ヒュンダイ・ソナタ2.4GLS(FF/4AT)【ブリーフテスト】
ヒュンダイ・ソナタ2.4GLS(FF/4AT) 2006.02.03 試乗記 ……246万7500円 総合評価……★★★ ヒュンダイが世界戦略車と位置付ける「ソナタ」が日本に導入された。北米市場で「カムリ」「アコード」と販売合戦を繰り広げるミドルクラスセダンの実力はいかなるものか。
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バランスはいいが、もっと「らしさ」を
前後のランプ類は両端を少し撥ね上げて、鳥居や屋根のようなイメージを与えてあり、オリエンタル風味を効かせたグッドデザイン。まとまり過ぎの感もあるが、欧米への輸出を考慮したインターナショナルな工業製品となれば、無国籍的な目立たないものにほんの少し個性を主張するのは正しい方法だ。その加減が難しいところだが、ソナタは巧く標的を射ている。
外観に比べて中身の走行性能はまだ発展の途上にあるが、廉価な価格をウリにする現状ではまずまず納得できるバランスのところにある。安いなりにもよくできている日本の量産車と真っ向から勝負するのは得策とも思えないから、たとえば内装の一部だけ凝るとか、韓国車らしさをもっと主張したほうがいい。折からの韓流ブームにのって市場を固めるチャンスだと思う。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ヒュンダイ・ソナタ」は、韓国で1985年に初代がデビューしたミドルクラスのFFセダン。2004年には世界で約23万台が売れた世界戦略車である。日本では「エラントラ」と「XG(モデルチェンジ後の名称は「グレンジャー」)」が販売されていたものの、その中間のソナタが未導入だった。5代目となるこのモデルが、2005年9月から販売されている。
パワートレーンは2.4リッター直4エンジン+4段ATという組み合わせのみで、サスペンションは、前ダブルウィッシュボーン式、後マルチリンク式を採用。装備の違いで3グレードがあり、もっとも簡素な「2.4GL」は208万9500円という価格がセリングポイントだが、これは受注生産となる。量販グレードは「2.4GLS」(236万2500円)で、さらに電動ガラスサンルーフや本革シート&フロントシートヒーターなどを装着した豪華仕様の「2.4GLS Lパッケージ」(267万7500円)がラインナップされる。
(グレード概要)
「2.4GLS」は、ステアリングオーディオリモコン、運転席パワーシートなどが備わる最量販グレード。安全装備も、運転席/助手席エアバッグ、フロントサイドエアバッグ、サイドカーテンエアバッグが用意され、ESPも標準となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
豪華ではないけれどスッキリまとまっていてメーター類は見やすい。ステアリングはチルト調整機構のみでテレスコピックはなし。革巻きの感触は良好。ライトスイッチとウィンカーが右、ワイパーのレバーが左にあり、日本車に慣れているひとには使いやすい。シートヒーターの備えはこの価格帯のクルマにしては立派。電源ソケットもある。走り出すとドアロックが自動的に働くがドライバー席だけはそのまま降りても開閉可能。キーを閉じ込めてしまう心配はない。
(前席)……★★
シート表皮は革装ながら、ドアのトリムやインパネの一部などプラスティックや樹脂のコンビネーションがいま一つ色的にも紛らわしく、それなりのものに見えないので損をしている。シート自体はサイズ的にたっぷりしているものの、座面の後傾角が足りず疲れやすい。座面周囲が柔らかく中央部のみクッションを固めたため異物感があるし、サイドの柔らかさは横Gに対して体重を支えてくれない。ランバーサポートは位置がちょっと下過ぎる。
(後席)……★★★★
このクルマはどちらかと言えば後席が優先されており、ヘッドクリアランスや足下の余裕などスペース的に十分。シート自体はバックレストの角度も寝過ぎていないし、座面へ腰がすっぽり収まる感覚も良好。この柔らかさはお尻が前へずれるのを防いでくれる。真ん中を倒して使うアームレストも高すぎず、蓋を開けて使うカップホルダーも使いやすそう。
(荷室)……★★★★
容積的には、深く広く広大な部類に入る。ただし、サスペンションの張り出しは大きいほうか。リアシートのバックレスト(3/2でスプリット可倒)を倒せば、ちょっとした長尺物も積める。内装処理は並。フロアが低く、その下にあるスペアタイヤの取り出しはバンパー高が高いだけに重そう。リッド裏には中から開けるレバーが剥き出しで備わる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
このクルマが使われるであろう日常的な用途に対しては不足がないものの、2.4リッターという排気量に期待するとやや落胆。日本車の2リッター程度に感じる。1490kgという車両重量も重め。4ATのシフトショックや変速レスポンスなども最新のレベルには達していない。けれども痛痒を感じるほどの不満もなく、温厚にして寛容なドライブを心掛ける人にはむしろ好感か。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
ガシッとした剛性感だとか入力に対してのスッキリしたレスポンスがあるわけではないが、中庸をもって概ねよしとするならば気にならないレベルにある。アシはよく動いて姿勢も比較的フラット、ダンピングもまずまずである。215/60R16というタイヤも操縦安定性より乗り心地を重視した選択で、重箱の隅をつつけばキリがないが、ソナタというクルマの性格にはマッチしている。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2005年12月16日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:3222km
タイヤ:(前)215/60R16(後)同じ(いずれも、ダンロップSP SPORT)
オプション装備:本革シート&フロントシートヒーター-
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(4):山岳路(4)
テスト距離:251.5km
使用燃料:34.68リッター
参考燃費:7.2km/リッター

笹目 二朗
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