クラシックカーイベント「ACJ 熱海HISTORICA G.P. Meeting 2022」の会場から
2022.10.13 画像・写真2022年10月10日、静岡県熱海市の長浜海浜公園で「ACJ 熱海HISTORICA G.P. Meeting 2022」が開かれた。東京都国立市に本拠を置く旧車クラブ「オートモビルクラブジャパン(ACJ)」が、縁あってこの地で熱海HISTORICA G.P.と名乗るクラシックカーイベントを初開催したのは2012年。以来順調に発展してきたが、2020年は新型コロナ禍により中止。昨2021年は一般募集は行わず会員のみを対象とし、また従来の土・日の2日間開催から日曜のみのワンデーイベントとなった。
今回もワンデー開催だが、会員以外の参加もOK。また特別企画として、熱海の空と海にちなんで「Team Blue Blood」と称するプログラムを実施した。これは「蒼(あお)いクルマ」ことブルー系のボディーカラーの車両ならば年式を問わず参加可能というもので、およそ100台を数えたエントリー車両のうち、会場である芝生広場の中央に30台以上の蒼いクルマが並んだ。
肝心の空模様は、午前10時の開会前後から小雨が降ったりやんだりの状態をどうにか保ち、本降りには至らず。そしてイベントではありがちなことだが、12時30分ごろから始まった表彰式の最中に日が差し始め、閉会時にはすっかり好天に。参加者は青空の下、青い海を眺めながら会場を後にして、希望者はオプションプログラムである箱根・十国峠までのツーリングに向かった。参加車両のなかから、リポーターの印象に残ったモデルを紹介しよう。
(文と写真=沼田 亨)
-
1/35会場では「Team Blue Blood」こと蒼いクルマが中央に並べられ、そのうちゲスト(ACJ会員以外)のエントリー車両を対象に人気投票が実施された。それで1位に選ばれたのが、1967年「マトラ・ジェット6」。1962年に登場した世界初の市販ミドシップスポーツ「ルネ・ボネ・ジェット」をベースにマトラが改良した、初代「アルピーヌA110」のライバル的存在だったフレンチスポーツである。エンジンは「アルピーヌ1300」と同じゴルディーニチューンのルノー製1.3リッターなので、後ろに並んだRRからミドシップに転換した現行アルピーヌA110とも縁がないわけではない。
-
2/35同じく蒼いクルマの人気投票で2位に選ばれた1972年「シトロエンDS23パラス」。1955年にデビューしたDSの最終発展型である。
-
3/351971年「シトロエン・アミ8」。「2CV」をベースにした上級モデルとして1961年に登場した「アミ6」は、特徴的なクリフカットのルーフを持つ4ドアセダンだった。そのボディーをファストバックに改めて1969年にデビューしたのがアミ8である。
-
4/35蒼いクルマの人気投票で3位となった1990年「アルピーヌ・ルマン」。2.5リッターV6ターボエンジンをミドシップではなく車体後端に積んだ、現役当時は「ポルシェ911」のライバルと呼ばれたリアエンジンのスポーツカー。
-
5/351957年「ツェンダップ・ヤヌス」。ここ数年、各地のイベントに参加してすっかり有名になった、ほぼ前後対称のボディーに背中合わせの前後シートを持つマイクロカー。ACJ会員の車両を対象にベストルッキングな車両を選ぶアワードで1位に選ばれた。
-
6/35新車のような輝きを放っていた1985年「アルピナB9 3.5クーペ」。「BMW 635CSi」をベースに、3.5リッター直6エンジンをメカチューンして搭載する。
-
7/351968年「いすゞ・ベレット1600GTファーストバック」(正式車名が“ファストバック”ではなく“ファーストバック”)。オーナー氏は過去に何台ものベレGをレストアしているエキスパートで、これはエンジンをオリジナルのOHVから「1600GTR」用のDOHCに換装(写真左上)。いすゞ好きの間でエルフブルーと呼ばれるボディーカラーは、1600GTRのプロトタイプであるワークスマシンの「GTX」をイメージしたもの。蒼いクルマの人気投票で4位となった。
-
8/35「Team Blue Blood」への参加は年式を問わずOKだったので、こうしたモデルも並んでいた。蒼いクルマの人気投票で5位に入った2006年「ランチア・イプシロン」(写真左)と2018年「ルノー・トゥインゴ」(同右)は、丸っこいスタイリングのせいで旧車のなかにあっても違和感が少なかった。
-
9/35不思議なことに、2018年「フェラーリGTC4ルッソ」も浮いた印象はなかった。
-
10/35個人的に今回のベスト・オブ・ショーを差し上げたかった1985年「ルノー5アルピーヌ ターボ」。当時のインポーターだったJAXにより正規輸入された最終型で、珍しいボディーカラーはリペイントされてはいるもののオリジナルとほぼ同じ色味とのこと。
-
11/351970年「ジャガー420G」。1961年に「マークX(テン)」の名でデビューしたフラッグシップの改良型。全長5.1m、全幅1.93mという大柄なボディーに4.2リッター直6 DOHCエンジンを積んだ高級サルーン。
-
12/351989年「BMW 850i」。初代「6シリーズ」の後継モデルとして登場した最高級クーペ。リトラクタブルライトを採用したマスクは、当時の日本では「『スープラ』(A70)みたい」などとも言われた。
-
13/351968年「トライアンフ・ヴィテス2リッターMk1コンバーチブル」。ミケロッティが手がけたスタイリングは、彼の同時期の作品である「プリンス・スカイラインスポーツ」と共通する斜め配置のデュアルヘッドライトが特徴。
-
14/351969年「ダットサン・ブルーバード1600SSSクーペ」。「多摩5」のシングルナンバーで、キャップ付きのスチールホイールにホワイトリボンタイヤを装着。新車当時とほぼ変わらぬいでたちの、まるでタイムスリップしてきたかのような個体。
-
15/35「なんじゃこりゃ?」と思ったら、車名は「アブフラッグMRスパイダーZZ」。1999年「トヨタMR-S」をベースとするコンプリートカーとのこと。
-
16/35自由参加のオプションであるツーリングに向かう、あるいは帰宅すべく参加車両が砂浜沿いの周回路を通って長浜海浜公園から退出しようという午後1時前後には、ご覧のような好天となった。空と海の青に鮮やかなイエローが映える1972年「ディーノ246GT」。
-
17/351962年「トライアンフ・イタリア2000」。「トライアンフTR3A」のシャシーに、ミケロッティがデザインしてヴィニャーレが仕立てたボディーを載せた、生産台数330台という英伊混血車。
-
18/351959年「ルノー・カラベル コンバーチブル」。リアエンジンの小型セダン「ドーフィン」をベースとするクーペ/コンバーチブルで、北米市場では成り立ちが似ている「フォルクスワーゲン・カルマンギア」のライバル的存在だった。
-
19/351950年「シトロエン11CVレジェール」。戦前の1934年にデビューした「トラクシオン アヴァン11CV」に始まるFFサルーン。系列の最終発展型である「15CV」は「DS」が登場する1955年までつくられた。
-
20/351973年「フィアット126」。「ヌオーバ500」の後継モデルとして1972年にデビューした、フィアットの末弟となるリアエンジンの小型車。ACJ会員車両を対象とするベストルッキングアワードで審査員特別賞を受賞した。
-
21/351967年「ヒルマン・インプ」。オリジナルMiniに対抗して1963年に登場した小型車。Miniとは対照的に、1950~1960年代にF1エンジンもつくっていたコベントリー・クライマックス設計の総アルミ製の875cc直4 SOHCエンジンを車体後端に積む。
-
22/35「生ける化石」と呼ばれて久しい2018年「モーガン4/4」。ベストルッキングアワードで5位となった。
-
23/351974年「BMW 2002ターボ」。3台の2002ターボ(うち1台は当時のインポーターであるバルコム貿易による正規輸入車)、1台の2002というチームで参加した。
-
24/35ここからは再び「Team Blue Blood」のエントリー車両。青い空、青い海、そして青いクルマ。意図していた組み合わせが、イベントの最後にどうにか実現したというわけだ。これはマスクの意匠から1954~1960年と思われる「シトロエン2CV」。
-
25/351962年「モーリスMini Mk2トラベラー」。オリジナルMiniのワゴンモデルは、オースチン版が今日も使われている「カントリーマン」を、モーリス版が「トラベラー」を名乗っていた。ベストルッキングアワードで3位となった。
-
26/35レーシングライクなモディファイが施され、ヒストリックカーレースにも参戦している1958年「オースチン・ヒーレー・スプライトMk1」。
-
27/35ボディーカラーが空と海の色に近い1969年「ロータス・エランS4 DHC(ドロップヘッドクーペ)」。蒼いクルマの人気投票で審査員特別賞を受賞した。
-
28/35アバルトとしては珍しいカラーに塗られた1971年「フィアット・アバルト695SS」。ベストルッキングアワードで2位となった。
-
29/35「ランチア・ブルー」と呼ばれる濃紺に塗られた1969年「ランチア・フルヴィア クーペ ラリー1.3」。後ろは「アルファ・ロメオ・ジュニア ザガート」。
-
30/351974年「アルピーヌA110 1600SC」。リアサスペンションがスイングアクスルから「A310」用のダブルウイッシュボーンに変更され、より操縦性が向上したモデル。
-
31/352007年「サーブ9-3」。長年にわたって「99」を愛用していたサーブ好きのオーナーが、その最期を前に選んだ一台。日本に40台輸入された創立60周年記念モデルのなかで、輸入元に無理を言って入れさせたという唯一の左ハンドル車とのこと。
-
32/352003年「スバル・インプレッサWRX STI」。補助灯をズラリと並べたトミ・マキネン仕様のレプリカ。ベストルッキングアワードで4位となった。
-
33/352016年「ラーダ・ニーヴァ」。デビューは1976年だが、モノコックボディーに前輪独立懸架、フルタイム4WDと当時のクロカン4WDとしては進歩的な設計だった。
-
34/35かなり珍しい1991年「いすゞ・ミュー ハードカバー」。荷台部分にFRP製のトノカバーを付けた2シーターの3ナンバー仕様。後方は「スマートK」。
-
35/35これも空と海に近い色の1974年「アルファ・ロメオGT1600ジュニア」。ACJ会長の是枝正美さんとともに「Team Blue Blood」の企画をプッシュした、筆者の取材仲間でもあるフリーランスライターの高桑秀典さんが愛用する、通称「水色号」。後ろに見えるのは、珍しい初代「シトロエン・ベルランゴ」。