」。初代「ジェミニ」のシャシーにジウジアーロ率いるイタルデザインがボディーを架装した、初代「ピアッツァ」のプロトタイプである。一見したところ生産型ピアッツァとほとんど変わらないように思えるが、以前に2台を並べてみたところでは一段と低くシャープで、ひとまわり小さく見えた。
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「アッソ・ディ・フィオーリ」とは、リアガーニッシュに描かれている“クラブのエース”を意味する。ドリップモールをすべて廃し、ボディーとウィンドウ面の段差をなくしたフラッシュサーフェスボディーは量産化にあたって最大のネックと思われたが、いすゞの技術陣はその難問を見事にクリアして「ピアッツァ」を送りだした。
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「アッソ・ディ・フィオーリ」のインテリア。デジタルディスプレイ(ダミーだが)やステアリングコラム左右に配したサテライトスイッチなどの未来的なデザインも、生産型に受け継がれた。この個体はジュネーブに出展されたワンオフのショーカーを、2001年にいすゞ社内の有志がレストアしたもので、走行可能という。
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こちらは社内でレストアされたばかりという1968年「いすゞ・エルフ」。同年にフルモデルチェンジされた2代目エルフの初期型である。
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3月1日に実施された、いすゞワークス黄金時代のレジェンドドライバーによるトークショー。ゲスト(ステージ向かって右側)は左から浅岡重輝氏、米村太刀夫氏、津々見友彦氏、そしていすゞ車チューンのエキスパートであるKRS(カツユキレーシングサービス)の青木克之氏。同日には昨年に続いてクルマ好き、ベレGこと「いすゞ・ベレット1600GT」好きで知られるクレイジーケンバンドの横山 剣氏のトークショーも行われた。
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1985年の東京モーターショーに出展された「日産MID4-Ⅰ」。車名の通り3リッターV6エンジンをミドシップし、4WDと4WSを組み合わせたプロトタイプである。ハリボテのショーカーではなく走行可能な実験車で、メディア向けの試乗会も催された。
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「日産MID4-Ⅰ」のボディー設計は、「Be-1」「パオ」「フィガロ」のパイクカー3部作をはじめとする日産の少量生産車を手がけている高田工業で、この個体も同社で保管されている。
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1987年の東京モーターショーに出展された、発展型となる「日産MID4-II」。Ⅰ型では自然吸気の横置きだった3リッターV6エンジンをツインターボ化して縦置きとし、サスペンションも変更された。ボディーも角が取れて洗練されたといわれるが、「ホンダNSX」と「ポルシェ959」を足して2で割ったような印象で、個人的にはやや武骨だがエッジが立っているⅠ型のほうが好きだ。
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市販化を前提に開発されたといわれる「日産MID4-II」だが、市場に出ることはなくプロジェクトは終了。だがMID4の開発を通じて得た技術ノウハウはZ32「フェアレディZ」やR32「スカイラインGT-R」などの高性能車に生かされた。
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ヒストリックカーのレストアやワンオフのボディー製作などを得意とするボディーショップ、永遠(とわ)ボディーが出品した「マツダ・コスモスポーツ」のボディー。外板パネルがすべてアルミで作り直されている。
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来場者が見守るなか、出展しているショップ自慢のデモカーが場内を走行して入場。これは岡山のエンジンビルダー、OS技研が手がけた通称ハコスカこと3代目「日産スカイライン」の「ハードトップ2000GT」。
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そのハコスカに積まれているOS技研のスペシャルユニットであるTC24。日産のL6型をベースに、ギア駆動のDOHC 4バルブヘッドを載せている。排気量は3.2リッターで、セッティングが決まれば400ps以上のパワーを絞り出すという。
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国産旧車界におけるハコスカ人気は一向に衰えることがない。高橋国光仕様のワークスマシンのレプリカを展示しているのは、ハコスカ専門ショップ、ビクトリー50。奥では1970年代のツーリングカーレースでハコスカが挙げた伝説の50勝+αのうち最多の10勝を記録し、「最強のプライベートGT-R使い」と呼ばれた久保田洋史氏のサイン会を実施中。
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タキーズが展示していた1970年「日産スカイライン・ハードトップ2000GT」。キャップ付きの純正鉄チン(スチール)ホイールを履いた今や希少なフルノーマル仕様。ハコスカといえばシルバーメタリックが多いなかにあって、サファリブラウンのボディーカラーもいい感じ。価格応談。
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「ウチはここまで徹底して作業しますよ!」とアピールすべく、レストア途上のボディーを展示したり、床面を鏡張りにして仕上げた車両の下まわりを見せるなどしていたショップもあった。ここでも4台中3台はハコスカである。
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この後ろ姿を見て車名を即答できたら、かなりの旧車通。輸入車? いや、れっきとした日本車である1969年「三菱コルト1100F 4ドアカスタム」。65年に登場した、2ストローク3気筒エンジンを積んだ「コルト800」に始まるコルト・ファストバックシリーズの発展型で、相当な希少車である。クラシックカーナゴヤが出展。
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前から見た「三菱コルト1100F 4ドアカスタム」。サイドウィンドウにまだ珍しかった曲面ガラスを使い、ウエストを走るプレスラインもインバース(逆反り)だったりと、けっこう凝った造形だった。程度はすばらしいが、それだけに売値は新車時価格4台分の200万円と立派。しげしげと眺める筆者に販売スタッフは「メディア受けは抜群なんですけどね(笑)」と言っていたのだが、数時間後に「即決で売れました!」との声が。
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1976年「マツダ・コスモAP リミテッド」。13B型ロータリーエンジンを積んだ2代目コスモのトップグレードで、車名のAPとは“Anti Pollution”(公害対策)の略。後付けのアルミホイールを除いては塗装までオリジナルの未再生車で、プライスは183万円。オートサークルのブースにて。
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1978年「日産シルビアLS」。これも今となっては珍しい2代目シルビア。ロータリーエンジン搭載車として開発されていたが、石油危機により大食いのロータリーは開発中止となり、レシプロエンジンに積み替えて登場した経緯を持つ。この個体は見たところ程度はかなりよく、アルミホイールも純正である。タキーズにて、価格は178万円。
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1966年「ダイハツ・ハイゼット・バン」。現在まで車名が受け継がれているハイゼットだが、そもそもはボンネット型の軽トラック/バンとして生まれ、途中から加わったキャブオーバー型は、当初は「ハイゼット・キャブ」と呼ばれていた。これまたタキーズが販売する希少車で、価格は140万円。
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昨年創立50周年を迎えた日産グループのパワートレイン専門メーカーである日産工機のブースに特別展示されていた1966年「ダットサン・キャブライト」。1トン積みのセミキャブオーバートラックだが、搭載している直4 OHV 1138ccのD11型エンジンが日産工機の初期の製品なのだ。左側に単体で展示されているのは、その前世代のD型エンジン(1046cc)。
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80年代車ファンをターゲットにした、ちょっぴりアメリカンなテイストにカスタムされた2台の初代「日産ADバン」。左は同時代の「サニー」の北米仕様である「セントラ」、右はサニーの兄弟車である「ローレルスピリット」のフロントグリルを装着。日産の商用車とパーツに強いショップ、バラクーダの出展。
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エンジンスワップによる旧車のアップデートを得意とするロッキーオートが作った「トヨタ2000GT ロッキーHVスペシャル」。パワーユニットはハイブリッドというレプリカである。詳細は不明だが、おそらくトヨタのハイブリッドシステムを流用していると思われる。つまり駆動方式はFFなのだろうが、プロポーションはホンモノに近い。
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ムラテカーズエンタープライズが出展していた「ジャガーXKSS」のレプリカ。XKSSは有名なレーシングカーである「Dタイプ」(左側はそのレプリカ)のショートノーズ版の公道バージョンとして1957年に登場したが、16台しか作られなかったという超希少車。これのシャシーは「マツダ・ロードスター(NB)」がベースで、エンジンはロードスター用からジャガーの直6まで載せられるという。
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恒例となっている『ノスタルジックヒーロー』誌の表紙を飾った車両の展示。手前は珍しいトヨグライド(2AT)仕様の1963年「トヨペット・クラウン・デラックス」、その隣は69年「日産スカイライン2000GT-Rレース仕様(久保田洋史レプリカ)」。